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月齢

女性向けブログ。ネタ語りや小説など。ルーク至上主義。

2025.04.21
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2008.10.25
5万HIT企画

唄逆さまリク「良い人モースでルク・アリ・緑っ子+α救済」です。
すごく…難産でした…(苦笑)
被らないように、といろいろ考えた末、捏造過多となりました。
モースの家系が代々医者だったりや、アッシュが神託の盾騎士団入りする時間軸だったりががっつり捏造です。
また、ヴァンが原作以上に人でなしです。
少しでも楽しんで頂ければ幸いです。

注!ヴァンに厳しめ






この男は狂っているに違いない。
モースは驚愕を必死で内に押し隠し、目の前の譜業装置を呆然と見つめた。
羊水のような液体の中で揺らめく少年たちの姿を、モースはよく知っていた。正確に言えば、彼らのもととなった少年を。

「…これは」
「これがレプリカ。導師イオンより作られた少年たちだ。まあ、使えるのは、ほんの一、二体といったところだが。成功作が一体でも出ただけでも幸いだった。完全同位体とまではいかなかったが、ダアト式譜術を使うだけの能力はある」

劣化はあるがな。
あっさりと言ってのけたヴァンの言葉は、明らかに目の前の子どもたちを生物として捉えた発言ではなかった。彼にとって、レプリカという存在は道具でしかないのだと、モースは知る。
ヴァンへの嫌悪に、吐き気がこみ上げてくる。だが、背後にいる男は、自分が協力者であると信じて疑わない。ならば、まだ、疑われるわけにはいかない。疑われれば、今すぐにでも殺されかねない。

『導師イオンが預言どおりに死んでしまえば、惑星預言を詠める人材がいなくなる。それでは、困るでしょう?』

甘言のごとく、ヴァンが囁いてきたことを思い出す。モースは預言をすべて肯定しているわけではない。盲目に信じているわけでもない。
だが、預言の価値は知っている。預言に書かれている。ただその一言だけで、従う人間が、そのとおりに動く人間が多いことを。
それだけに、悪用していいものではないことも、わかっている。有効活用するのならばともかくだ。
例えば、今後、惑星預言に大いなる災いが詠まれていたとしたら。それを詠むことが出来る導師がいなくなれば、それを避けるための手立てを考えることも出来なくなる。
確かに、そう考えた。導師イオンが預言どおりに亡くなってしまうような事態になれば、もたらされる被害は大きい。

だが、とモースは胸の前で怒りで震える手を握り合わせた。だが、こんな真似を許したわけではない。
こんな命を冒涜するような真似を誰が許せるものか!
幼いころより、家業である医師としての教育を受け、その倫理も叩き込まれてきたモースにとって、ヴァンの所業は許せるものではなかった。だが、今は怒りを曝け出すところではない。ヴァンの企みは、まだすべてが判然としたわけではないのだから。

長年、培ってきたポーカーフェイスを徹底させながら、モースはレプリカたちを眺め、はた、と気づいた。預言に死が詠まれているとは思えぬほど、健康体であったイオンが急に体調を崩したのは、このせいではないのかと。
導師イオンの死を詠んだ預言の内容を導師自身より知らされてからというもの、導師の身体検査はモースが行ってきた。それだけに、モースは誰よりもイオンの急激な体調の悪化を誰よりも訝しく思ってきたのだが。
戦慄きそうになる唇から、モースは搾り出すような声でヴァンへと問いかけた。

「…導師イオンの体調が急に悪化したのは、もしや」
「ああ、レプリカ情報を抜いたからだろう。レプリカ情報を抜いたことで死ぬ可能性もあるからな」

思わず、頭を抱える。わかっていて、この男は幼いイオンをそんな状態に陥らせたのか。仕え、守るべき導師を命の危機に陥らせたのか。
だが、ヴァンはこちらの様子に気づいていない。おそらく、預言どおりになったのだから、喜べとでも思っているに違いない。
このままでは、間違いなく導師イオンはヴァンによって殺される。それだけは避けなければ。彼はまだ失われるべきではない。
低く低く、モースは呻く。

