忍者ブログ

月齢

女性向けブログ。ネタ語りや小説など。ルーク至上主義。

2025.04.21
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2008.11.21
ss

ED後。アニスとティアの話です。
アニスは原作どおりの子でしたが、ED後、フローリアンの後ろ盾になるためにも努力を重ねて、導師守護役の名に恥じない子になってます。
ティアは成長してませんが(汗)
ルクノエが根底にあるので、ルクティア好きな方はご注意を。

注!ティアに厳しめ






お茶を淹れてくるわ、と席を立ったティアを見送り、アニスはきょろりと久々に訪れたユリアシティのティアの部屋を見回した。
部屋の片隅に積み重ねられた薄い本のようなものが目が留まる。
あれだ、とアニスは目を細めた。ティアへと送られた、見合い写真。聞いていたよりも、ずいぶんと数が多い。
ろくに開かれた様子すらなく見えるのは、きっと気のせいではないのだろう。
ああして、見ないフリをしていれば、いつしかなくなってくれるのではないかとでも思っているのだろうか。現実を直視せず、己の都合がいいように捻じ曲げようとする癖は、二年経った今も変わらないらしい。

はぁ、とアニスはため息を零す。
確かに、一般的な考え方をするならば、十八というのは結婚するには早い。だが、珍しいわけではない。十六で結婚している人間だっている。
まして、それが血筋の保護や政略的な意味合いを含む結婚となれば、なおさら、年齢は二の次だ。

(ティアの場合、結婚を考えたくないのは若いからってだけじゃないだろうけど)
それが厄介なのだ、とアニスは首を振る。
いい加減、理解してもいいだろうに。恋をするのはいい。恋焦がれる気持ちもわかる。
けれど、──相手が悪いことに、いまだにティアは気づかない。
恋焦がれる相手の帰りを待ち続ける、一途で健気な乙女。
ティアは、そんな役割にも酔っているのかもしれない。
馬鹿馬鹿しいと、アニスは唇を歪める。

「お待たせ、アニス。お茶請けはメープルクッキーでよかったかしら」
「うん、ありがとう」

内心の苛立ちを綺麗に隠し、にこ、と無邪気に笑う。このくらい、朝飯前だ。
ティアからも笑みが返ってくる。この笑みはいつまで続くかな、と笑顔の仮面の下、ティアを観察する。
カチャ、と陶器が触れ合う音をさせ、目の前に置かれた紅茶からは、ふわりとベルガモットの香りが湯気とともに漂い、アニスの鼻腔を擽った。
添えられたクッキーからも、甘い香りが漂ってくる。
外殻大地が降下してからというもの、ユリアシティの物資は潤うようになった。このクッキーもキムラスカ産のものだろう。紅茶は香りのよさから察するに、マルクト産のいい茶葉が使われているようだ。

カシッ、と一口、クッキーを齧り、口の中に広がるメープルの香りに、アニスは舌鼓を打つ。美味しいクッキーだ。これは、値段もそれなりにするはずだ。
さすが市長の孫娘であり、救世の英雄として軍位があがり、給料も上がっただけはある。
自分とて例外ではないものの、節約を心がけているアニスから見れば、目の前の紅茶もクッキーも贅沢品だと言えた。

「このクッキーも紅茶も美味しい!」
「ふふ、気に入ってもらえてよかったわ」

穏やかに笑うティアの栗色の髪がさらりと揺れる。
アニスはここぞとばかりにクッキーや紅茶の味を堪能し、他愛のない会話を交わしつつ、ちら、と目線を見合い写真の山に向けた。
さも、今、気づいたとでも言わんばかりに驚いたように声を上げる。

「ねぇねぇ、ティア。あれって、何?もしかして、お見合い写真?」

すっごい数…!
我ながら白々しいとは思ったが、アニスは感嘆の声をあげ、大きな目を見開く。ティアの口から深い深いため息が零れた。
ティアがこちらの演技に気づいた様子はまったくない。

