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月齢

女性向けブログ。ネタ語りや小説など。ルーク至上主義。

2025.04.21
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2008.10.28
ss

アシュルク。ED後、どこかで二人で暮らしている二人の話。
最近、書いているものがあんまり甘い要素がないなー、と思い、いちゃいちゃしたのが書きたくなりまして…。
その思いそのままに、赤毛がいちゃこらしてます。
ほぼそれだけです…(苦笑)


注!同行者厳しめ






「好きだよ、アッシュ」

はにかみ、頬を淡く朱に染めるルークに、アッシュはふと首を傾いだ。どうかした?とルークも同じく首を傾ぐ。
自分の真似をするかのようなルークの動きに小さく笑い、アッシュは朱色の頭を撫でた。気持ちよさそうに、ルークが翡翠の目を細める。
柔らかいルークの表情に、内心、ホッと息を吐く。こんなふうにルークが穏やかに笑う顔を見ることが出来て、素直に嬉しい。

「そういえば、ねだられたことがないな、と思ってな」
「ん?何を?」
「好きという言葉を」

きょとん、と目を丸くするルークに苦笑する。二度、三度と瞬き、ルークがカリ、と頬を掻いた。
言葉なく、開閉を繰り返す唇を見やり、アッシュはルークが考えをまとめるのを無言で待つ。その間も、ルークの先に行くにつれ金へと変わる朱色の髪に指を滑らせながら。

「…そりゃ、さ」
「うん?」
「言って欲しくないわけじゃ、ねぇけどさ」
「ああ」

拙い口調なのは、己の考えを、想いを言葉にすることにルークが不慣れだからだろう。
自分の感情を押し殺すように、そう仕向けられてきたから。
笑顔一つ零すことにだって、二人で暮らし始めた当初は、はルークに躊躇いがあったことをアッシュは知っている。人の目を気にするように。──否、ともに歩んでいたはずの『仲間』たちの視線を気にするように。
彼らのもとには帰らず、こうして二人きりで生きる道を選んだというのに、ルークの中には、いまだ恐れが残っているのだ。己の感情を素直に吐露する術を失ってしまっている。己の感情をぶつけた結果、何かを失うことを恐れている。
心からの笑顔を零すようになったのは、本当に最近のことだ。そのことに、自分がどれほど安堵しているか、ルークは気づいていまい。
そして、思う。二度と、彼らとルークを会わせるものか、と。二度と、ルークを傷つけさせるものかと。
彼らにその気がなくとも、その視線だけで、その吐息だけで、彼らはルークを傷つけるのだから。

「言ってくれたら嬉しいけど、何つーか」
「ああ」
「…言えるだけでさ、幸せなんだ、俺」

へにゃりと眉尻を下げ、ルークが相好を崩す。
照れくさそうに、幸せそうに、嬉しそうに。
アッシュは眉を跳ね上げ、言葉を失った。

「だって、俺、考えもしなかったんだ。アッシュに好きだって言える日が来るなんて」
「……」
「アッシュに好きだって言うこと、許してもらえるなんてさ、思ってなかったんだ。だって、俺はアッシュの居場所を奪ったし、名前も奪ったし…だから、憎まれても当然だって思ってて」

だから、こうして好きだって言えるだけで、幸せなんだ。
屈託なく、ルークが笑って、頬を赤らめる。
その言葉がどれほど切ないものか、どれほどアッシュの心を締め付けるかも知らずに。気づかずに。

「ッ」

何を言うことも出来ず、ただアッシュはルークの身体を抱き寄せ、きつくきつく抱き締めた。
アッシュ?!と驚くルークの声が聞こえたが、離してやるものかと、より腕に力を込める。苦しいという声にも、耳を貸さない。

(この…馬鹿が…!)
口には出さず、心の内で怒鳴る。ルークに向けて、何より、自分に向けて。
居場所を奪ったのは、ルークではなく、ヴァンだ。
赤子同然だったルークに、何が出来たという。
ああ、けれど、それすらも理解できなかったのだ、昔の自分は。
ルークを責めて、その孤独にも気づかずに。本当に自分を愛してくれている心にも気づかずに。傷つけて、苛んで。

「…ルーク、ルーク…ッ」
「アッシュ?」

あまりにきつく抱き締めているからだろう。ルークが自分を呼ぶ声は、少しだけ苦しそうに掠れている。
けれど、感極まったような、あるいは切羽詰ったような自分の声を気遣ったのか、労わるようにルークが背を撫でてきて。
ああ、とアッシュは息を吐く。
愛しさで、胸が押し潰されそうだった。恋しくて、頭の奥が痺れそうになる。

ルークは見返りを求めない。ただアッシュに伝えることが出来て嬉しいと、与えることが出来て幸せなのだと、心底、喜びに満ちた笑みを浮かべる。
奪われるばかりで、与えられることがあっても、見返りを求められるばかりだったアッシュにとって、ルークから与えられるすべてが愛しくて、幸せ、そのもので。

(俺こそ、思わなかった)
この世に、これほど一途に、純粋に、無償の愛を自分へと注いでくれる相手がいたなんて。
これほどに、息が詰まるほど、胸が詰まるほど、身体中が痺れてしまうほど、何があっても離したくないとそう思うほど、愛する相手に巡りあえるなんて。
視界がじわりと涙で歪む。鼻の奥が、ツンと痛む。

「ルーク」
「うん?」

温かで、優しいルークの手のひらを、背に感じる。
アッシュは鼻を啜り、笑みを零した。
こつん、とルークと額を合わせる。
呼気が触れ合い、ルークの熱が上昇した吐息がアッシュの唇に掛かった。

「あ、アッシュ?」

蒸気した頬が愛しい。
戸惑うように泳ぐ翡翠の目も愛しい。
何もかも、ルークだから、愛しい。

「俺もだ」
「え?」
「俺も、お前に言うことが出来る。ただそれだけで幸せだ」

愛している。
言葉がくぐもるほど近い距離で、愛を告げる。
胸いっぱいの思いを込めて。
込めても込めても幾らでも溢れてくる想いを詰めて。
翡翠の目を愛しさに細め、アッシュは微笑む。
ルークがふる、と喜びに震え、うん、とアッシュと同じく微笑んだ。

「俺も、愛してる」

アッシュのこと、大好き。
言葉を舌に乗せ、アッシュはルークに口付けた。
舌を絡ませ、何度も何度もルークの名を呼び、愛を唱える。
ルークの身体の奥へ、心臓へと刻み込むように。ルークの心の滋養となるように。

「は…っ、あ、ッシュ」
「…ルーク」

淡く閉じられた、涙で湿る朱色の睫毛に縁取られた翡翠を間近で覗き込みながら、アッシュは口の端を吊り上げた。
ルークがねだってこなかった分も、伝えたくてたまらない。ルークが今まで重ねてくれてきた分も、伝えたくてたまらない。
既に茹蛸のように真っ赤な顔をしたルークが、もういい、と言い出すまで、何度でも、何度でも。

「愛している」

そう繰り返すことを、アッシュは一人、心に決めた。ルークが幸せに溶けてしまいそうに、ふにゃ、と笑んだ。


END


 

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アッシュの話です。
楽しんで頂ければ、幸いです。

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