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月齢

女性向けブログ。ネタ語りや小説など。ルーク至上主義。

2025.04.20
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2008.11.04
ss

ロレルク。ED後。
虐げられるレプリカたちの姿に涙するルークと、そんなルークを痛ましく思うローレライの話。
被験者に厳しいです。滅亡ルート。

注!被験者に厳しめ





聞こえるんだ、とルークがはらはらと涙を零しながら、呟いた。
耳を塞ぐこともせず、目を閉じることもせず、泣き続けながら、聞こえる、と呟く。見えると呟く。
涙で潤む翡翠は、光が消えているけれど、透明だ。
ぺたん、と尻をつき、ルークは両腕をだらりと身体の両脇に力なく垂らし、頬を涙で濡らす。拭うことすら、ルークの手は忘れているようだった。
そんな力すら出せぬほどに、憔悴しきってもいた。

「聞こえるんだ、ローレライ」

レプリカたちの嘆きの声が。
レプリカたちの苦痛の声が。
レプリカたちの断末魔が。

「見えるんだ、ローレライ」

レプリカたちの涙が。
レプリカたちの歪んだ顔が。
レプリカたちの最期の顔が。

「……みんな、死んでく」

消えていく。音素となって。キラキラと。
何も残さず、何もなかったように、跡形もなく消えていく。
そして、それを幸いと、レプリカたちはまた一人、被験者たちに殺されていく。
レプリカの死は残らない。遺体という最たる証拠が残らない。
レプリカを殺すのは、心無い被験者ばかりではない。心ある被験者も同じく、だ。
家族に優しく、友情に篤い。善人だと言われる被験者ですら、レプリカを消耗品だと見なし、こき使う。
仕事を与えてやっている。飯も食わせてやっている。有り難く思え、と言わんばかりに。
けれど、被験者たちは、そんな人間を素晴らしいと讃える。なんて優しい人間だと、なんていい人なのかと。
レプリカの面倒を見てやっているなんて、素晴らしいと。

被験者は認めない。レプリカが自分たちと同じように感情を持ち、生きていることを認めない。
心臓は動いているのに、それでも彼らはレプリカは自分たちとは違う生き物だと見なす。
被験者を食らって生まれる、そういう生き物だと思っている被験者もいる。
確かに、レプリカ情報を抜かれたことで、死んでしまった被験者もいただろう。

「だけど、だけどだけど」

レプリカを生み出したのは、被験者なのだ。レプリカは勝手に生まれてくることは出来ない。
譜業が必要で、それを動かす者が必要なのだ。それを動かしたのは、被験者ではないか。
レプリカを一方的に生み出し、そして、レプリカを一方的に『消費』する。
レプリカは被験者に従属すべきだと、それが当然だと思っている。

「保護なんて、言うけどさ」

ルークは薄く笑い、ゆるゆると首を振った。壊れたようにくすくすと、ルークは笑う。
くすくすと、泣きながら、笑う。

「それなら、どうしてレプリカが一人で生きていけるような、レプリカたちがレプリカたちだけで生きられるような力を与えてやらないんだ」

キムラスカもマルクトも、レプリカを保護するとは言うけれど。実際、彼らは保護しているつもりなのだろうけれど。
レプリカに技術を与え、知識を与え。そこまでは、いい。
問題はそこから先だ。レプリカたちは、皆、慈善家の顔をした被験者たちに渡される。
そして、そこで働かされる。消えるまで。死んでしまうまで。
被験者に生かされる。被験者に依存しなければ生きられない。そんな環境の中でレプリカたちは生きている。
レプリカたちだけで生きることなんて出来ないと、頭から決め付けられて。レプリカたちだけの社会など、与えられるわけがないとそう言うように。

『…人は、恐れているのだろうな』

ローレライの声に、ルークは顔を上げた。涙で濡れる頬に、焔が触れる。
一瞬、頬が乾く。けれど、溢れ続ける涙で、ルークの頬はまたすぐに濡れた。

「恐れる…?」
『そうだ。レプリカたちが自我を持つことを。自我を持ち、自分たちに反することを』

だから、自由を奪う。お前たちは被験者のために生きる。それ以外の生など認めない。
そう抑え込んで、決め付けて。
ルークは茫洋とした目を、ローレライに向けた。その目はローレライを素通りし、レプリカたちを見つめいた。
レプリカがまた一人、最期の息を引き取り、消えていく。

「…ヴァン師匠が、正しかったのかな」

光を失くした翡翠が、ゆっくりと瞬く。涙が薄く開いた唇に入り込む。
舌先に塩辛い涙の味が広がる。

「被験者は消えるべきだったのかな、ローレライ。レプリカたちの世界こそ、正しい世界だったのかな」

もうよくわからないんだ。
だって、声が響くから。泣き顔が見えるから。
絶望し、すべてを諦めたレプリカの顔が見えるから。

『…眠れ、ルーク』

夢も見ないくらい、深く深く。
ローレライがルークの前に焔の手を翳し、カクン、とルークの身体が崩折れた。
とさりと倒れた身体の上で、ローレライがゆらゆら揺らぐ。

『…我は預言を詠む』

被験者の滅びの預言を。
レプリカたちの幸せの預言を。
ルークが笑ってくれる預言を、夢を見よう。
被験者は預言を詠まない。預言から脱却するために、預言を詠むことを禁じ、また、預言を詠むことが出来るだけの第七音素も今の地上にはないからだ。
だから、今から自分が見る『夢』は被験者が知ることはない。教えてやるつもりもない。

被験者たちには憎悪を。
我が子たちには愛を。
愛しい焔の光が、再び、笑ってくれるように。
もう泣かないでいいように。

『滅びて、しまうがいい』

この子の願いを踏みにじり、この子を泣かせ続ける被験者など、皆々、消えてしまうがいい。
ローレライは燃え上がり、眠るルークを抱き締めた。


END

 

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