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月齢

女性向けブログ。ネタ語りや小説など。ルーク至上主義。

2025.04.21
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2008.04.21
ss

シンルクです。ルークはちょっとスレ気味。
コーラル城で知り合って惹かれあったイメージ(何それ)
アクゼリュス後での宿の一室。
最近、長いのが続いてたんですが、今日のは短めです。
シンルク、好きなわりに初めて書いたんですが、やっぱりシンルクはいいなぁ…!
同行者に厳しくなるのはもはやデフォ…(苦笑)

注!同行者厳しめ




怨嗟の声が耳に響く。
ああ、またか。ルークはゆるりと目を開けた。
息を吐く。淡い暗闇が部屋に満ちている。
のそりと身体を起こし、前髪をくしゃりとかきあげる。
額に汗が滲んでいる。
苦笑がルークの唇から漏れた。
ミュウはティアが無理やり連れて行ったため、誰もそのため息を聞くことはなかった。

「……」

ベッドから抜け出し、ルークは窓に近寄った。
夜空には金色の満月。輝く月は穏やかな光で空を照らしている。
闇を淡く染める光だ。
太陽のように目を灼く鮮烈な光と違い、じわりと染み込むような優しい光だと、翠の目に映る。

カタ、と小さな音がした。風が窓を叩いたのかと、耳を澄ます。
風に混じって、ルークは微かな気配を感じ取った。
第七音素のみに構成された、同胞の気配を。
ルークはふ、と笑みを浮かべ、窓を開けた。
するりと入り込んでくる、人影が一つ。

「よっ」
「こんばんは――って言うとこかな」

仮面で顔を隠した少年に笑みを向ける。
くすりと小さく少年が笑い、ルークが仮面に手を掛けても何も言わなかった。ルークはそれをいいことに仮面をそっと外した。
露わになった顔は、ルークたちと旅をともにしている幼い導師と同じ作りをしていた。

「こんな夜更けに何だよ、シンク」
「…あんたの様子を見に来たんだよ。本当に一人でいるとはね」

部下から聞いてはいたけどね、と呆れを隠さず、ため息を吐くシンクに、ルークは肩をすくめる。
何も今に始まったことではない。彼らが護衛も見張りもつけず、自分を一人にすることは。
親善大使であろうと、罪人であろうと、彼らはルーク・フォン・ファブレを軽んじずにはいられないようだ。
あいつら、赤ん坊からやり直した方がいいんじゃない、と実質、二歳の子どもが言う。
七年しか生きていないルークもまた、同じように頷き、苦笑した。

「ま、俺もその方が気が楽だけどな。あいつとなんて一緒にいたら、息が詰まる」
「僕も会いやすいけどさ…」

シンクを促し、二人で並んでベッドに腰を下ろす。
シンクに少し寄りかかれば、重い、と文句が返ってきた。
けれど、払う気はないらしい。シンクは優しいよな、と心の内でこっそり思う。口には出さない。照れ隠しで拗ねてしまうことがわかっているから。

「…髪、切っちゃったんだ」
「ああ。…口で変わるって言っても信じなかったくせに、髪切ったら、満足そうにしやがったんだぜ、ティアのやつ。簡単だよな」

ルークはくすくす笑う。シンクは何も言わない。
黙ってルークの言葉に耳を傾けている。
シンクはちゃんと話を聞いてくれる。
当たり前のことであるはずなのに、そんな当たり前のことも出来ない者たちに囲まれてきたからか、ルークは内心、ホッとする。

「その上、なんて言ったと思う。いつでもあなたを見限れる――だってさ。こっちはとっくに見限ってるっつーの」
「ルーク」
「ん?」

シンクがルークの頭に手を伸ばし、ぽん、と撫でた。
ルークの翠の瞳が丸くなる。

「あんたのことだから、泣いてないんでしょ」
「…俺は」
「ヴァンが暗示まで掛けてたことに気づけなかったのは、僕のミスだ。アクゼリュスの救助が完全には間に合わなかったのは、死霊使いのミスだけどね。まさか、マルクトに街道許可の連絡をしてないとは思わなかったよ」

本当、無能。
忌々しげに舌打ちするシンクに、ルークは視線を伏せる。
アクゼリュスの崩落と、救助が間に合わず、崩落に巻き込まれた、民の半数。
そのすべてが自分の責任だとは思っていない。
責任はあの場にいた全員にある。

セフィロトの封印を解いたのは、イオン。
護衛の任務を怠り、救助や仕事にかまけていた、ガイやティアにアニス。
救援依頼を自国に送っていなかった、ジェイド。
勝手についてきて、指示を乱した、ナタリア。
そして、ヴァンの暗示に逆らえきれず、殺されたキムラスカの先見隊や、マルクトに代わり、シンクが部下たちとともに他の六神将たちに気づかれぬよう、行っていた救助活動が終わる前にアクゼリュスを崩落させてしまった、自分。

ルークはきつく目を閉じる。耳に怨嗟の声が響いて消えない。
ルークの目から、涙が落ちることはなかった。自分にそんな資格はないと、そう思うから。
シンクが深く息を吐いた。

「なんで、ルークばっかり…」
「……」
「あいつらなんて、自分の罪にすら気づいてないってのに。本当…、腹が立つよ。何も言わずに、ルークが責められるままにした、七番目も…!」

ぎり、と固められたシンクの拳に手を重ね、ルークは笑んだ。
シンクが自分のために怒ってくれている。そのことが嬉しい。
荒んだ心が癒される。

「ありがとな、シンク。でも、あともう少しだから」
「…マルクトが近いから、ね。あと一週間以内には着きそうだね」
「ああ、マルクト皇帝に会って、俺の罪を裁いてもらう。もちろん、あいつらのも。ナタリアは戦争を防ぐためにもキムラスカに戻らせたいんだけど…言うこと聞きそうにないんだよな。偽者のくせに、って目で俺を見るだけで。マルクトで自分がいかに浅はかか思い知ってもらわないとなぁ」
「アッシュも引きずってくよ。タルタロス乗員虐殺、国境襲撃の件で。六神将だからって僕まで連座制で裁かれるなんて冗談じゃないからね」

泣けないルークは、シンクにきつく抱き締められた。
温かなシンクの身体。胸に湧くこの温もりは、この愛しさは、同胞というだけではない。
シンク、だからだ。他の誰でもない、シンクだから。

「シンク」
「何?」
「せめて夜が明けるまで、側にいてくれよ」
「馬鹿だね。言われるまでもないよ」

キュッ、とシンクの腕に力がこもる。
ルークはホッと息を吐き、シンクに全身を預け、目を閉じた。
静かに差し込む月光が、柔らかに二人の傷だらけの子どもを包みこんでいた。


END

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