(そして、この子たちも…)
ヴァンの口ぶりでは、成功作とされたレプリカ以外を処分するつもりなのだろう。そんなことはさせられない。
レプリカであろうと何であろうと、彼らは生きている。息をし、心臓を動かしているのだ。
預言に詠まれたという理由で大詠師という地位につかされてしまったが、幼いころから両親や兄弟たちのように医師となる夢を抱いてきたモースに、目の前の生まれたばかりの命を犠牲にすることなど、許せるわけもなく。モースはその場でヴァンに向かって、生まれたレプリカたちは、導師の教育を含め、全員、私の保護下に置く、と宣言した。

もとから導師としての教育を押し付けるつもりでいたのか、ヴァンは全員という言葉に難色を示したものの、結局は従った。
機嫌取りのつもりであろうと何であろうと構わないと、モースはヴァンから離れ、子どもたちの前で膝をつく。無垢な眼差しは、幼いながらにも導師としての重責を担っている導師イオンの険しさの混じる目とは違い、彼らは違う存在であるのだと、モースに知らしめた。
この子たちに限りない愛と加護を、とモースは心の内で祈りを捧げた。





むっつりと頬を膨らませ、拗ねているイオンに、モースは苦笑を零した。
ベッドに横たわる幼い姿は痛ましいものではあったが、今日は具合がいいらしく、顔色がいい。暖かな気候と柔らかな海風が、レプリカ情報を抜かれ、衰弱したイオンの身体をしっかりと静養させたのだろう。やはりマルクトへと連れて来てよかったと、そっと胸を撫で下ろす。

もちろん、このマルクトでも屈指の病院で医師の一人を勤めている弟の献身的な治療の甲斐あってのものではあるのだが。
ちなみに、この病院はモースの一族が経営するものであり、現在は兄が院長であるため、ヴァンたちには死んだと思われているイオンを安心して預けていられるのである。

「アリエッタには任務がありますから」
「…護衛代わりに連れて来ればよかったんだよ」
「貴方の代わりに導師となったミロアがもう少し大人になって、導師としての責任や仕事を理解するまではアリエッタを離すわけにはいきません。フォローが必要ですから。新しく導師守護役となったアニスの教育も、アリエッタには任せていますし」
「わかってるよ、そんなの。それでも」

会いたかったのに、と呟くイオンに微笑する。預言によって導師となることを決定付けられ、幼いころより導師として相応しくあるよう教育されてきたイオンは、腹の内ではどうであれ、表立っては慈愛深い導師としての仮面を貫き通してきた。
それは、己の感情を殺すことであり、己の年相応の願望すらも押し込めることである。側で自分を押し殺してきたイオンを見守ってきたモースにとって、イオンが口にする我が侭は、微笑ましく、可愛らしいものだった。
モースの生温い微笑に気づいたのか、イオンの眉間の皺が深くなる。

「アリエッタは僕のなんだから、会いたいって思うのは当たり前だろ」
「ええ。アリエッタも会いたがっていました」

けれど、今は、イオン様のためにも、ミロアを守るの、と気丈に少女は笑っていた。
強い子だ、とモースは笑う。当たり前だろ、とイオンも笑う。僕が愛してやまない子なんだから、と。

「みんな、元気でやってる?」
「会いますか?」
「え?」
「シンクとフローリアンなら、護衛として連れて来ていますから」

丸い顔に笑みを浮かべ、訊ねるように首を傾ぐ。わかってるくせに、この狸、とイオンが苦笑う。
短く、モースは声を出して笑う。

「お入り、二人とも」

ガチャ、と病室の戸が開き、若草色の髪をした少年が二人、ひょこ、と顔を出した。二人とも、その顔は仮面に覆われている。
ふ、と穏やかな微笑を浮かべ、イオンが二人を手招いた。白い日の光が差し込み、清潔に保たれた病室に、二人が足を踏み込み、フローリアンがまずイオンが横たわるベッドへと飛びついた。

「イオン、ねぇ、今日は具合、大丈夫?」
「ええ、もちろん。ありがとう、フローリアン」
「えへへ」

くしゃり、とフローリアンの頭をイオンが撫でる。二人とも仮面を外しても構わないよ、とモースもまた柔らかく目尻に皺を寄せた。
シンクもフローリアンも仮面を外し、イオンと違わぬ、けれど三人とも、表情の違う顔を見せた。

