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月齢

女性向けブログ。ネタ語りや小説など。ルーク至上主義。

2025.04.20
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2008.10.19
ss

アシュルク。ED後。
音譜帯でルークの心を掬い上げるアッシュの話。
抽象的というか、不思議な話になりました。
情景的なものを浮かべて頂けたら幸いです。

注!同行者厳しめ





そっとそーっと。
アッシュは光の欠片を大切に大切に掬い上げ、集めて一つに重ねていく。
傷つかないように、大切に丁寧に。一つ一つを慈しむ。

「ルーク」

一つを掬い上げるたび、アッシュは優しく声を掛けた。愛情に満ちた声で撫で、手のひらで温める。
光が手の中で、喜ぶように震えるのが、アッシュの心をふわりとぬくもりで満たした。
好きだよ、と微かな声が鼓膜を震わす。
ああ、俺もだと、アッシュは微笑む。もう何年も失っていた、穏やかで、静かな微笑を零す。
ただ一人、ルークへと向けて。

「ルーク」

一つ、一つ。
大切に大切に、大事に。落とさぬように。これ以上、砕けぬように。
ルークの心は、削られて、どんどん小さくなって、そして、一度、アクゼリュスで壊れてしまった。
それでも、小さな小さな灯火は残っていた。今にも吹き消えてしまいそうなほどに儚い小さな灯火が。
その灯火をルークは最後の最期まで燃やし尽くした。
罪を償うのだと、すべてを一人で背負って。すべてを一人だけで背負わされて。
残ったのは、欠片だけ。キラキラと煌く、傷ついた光の欠片たちだけ。

それを、すべて消えてしまう前にと、どうにかかき集めたのは、ローレライだった。
けれど、ローレライにはルークの欠片を集めて、消えぬようにするのだけで精一杯で。それを形に戻すには、地殻に封じられ、ヴァンに力を奪われたせいで、力が足りなくて。
アッシュがその役目を請け負った。エルドラントでローレライを瘴気の中和で乖離し始めていたルークと解放し、音譜帯へとともに昇って、一つ一つを掬い上げ、優しく優しく、愛しながら。
そして、ローレライが全ての音素集合体たちに呼びかけ、集めた音素で、愛とともに、柔らかくルークの光の欠片を包みながら。

「ルーク」

地上で自分たちを呼ぶ声に、アッシュは気づいていたけれど、アッシュがそれに耳を傾けることは決してなかった。呼ぶ声は、どれも、約束を求めるものであったから。それも、一方的に押し付けた約束を。
帰って来て、とまるで自分のもとに帰って来ることが当然だと言わんばかりの口先ばかりの『仲間』たちが押し付けたのだ。
ともすれば、湧き上がりそうになる彼女達への苛立ちを、アッシュは呼気とともに吐き出した。
苛立ちは気を乱すことになる。彼女達へと少しでも意識を裂くことが惜しい。全神経をただただルークへと注ぎたい。
ルークの心を、魂を形作るために。

「ルーク」

名を舌に乗せ、甘く呼びかけながら、アッシュはまた光を掬う。光が震え、歌う。
聞いたことのない歌だった。ああ、と小さく笑う。
これはルークの歌だ。ルークの魂が、己の心のままにアッシュのために歌う唄。
ありがとう、とアッシュは微笑し、そのメロディに己の心を合わせた。心にメロディが染み込み、音色となる。
ルークの名を唱え続けるアッシュの唇から、歌が零れた。ルークの歌と交じり合い、ローレライが揺らめく。
他の音素集合体たちも、歌うように二人の音色に色とりどりの光を合わせ、歌を奏でた。

(お前の歌だ、ルーク)
音素集合体たちすらも喜ばせ、この乾ききった俺の心に優しい水を注いでくれる、お前の唄。
愛しい愛しい、光。お前の欠片をすべて集めて、お前をこの手に取り戻そう。
そうして、二人、穏やかに時を刻んで、愛し合おう。
もう何にも悩まされることもなく、何にも傷つけられることもなく、何にも憎まれることもなく。

一つ一つ、アッシュは光を掬っていく。
一つ一つ、積み重ね、唄を歌い、名を呼んで。
一つ一つ、愛を囁く。

「ルーク」

この優しい世界で、お前を愛し続けていこう。
これほどの幸せが、自分に訪れるなんて、考えもしなかった。
こんなふうに穏やかな優しさが、この心に満ちる日が来るなんて、夢にも思わなかった。
お前のおかげだ。お前に出会えたからだ。
お前が俺を、愛してくれたからだ。

大好き。大好きだよ、アッシュ。
ルークが笑い、ルークが歌う。

「ルーク」

俺もお前を愛しているよ。
アッシュは微笑み、光に口付けを落とす。光が照れたように明滅する。
ともに、ただともに。
地上では成し遂げられない、成し遂げることが赦されない願いだけれど、ここでなら。
音素たちなら、赦してくれるから。

掬って、抱えて、愛して。
一つ、一つ、慈しんで。
壊れやすい、脆い二つの心を、魂を、音素たちは包み込む。
二つの砕かれた心を包み、癒えますようにと願い、歌う。

「ルーク」

俺もお前が好きだ、愛している。
だからだから、いつまでも。
アッシュはルークの名を呼び続け、また一つと光を掬った。


END

 

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アッシュの話です。
楽しんで頂ければ、幸いです。

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