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月齢

女性向けブログ。ネタ語りや小説など。ルーク至上主義。

2025.04.20
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2008.03.29
『黒き焔の龍は笑う』
(番外編)

ある日のセイナとサフィールの会話。
恋愛とは違うけれど、居心地のいい関係を二人は築いてます。
セイナはサフィがお気に入りだと思う(笑)





様々な譜業から解放されたセイナが服を着る様子からそっと視線を逸らし、ディスト──サフィールは紅茶を淹れた。
茶菓子はセイナ持参の一口サイズのマドレーヌだ。プレーンにチョコレート、キャラメルと様々である。

「中性体として生まれたことを恨んだことはないんですか?」

唐突な質問に、セイナが驚く様子も見せないのは、聞きなれたセリフだからか。
セイナはただ苦笑いだけを零す。

「恨んでどうなるものでもないし、そもそも中性体だってわかる前に死んでたかもしれないから、あんまり考えたことないんだよね」
「子どものころは女児としか思われなかったのでしょうが…死んでいたかも、というのは?」
「んー…。あんまり気持ちのいい話じゃないんだけど。僕はさ、龍人界─父方の国で言えば、呪い子な上、忌み子なんだよね」
「呪い子というのは先日聞いたのでわかりますが、忌み子というのは?」
「龍人界の戦士の中には、召喚能力を持つ戦士が稀に生まれるってのは言ったよね」
「ええ。戦士一人の力が一個師団に匹敵するとか」
「うん。で、その中でも最強の力を誇るのが龍王様の聖龍なんだけど…聖龍には相対する龍がいてね。それが黒龍。僕が召喚する龍だよ」
「…それで何故忌み子になるんです?」
「黒龍は成長する龍だから」
「は?」
「黒龍を召喚できるものは、聖龍と同じく、五百年に一人とかそんなんらしいんだけど。黒龍はさ、主が力を増せば増すほど黒龍自体も力を高めていくんだよ。歴史で語られてるだけだけど、中には、聖龍以上の力を誇ったのもいたらしい。で、問題になるのが」
「貴方が呪い子であること、ですか」
「そう。呪い子は早世する者も多いけど、生き残ったものは総じて強大な力を手に入れるものが多い」
「貴方が成長したとき、黒龍の力は世界を脅かすものになるかもしれない…」
「そう思った人間もいたわけだ。龍王様に直接進言した奴もいたらしいよ。リュウと龍王様が止めてくれたけど」
「…なるほど」

サフィールは紅茶を一口、口に含み、目を伏せる。
なるほど。アッシュたちが懐くわけだ。
セイナもまた生まれながらに異端の存在。それは姿形に至るまでそうなのだから、抱えている過去も応じて重いもののはず。
セイナがあまり過去を語りたがらないのも、そこにあるのだろう。
異端の存在として過ごしてきた年月を、同じく異端であるアッシュたちに語って聞かせたところで希望を打ち砕くだけでしかない。
彼らに必要なのは、すべてを乗り越えてきた『今』のセイナなのだろうから。
ふと、サフィールは顔を上げ、首を傾げた。

「その話、アッシュたちにはしたんですか?」
「してない。呪い子のことも知らないよ」
「…何故、私には話したんですか?」

着替え終わり、向かいの席に腰掛けたセイナが、にっこり笑って紅茶のカップを手に取った。
ミルクを注いだ紅茶があっという間に白く濁る。

「サフィールは言わないからね」

サフィールは目を白黒させてセイナを見た。
セイナは変わらず、にっこり微笑んでいる。
ふわりと鼻腔を紅茶の香りが擽った。

「サフィールには僕を研究対象として提供したわけだし、必要なことがあれば話そうと思ってたし…まあ、何より、サフィールは僕に同情しないからね」

同意を求めるように小首を傾げるセイナに、サフィールはかろうじて頷く。
確かに、自分は同情はしていない。
今だって分析を重ねただけだ。そこに哀れみはない。
セイナはそれを知っている。そのことが、その、ことが。

「僕はサフィールのそういうところ、嫌いじゃないよ。馴れ合ってるけど、淡々としてる関係って案外貴重だと思うし」

マドレーヌを一つ取り、パクリと齧ったセイナに、気の抜けたような返事を返す。
セイナという人間がわからない。いや、そもそも人間ではないのだから、わからなくて当然なのか。
何にせよ、どうやら自分は気に入られているらしい。

「…ありがとうございます」

好意は好意として嬉しいので、一応、礼を言っておく。
セイナが虚を突かれたように目を瞠り。
それから、可笑しそうにけらけら笑った。
サフィールも釣られて笑いながら、なるほど確かにこの関係は居心地がいい、と一人思った。


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