「ほら、シンクもおいで。撫でてあげる」
「いらないよ!子ども扱い、しないでよね」
「素直じゃないなぁ」
「素直じゃないねー」
「う、うるさいよ!」

まるで本当の兄弟のようにじゃれ合う三人を、モースは微笑ましげに見守る。だが、いつまでも和んでいる場合ではない。常日頃の激務の疲れを癒されている場合でもない。
モースはこほん、とわざとらしく咳きを零した。パッ、とフローリアンがイオンから離れ、シンクとともに立ち並ぶ。
よく出来た、と褒めるように一度、二人に頷いて見せてから、モースはイオンへと向き合った。

「さて、今回、私を呼んだ理由を窺いましょうか」

にや、とイオンが口の端を吊り上げる。モースにとっては見知った笑みだが、導師イオンとしての顔しか知らぬ者ならば、度肝を抜かれることだろうな、とイオンに初めて会ったとき、今までの印象が覆ったと苦笑していた弟をモースは思い出した。
だけど、ますます何としても助けたいと思ったよ、とも、弟は照れくさそうに頭を掻いて言った。兄さんが敬愛し、守りたいと思うだけの人間だしね、とも付け足してくれたのは本当に嬉しい一言だった。
いい兄弟を持ったものだと、モースは思う。

「『聖なる焔の光』について」
「…ああ、アッシュ、ですか」

鉛を飲み込んだように、モースの眉が寄り、顔に険しさが宿る。ため息なしでは口に出来ない名前だ。それもこれも、彼の素性を思えばこそ。
フローリアンが心配そうに、そっと肩に触れてくる。シンクもまた、眉間に皺を寄せ、不安そうにしていることにモースは気づいた。
ああ、いけない、と苦笑する。子どもたちに心配を掛けてしまうなんて、これではいけない。
大丈夫だ、とフローリアンの頭を撫で、シンクの肩をぽん、と叩く。ホッとしたように、それでも、納得しきれないというように二人は複雑そうな顔をした。

「彼が本物なんだろう、モース?」
「おそらくは。…まったく、ヴァンが誘拐犯だったとは」

キムラスカは預言に比重を置く国であるだけに、教団との繋がりも深い。少し手間は掛かったが、手に入れることが出来たルーク・フォン・ファブレの情報。それは、彼が六年前に誘拐されたという事実だった。
おそらく、そのときなのだろう、とモースは首を振る。ルーク・フォン・ファブレとレプリカがすり返られ、被験者をヴァンがその手中に収めたのは。

だが、そのことがわかったのは、つい最近のこと。アッシュを秘蔵っ子なのだと、ヴァンが特務師団長として据えてからだ。初めてアッシュと出会ったときの驚愕は、忘れられそうにない。何しろ、キムラスカ王族の特徴である赤い髪に翡翠の目を彼は持っているのだから。
すぐさま、モースはイオンに相談を持ちかけ、アッシュの素性を探った。結果──知らないままでいれば、と少しだけ後悔してしまうような事実が出てきたというわけである。

「一体、あの男の真の狙いはどこにあるのか」
「預言成就じゃないのは、確かじゃないの。預言を成就させたいんなら、導師を死なせていたはずだ」

預言どおり、導師不在の時期を作るために。
苦々しく舌を打つイオンに、神妙な顔で頷き返す。ならば、あの男の狙いは、預言を覆すことなのだろうか。だが、それだけとも思えない。
モースとイオンは揃ってシンクたちを見やる。禁忌とされたレプリカ技術を蘇らせたヴァンの狙いは、どこにあるのか。

「何にせよ、ヴァンにとっても、預言に詠まれた未来にとっても、『聖なる焔の光』は鍵となる」
「ええ、そうでしょうね」
「だから、味方に引き入れたいなー、って思うわけだ。アッシュも、ルークもね」

にこ、と一転して愛らしい笑みを零すイオンに、モースは困ったように眉尻を下げる。イオンの言いたいことはわかる。それは確かに必要なことだ。『聖なる焔の光』たちをこちらに引き込めば、ヴァンの思うとおりにはいかなくなる。
しかし、問題がある。

