月齢
女性向けブログ。ネタ語りや小説など。ルーク至上主義。
2008.03.29
『雲路の果て 』
Ⅱ.再びの出会い(チーグルの森)
戻ってきたミュウの話。
ミュウの新たな決意と、なんか軽いローレライ。
ミュウ視点って難しいな…。
Ⅱ.再びの出会い(チーグルの森)
戻ってきたミュウの話。
ミュウの新たな決意と、なんか軽いローレライ。
ミュウ視点って難しいな…。
ご主人様、ご主人様、ルーク様…!
儚い微笑み一つだけを残し、消えてしまった、大切な人。
自分と同じ咎人であった人。
背負った罪を償うために、あの人は一人で消えてしまった。
ミュウはひたすら泣いた。
ただそれだけを覚えている。
だから。
「……みゅう?」
目覚めたとき、ミュウは自分がどこにいるのか、わからなかった。
Ⅱ.再びの出会い
きょとん、と瞬き、起き上がる。
見たことがある場所ですのと思いながら、ミュウは辺りを見回した。
冷たい葉っぱのベッドに、自分が寝ていることに気づく。
「みゅ、みゅ、みゅううぅう?」
困惑のまま、声を上げ──ミュウはぽっこりとした腹に、ソーサラーリングがないことに気がついた。
どこに行ったのかと、慌てて探す。
だが、どこにもない。
その代わり、自分がいる場所がどこかがわかった。
──チーグルの、森ですの。
ここは牢だ。
でも、何故。
困り顔で俯き、いつ帰ってきたのだろう、と考える。
そして、いつ閉じ込められたのだろうとも考える。
ちらりと木で出来た格子を見やり、ミュウは哀しげに顔を伏せた。
『帰ってきた─とは少し違うかなぁ』
でも、ある意味、そのとおりかな。
そんな声が聞こえ、ミュウは弾かれたように顔を上げた。
今の声は誰の声だろう。
顔を上げた先に、ミュウは目を瞠った。
ふわふわと、人の拳大程度の光球が浮いている。
「みゅうう?!」
叫び、後ずさる。
光球が『逃げることはないだろ…』と傷ついたような声で呟いた。
『君たちチーグルは、我の聖獣なんだしさー』
…あなた、誰ですの?
ミュウはおそるおそる、光球に訊ねる。
もっとも、ソーサラーリングがなく、人の言葉を話せない今、ミュウミュウという鳴き声でしかなかったが。
にこっ、と光球が笑った──ような気がした。
『ローレライだよー』
ミュウは卒倒しかけた。
こんな軽いのがローレライだなんて。
…こんな光球のために、ご主人様は。
ぐ、と胸を逸らし、ミュウは咥内に火を溜めた。
ソーサラーリングがない今、威力のある火を吐くことは難しいだろうが、一矢報いなければ、気がすまない。
『まあ、待ちなさい。我は君にもチャンスをあげにきたんだから』
……チャンス?
炎を口に溜めたまま、首を傾ぐ。
光球はゆらりと上下に動き(頷いたつもりなのだろう)続けた。
『ここは、過去…君がルークと出会った時間になる』
目を大きく瞠り、炎を飲み砕く。
光球、もとい、ローレライの言葉を、ミュウは必死で頭を回転させ、考え込んだ。
過去。
君がルークと出会った時間。
──それじゃ。
ご主人様が、生きている?
この牢から出たら、ご主人様に会える?
牢から出されたときのことを、ミュウは思い出す。
長老の前に引き出され、朱色の髪の少年と、チーグルの罪びとは、そこで初めて出会ったのだ。
『ミュウ。君の知るルークも、戻ってきている』
ミュウは歓喜の声を上げた。
ああ、ならば、この牢を出たら。
この牢を出たら、消えてしまったあの人に会えるのか。
素直じゃないけれど、本当は誰よりも優しかったご主人様に…!
慌てて、格子を掴み、ミュウは顔を押し付けた。
むに、と柔らかな耳が格子の形にへこむ。
番をしていた桃色の仲間が目を丸くし、首を傾げた。
“どうした?”
仲間の問いかけに、ミュウはこくり、と唾を飲み込む。
ここから、また始まるのだ、彼との冒険が。
──今度こそ。
今度こそ、ご主人様を失ったりしない。
自分に何が出来るかわからないけれど、それでも、と目を瞑り、深く息を吸う。
せっかくもらえたチャンスを、無駄にだけはしたくない。
──僕は、助けてみせる、ですの。
小さな手、小さな身体では、出来ることが限られているとは思う。
それでも、出来ることをやり遂げたい。
ミュウの脳裏に浮かぶのは、ルークのこと、ライガクイーンのこと、ライガクイーンを母と慕う少女のこと。
自分の犯した罪を、ミュウは改めて自覚する。
“長老にお会いしたいですの”
もうすぐ、彼がやって来る。
その前に、罪の償いを長老に申し出なければ。
ライガクイーンのもとに訪れるのは、自分の役目なのだから。
*
チーグルの巣の入口である、大きな洞から中に入ってきたルークに、ミュウは駆け出していた。
飛ぶことが出来ないのが悔しかったが、それでも、一生懸命飛び上がり、ルークに抱きつく。
膝の辺りにぎゅうぎゅうに抱きつき、顔を擦り付ければ、上から何よりも聞きたかった声が降って来た。
「…ミュウ、お前」
困惑に満ちた声。
それでも、幸せだと、ミュウは泣きたくなる。
もう二度と、彼の声を聞くことは出来ないのだと、そう思っていたから。
もう二度と、朱色の髪も、翠の目も見ることは出来ないのだと、そう思っていたから。
嬉しくて、嬉しくて。
ミュウはぼろぼろ泣き出した。
「みゅ、みゅみゅ、みゅうぅう~!」
「わかった、わかったから、落ち着け!」
耳を掴まれ、ひょい、と持ち上げられる。
間近に迫った、戸惑った不機嫌そうな顔に、思いっきり抱きつく。
すれば、ベシ、と地面に向かって投げつけられ、ミュウは踏みつけられてしまった。
「みゅううぅぅ~!」
「だー、このブタザル!顔に張り付くんじゃぬぇーよ!息苦しいだろ!抱きつくんなら、胸とか腰とか…顔は止めろ、顔は!」
怒鳴り声も懐かしい。
ティアが「止めなさいよ!」と叫んでいるのも、思い出そのままだ。
すべてが懐かしい。
すべてが愛しい。
ご主人様がいる、ルーク様がいる!
ミュウはルークの足の下から抜け出し、ぐい、とルークのズボンを引っ張った。
呆気に取られている長老へと引っ張れば、ルークが、困り顔で頬を掻いた。
「あー…その、な」
「みゅうう!」
「…人間よ」
ソーサラーリングで人の言葉を話す力を持った長老が口を開く。
ミュウはチーグルの言葉で長老にルークたちの目的を話した。
ライガクイーンを説得する役目は既に担っている。
ソーサラーリングを腹に装着し、ちろりとルークを窺い見る。
ルークが真剣な眼差しで、頑張ろうな、と声には出さず、唇だけを動かした。
こっくり頷き、ミュウウイングでルークの肩まで飛ぶ。
飛べないかと思ったが、ソーサラーリングには『未来』で刻まれるはずの譜が既に刻まれていた。
どうやらローレライの計らいらしい。
ルークの肩越しに、ティアやイオン、仲間たちの驚く顔が見えたが、説明している暇はない。
「ご主人様、ライガクイーンさんのところに行くですの!」
「ああ!」
ルークが乗せてくれた頭の上で、ミュウは決意新たに目を輝かせた。
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