「ええ、そうよ。…本当、迷惑だわ」

アニスだってそう思うでしょう?
同意が欲しいとばかりに首を傾ぎ、困ったように同情を誘うような笑みを浮かべるティアに、アニスは見合い写真に驚いていて気づかない──というフリをした。
いちいち、そうだね、などと心にもない相槌を打ってやるほど、自分は寛容ではない。
それに、むしろこの場合、同情を寄せるべきなのは写真を見てすらもらえていない上、迷惑と断じられた見合い写真の相手の方だろうとアニスは思う。

「あれだけあるんじゃ、選り取りみどりだね」
「何言ってるのよ、アニス。私は見合いなんてするつもり、ないわ」

あるわけないじゃないの、と言わんばかりに断固として首を振るティアに、内心、辟易する。
ティアが見合いを断る理由なんて、訊ねるまでもない。
それでも、一応、確かめておくかと口を開こうとしたところで、ティアが先に理由をぽつりと口にした。

「だって、私は…待って、いるんだもの」

長い睫毛を震わせ、目を伏せる様は愛しい人を待つ女そのもの。早く帰ってきて、と願うように、ティアが呟く。
ルーク、と淡く紅が塗られた唇が動いた。アニスは、呆れを隠しきれず、思わず、はぁ、とため息を零した。

「…ねぇ、ティア。ルークを待つの、もう止めなよ」
「アニス…。ありがとう、気を使ってくれてるのね。いいの、私が待ちたいだけなの」

アニスの言葉を自分に都合がいいように解釈し、ティアが淡く微笑む。
ひく、とアニスは引き攣りそうになる己の頬を無理やり押さえ込み、首を振った。ツインテールがふわふわ揺れる。
自分が言いたいのは、そういうことではない。

「あのさ、この際だからはっきり言うけど、ルークが帰ってきても、ティアとは結婚しないと思うよ」
「何故、そんなことを言うの?」

眉を跳ね上げるティアに、考えればわかるじゃん、とアニスはため息を禁じえない。いや、考えなくともわかるはずだ。軍人ならば。
身分というものを、やっぱりティアはわかっていない。──二年ほど前の自分を考えると、あまり強くも責められないが。

導師、総長、大詠師というトップの三人を失った教団は、この二年、忙しなかった。だが、忙しない中でも、アニスは導師守護役としての教育を一から受け直した。モースの思惑で配置換えさせられたこともあり、導師守護役としての教育をまともに受けていないことを自覚していたためだ。
今では、最年少での導師守護役長も夢ではないとすら言われるほどになり、アニスは二年前の己の数々のありえない所業を日々、悔いている。自己嫌悪に陥らない日などない。だからこそ、日々の努力も怠らない。
実力をつけ、権力を得る。それは、レプリカということで微妙な立場に置かれることが多いフローリアンを守ることにも繋がるからだ。
アニスは肩を竦め、鼻を鳴らした。

「っていうか、出来ないって言った方が正しいんだけどね。だって、ルークは公爵子息様で、子爵の地位も賜ってるんだよ?ティアとじゃ、身分違いもいいところじゃない」

ティアはユリアの子孫だが、それだけだ。今の世においては、フェンデ家はあくまでガルディオス家の部下に当たる。貴族位は持ち合わせていない。
ユリアシティの市長の孫娘、という地位とて、決して高い地位ではない。ユリアシティは国でもなんでもないのだ。ケセドニアのような自治区、そういう認識だ。
そんなティアと、レプリカとはいえ、キムラスカの王族の一人であるルークが結ばれるわけがない。

「ルークが帰ってきたら、アッシュが王様になるわけだから、公爵家を継ぐことになるだろうし。そうなったら、ますますティアを奥さんに、なんて出来るわけないじゃん。軍人が貴族の奥方になった、なんて話、ティアだってそうそう聞いたことないでしょ?もっと地位の高い人…和平の強化を狙って、マルクトあたりから同じくらいの地位のご令嬢とかをお嫁さんにすることになるんじゃないかな」