「アッシュはレプリカを憎んでるからね、そううまくいくとも思えないけど」

静かに切り出したのは、シンクだった。フローリアンも隣で、うん、と頷いている。
第五師団長として、アッシュと同じく六神将の一人に名を連ねているシンクも、副師団長としてシンクの補佐に当たっているフローリアンも、アッシュのレプリカルークへの憎悪をよく知っているだけに、二人の顔には不安が浮かんでいる。
アッシュは七年前、ヴァンによって誘拐されてからというもの、レプリカへの憎悪を植えつけられ、自分に従うよう洗脳されてきたらしい。それは酷く根深く、ちょっとやそこらで消えるものとは思えない。
イオンがそんな二人に大丈夫だ、と力強く頷いた。

「僕が説得するからね」
「……導師自ら、ですか」
「そう。だから、モース。適当に理由つけて、アッシュをダアトから連れ出してよ」

こともなげに言うイオンに、モースは肩を落とし、こめかみを抑える。
ずいぶんとあっさりと言ってくれるものだ。危険きわまりないことくらい、わかっているだろうに。

「アッシュの説得に失敗し、貴方の生存がヴァンに知られるようなことになったらどうするんです」
「その場合は、どこかに監禁とかになるかな。幸い、ここには薬が溢れているし。用意出来ないわけじゃないだろ?もちろん、殺しはしない。彼には、ND2018が過ぎ去るまで、生きていてもらわなくてはいけないからね」
「…イオン様」
「ふふ、もちろん、それは最終手段だよ?決まってるだろ」

あどけない顔に浮かんでいるのは、無邪気な笑顔だが、彼の場合、本気でやりかねない。
胃が痛くなってきそうだ、とモースはそっとふくよかな腹を撫でた。健康診断でもして帰った方がいいかもしれない。

「だって、お前は望むんだろ」
「はい?」
「アッシュも幸せになることを」

僕らと同じように。
顔を赤らめることもなく、花のように笑うイオンに言葉を失くす。これではどちらが大人かわかったものではない。
この欲張りな心が望む願いを、的を外さずに射抜いてくるのだから、困ったものだ。まったく素晴らしい上司を持ったものだと思う。
預言に縛られたこの世界で、イオンという存在に出会えたことは行幸だ。
そして、何より、とモースは目尻を垂れ下げ、笑った。
何より、僕らと同じように、とイオンが言ってくれたことが嬉しくて仕方がない。それは、彼が自分を幸せだと思ってくれているということだから。

「ええ、そうです。彼も被害者で…幸せになって欲しい子どもですから」

モースはシンクとフローリアンの肩に手を置き、イオンに微笑む。
フローリアンが満面の笑みを浮かべ、シンクが気恥ずかしそうにしている様子に笑みを深める。

シャドウよ、ノームよ、シルフよ、ウンディーネよ、イフリートよ、レムよ、ローレライよ。
そして、聖女ユリアよ。
どうかこの子たちをお守り下さい。
そして、ローレライの力を持って生まれた、二人の『聖なる焔の光』のことも。
どうか、どうか。子らをお守り下さい。
いとけない子らに、どうか加護と愛と幸いを。
光に満ちた未来を、どうか。

モースは一人、祈りを捧げる。
両手を胸の前で合わせ、子どもたちの幸せを願う。
シンクが、フローリアンがモースの身体を挟んで抱きしめた。イオンもまた、柔らかに目を細め、モースの組み合わされた両手に小さな手を乗せた。

「大丈夫だ、モース」

最後に笑うのは、僕たちなんだから。
白い顔で満足げに笑うイオンに、シンクとフローリアンの二人も続いて笑う。
大丈夫。僕たちは負けない。
そう、優しい祈りを捧げる大人に、愛してやまない『父』に向かって、子どもたちは笑う。
モースは子どもたちを抱き寄せ、深く深く頷いた。


END


+αで救済とのことで、アッシュとアニスも救済してみました。
このモースだと、アニスは両親教育して救済ルートだな、と思ったもので。
ティアに関しても、こりゃ軍人としてダメだ、と現在、再教育中です。
何だかいろいろと被験者イオン様に持っていかれたような気もしますが(汗)唄逆さんに少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。
リクエスト、ありがとうございました!

 

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