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月齢

女性向けブログ。ネタ語りや小説など。ルーク至上主義。

2025.04.20
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2008.03.28
『黒き焔の龍は笑う』
(番外編)

ルークとセイナと同行者
食事時の毒味役について。

注!同行者に厳しめ




たとえ、それがどんな場合であっても、ルークが口にするものは、まずセイナが口にする。
それは常に例外はない。
更なる軋轢を生み出すことをルークが好まなかったため、食事を当番制で作っている今はなおのことだ。
その日もまた、セイナが先にティアが作ったカレーを野菜などすべての食材を少しずつ食べてから、ルークはそれを当然のものとして受け取った。
ニンジンは全部食べてくれてもよかったのだが、それを言えば説教が待っているので口にはしない。
不思議そうにアニスが首を傾げた。

「ルーク様ぁ、前から思ってたんですけどぉ」
「何だよ?」

カレーに入っているニンジンをもてあそびながら、ルークはアニスを見やった。
この媚びた態度にも、いい加減慣れてきた。

「なんでセイナが食べたの、食べるんですかぁ?」

別に汚いってわけじゃないですけどぉ。
ちら、とセイナを横目で窺うアニスには、セイナに対する反感が溢れている。
女ではないが、男でもない人目を惹く容姿をしたセイナに敵愾心を抱いているらしい。
そんな視線を向けられたセイナが目をス、と細める。
明らかに呆れているその目に、ルークは苦笑した。

「何でも何もないだろ。セイナは俺を守るためにここにいるんだし」
「ええと?」

とっくに気づいてはいたが、やはり、この導師守護役はとことん役立たずだ。
守護役としての教育が済んでいないということなのかもしれないが、だったら連れて歩くな、とルークとセイナだけは思っている。
はっきり言ったものか、ルークは逡巡した。
はっきり言えば、カレーを作ったティアが何を言い出すかわかったものではない。煩わしいのはご免だ。
セイナもそう思っているらしく、そっとため息を吐くに留めている。
ルークもまた笑みを浮かべて曖昧に濁す。
が、そんな二人の『気遣い』はものの数秒で無駄に終わってしまった。

「なるほど、毒味役ですか。我々は信頼されてないんですねぇ」

嫌味たっぷりに言い放っているが、ルークは侮蔑の眼差しをジェイドに向けるだけだ。
どうやら、ジェイドは無意識のうちにだろうが、同行者たちの作る料理は安全だと高を括っているようだが、毒味役の存在は貴族としては当然のことである。

それでも、ルークはそのせいで動物でも人でも死んでしまうのは嫌だと思っている。
実際、幼いころにブウサギがその犠牲になったのを見たときには、ルークは食事を拒絶した。
食べなければ、毒味をする必要もない。そう思ったからである。
そんなルークに救いを齎したのは、やはりセイナだった。
僕は致死量の毒を服用しても大丈夫ですから、と微笑んで抱きしめてくれたことをルークは覚えている。
約束もした。毒で死んだりなどしない、と。
その約束どおり、何度か仕込まれていた毒も、セイナに害を及ぼすことはなかった。
それが何故かはルークは訊いていない。セイナが困ったような顔をするからだ。

「毒味役ってどういうこと?!どうして私が毒なんて入れなきゃならないのよ、失礼な人たちね…!」

案の定、憤慨したティアに、ルークはうんざりしてため息を零す。
疑っているという以前の問題なのだが。
たとえ、ティアにそういう意図がなかったとしても、毒草など、混ざっている可能性は捨てきれない。
軍人ならば、サバイバルに伴う危険も理解していて欲しいものだとルークは思わないではいられない。

「…なら、訊くけど、このカレーに使われてる玉葱が毒のある植物でした、なんてことになったらどうするわけ?」

セイナが、怒りで立ち上がっているティアを睨む。
そんな馬鹿なこと!とティアが叫ぶが、可能性は捨てきれないとルーク・フォン・ファブレの護衛は笑う。

「万が一、いや、億が一だろうが、可能性がある限り、主君の御身を守ろうとするのは、護衛として当然と思わないか?」

なぁ。セイナの視線はアニスにも飛ぶ。
導師の身を守るために、お前は何をしてるんだと、暗に責めていることに気づいているのは、どうやらルーク一人のようだった。
他は誰も気づかない。同じく護衛であるガイも何を考えているのか苦笑しているだけだ。

(あいつ、頭いいんじゃねぇのか…)
ルークが失望するのは、死霊使いその人。
皇帝の懐刀と呼ばれるほどの男なのだから、己が身を犠牲にしてでも主君を守ろうとする部下の実情を知っていると思っていたのだが。
期待外れだ。幼馴染ということで、甘やかされているんだろう。
仲間に引き込もうかと思っていたが、これでは足手まといになるだけだ。

(これが皇帝の名代かよ…)
タルタロスの故障でセントビナーで別れたマルクト兵たちを見ていた限り、軍人教育はしっかりしていたはずなのだが。
こいつのこれは幼馴染特権ってやつか。大体、何で最低限の護衛すらつけずに兵たちまるごと置いてきたんだ。
何だかもうよくわからない。神託の盾に目をつけられているから、目立たないためにとは言っても、限度があるだろ。
間違いなく、こいつは自分を過信してる。お前、封印術掛けられてんじゃなかったのか。
ここまでの道中だってセイナがいなかったら、途中で全滅してたぞ。
セイナだって民間人なのに。まあ、反則的な強さを誇ってはいるが。ヴァン師匠さえも瞬殺しそうだが。

「っ、なら、貴方たちは貴方たちで食事を取ればいいでしょう!?勝手にすればいいわ」

感情に任せたティアの言葉に、ルークはセイナと顔を見合わせ。
にやり、と我が意を得たりとばかりに口の端を吊り上げた。

その日からルークの食事はセイナ手ずからのものとなり、決して失敗のないプロ級の料理を前に、ティアたちはもそもそとぬるぬるした何かを食べる光景が見られるようになった。


END


セイナは一人暮らしが長いので、家事が得意です。
フランス料理のような飾りつけのセンスはないですが、味は抜群。
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