憤慨露わに目を吊り上げるティアに、失笑する。
大体さぁ、とアニスは感情のままに口を開こうとしたティアを遮るように、言葉を次いだ。

「何でルークもティアを好きだって決め付けてるの?」
「…え?」
「ルーク、そんなこと一言も言ってないじゃん。ティアに好きだーなんて、言ったことあったっけ?」

ねぇ、どうなの。
じ、とティアの瞳を覗き込む。明らかに狼狽するティアの唇からは、それは、でも、と言い訳にもならない言葉が零れ出た。

「所詮、ティアの一方的な片思いじゃん」

それも、身分違いの。
それこそ、ルークにとってはいい迷惑だろう。ルークが自分を好きだと当然のように思い込んだ女に待たれていては、ルークだって帰ってきたくなどないに違いない。
自分だって嫌だ、とアニスは思う。

(それにルークが好きだったのって、さ)
アニスの脳裏に、アルビオールのパイロットとして協力してくれたノエルの姿がよぎる。いずれにせよ、身分違いの恋であることに変わりはないけれど、このまま、ティアがルークは自分を好きなのだと思い込んだまま、というのは気に入らない。
それが、面倒だと知りつつも、今回のティアに見合いをさせる任務を引き受けた理由の一つだ。ティアのことだ。ノエルとルークが好き合っていたことを知れば、ノエルを侮辱しかねない。泥棒猫だとでも罵りかねない。
濡れ衣もいいところだ。それではあまりにノエルが哀れだ。
身分違いの恋だと、ティアと違い、ノエルは自覚している。だからこそ、彼女は決してルークに想いを告げなかった。誰にも言わなかった。ルークもだ。けれど、二人の間には、確かにそういう想いの繋がりがあったのだと、アニスは確信している。
だから、とアニスは思う。せめて、せめてノエルには、ルークを想うくらいの自由を持っていて欲しい、と。ノエルのルークを想う気持ちを、誰にも否定なんてさせたくない、と。
ガタ、と席を立ち、積まれた見合い写真を、アニスは両手で持ち上げた。愕然としたままのティアの前に、ドサッとそれを突きつけるように置く。

「ほら、ティア。ちゃーんと選びなよ。せっかくティアのために、って用意されたんだからさ」
「だ、だけど、アニス…」
「まだ早いとか、そんな言い訳ならアニスちゃん、聞きたくないな!ティアは総長が死んじゃった今、唯一のユリアの直系の子孫なんだよ?たっくさん子孫残してくれないと、教団としても困るんだぁ」

にっこり。アニスは微笑む。
もちろん、譜歌もちゃーんと教えてあげてね?と愛らしく小首を傾げて、言い足す。ユリアの譜歌は、ティアの代で終わらせていいものではないのだ。ローレライを召喚することが可能である譜歌は、決して失われぬようにしなくてはならない。
ティアにはそれを子孫に伝えてもらわねばならない。それがティアの使命とでもいうものだ。ティアをいつまでも、いつ帰ってくるかも、帰ってきてくれるのかもわからないルークを待たせたままにはしておけない。

「私も一緒に選んであげるからさ」

ね、ティア。
なおも反論しようとするティアの口を塞ぐように、見合い写真を一枚手に取り、開く。なかなか好条件の相手だ。ティアにはもったいないくらい、と内心、苦笑する。

(ねぇ、ルーク。帰って、きてよ)
ルークを傷つける人は、近づけさせないから。ルークを傷つけられないよう、アニスちゃん、頑張るから。
だから、帰ってきて。帰ってきてよ。フローリアンもルークに会いたがってるよ。

(そして、そしてね、ルーク)
イオン様の分も幸せになって欲しいの。
だって、イオン様がそう願っていたから。イオン様は本当にルークが好きだったから。
ルークを守ることが、自分が犯した罪の償いになるなどと、アニスとて思っていない。それでも、イオンのために出来る精一杯のことが、ルークが幸せになれるよう、ルークを守ることだと思うから。

(もし、ノエルと駆け落ちしたいっていうなら、協力するからさ)
ティアが相手だったら、不幸になるから止めなさい、と説教するところだが、ノエルなら話は別だ。
アニスは現金な己の心のありように苦笑いを零した。


END


 

PR
Post your Comment
Name
Title
Mail
URL
Select Color
Comment
pass  emoji Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
日記にはそれらしきことが・・・
日記には、そうかも、と思わせる記述が幾つかあり、ルクティア派の原動力となってましたが、確かにルークはティアに「好き」だとは言ってない。ティア→ルークの「好き」の後に、ルークが何か言い掛けたのがそれだ、とルクティア派は主張しますが、それだって日記には「礼を言おうとした」との記述にとどまっていました。
ティアに対して、些か偏執的なまでのアンチ思考を抱いてる我が身としては、事あるごとにルークの言動を批判・否定してきたティアにルークが恋愛感情を抱くことは、殺意を抱くよりも遙かに難しい、とさえ思いました。
成程、ティアがルークを想うのはティアの勝手ですが、ルークがティアを思慕するか否かはルークの自由であり、そうしなかったとして責められる謂れはない。
そもそも、散々に、レプリカと人間は異なるのだ、と見せつけられてきたルークが被験者にそういう感情を抱くのは、異種族愛にも等しいのではないか、とさえ疑ってしまいます。
そう思うルークをティアは受け入れられるだろうか? まず、無理だろうなー。本編のままに「卑屈」の一言で切り捨ててしまうのでしょう。ルークの葛藤などお構い無しに、ただ己の意に沿わないと言うだけの理由で。
私は別段ルクノエ派ではありませんが、なんとなくノエルは、そんな思いもマルッと受け止めてくれた上で、ルークを想ってくれる娘に見えました。
じっくり考えさせてくれる良作を、ありがとうございます。
長良: 2008.11/22(Sat) 12:19 Edit
コメントありがとうございました!
返信が遅くなってすいません。
ルークは明確にティアに好きだとは言っていないし、ティアからルークへの「好き」の後も、ルークもそう答えようとしたとはあまり思えないんですよね。言うとしたら、まさに「礼を言おうとした」とかかな、と。
私もティアに対しては特にフィルターが掛かってますが、ルークを否定し、見張っていたという印象がありますから、ルークがティアに恋愛感情を抱くのは難しいよなぁ、と思っています。
本当、ティアがルークを想うのはティアの都合ですが、ルークがそれに応えなくちゃいけない道理はないんですよね。アリエッタとアニスのイオンを巡る関係のスキットで、ガイとジェイドがティアとナタリアのことを同じようなたとえとして口にしてましたが、えー?と思った覚えがあります。ティアがルークを好きなんだから、ルークもティアを好きにならないといけないといった空気が流れているのに納得がいかなかったといいますか。
異種族愛かー…。なるほど。そうですね、ルークにとってレプリカと被験者は違うものだと散々思わせられてきていますから、ルークが被験者であるティアを好きになることはますます難しいですよね。でも、同行者たちはルークをレプリカだと言いつつも、他のレプリカたちとは違って扱おうとするから、「卑屈」の一言で済ませるでしょうね…。本当、おかしな話だ。
ノエルは丸ごとルークという存在を受け止めてくれる子だと思っているので、ついついルクノエを混ぜたくなってしまったのですが、ルクノエ派じゃない方にもノエルをそんな娘に思って頂けたなんて嬉しいです。
良作だなんて…こちらこそ、考え深いコメントをありがとうございました!
2008/11/28(Fri)
Trackback
この記事のトラックバックURL:
  BackHOME : Next 
カレンダー
03 2025/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
最新記事
WEB拍手
お礼文として、「アッシュと天使たち」から一本。
アッシュの話です。
楽しんで頂ければ、幸いです。

web拍手
最新コメント
[07/19 グミ]
[02/26 きんぎょ姫]
[02/26 きんぎょ姫]
[05/08 ひかり]
[05/02 ひかり]
リンク(サーチ&素材)
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析

月齢 wrote all articles.
Powered by Ninja.blog / TemplateDesign by TMP  

忍者ブログ[PR]