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月齢

女性向けブログ。ネタ語りや小説など。ルーク至上主義。

2025.04.20
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2008.04.17
1万HIT企画三本目。
黒ガイ黒ルク。
リク内容は復讐も眼中にないくらい、ドロドロにルークに執着したガイを従えた黒ルークとのことだったのですが、こ、応えられてるかな…!
ルークしか見えてないガイを目指してみました。

注!同行者厳しめ(ヴァン死亡)






「どんな気分?ガーイ」

くすくすと無邪気に笑う少年の姿に、ガイは呆然と目を見開いた。
言葉が喉に詰まり、出てこない。
ただあくあくと口を開閉させるので精一杯だ。

(これ、は)
一体、どんな悪夢だ。
あの幼く我が侭なだけのお坊ちゃまと侮っていたルークが、今、自分を背後へと押し倒し、腹に跨り、喉元に短剣を突きつけてきているなんて。
それは、見覚えのある短剣だった。
当然だ。ガイが後ろ手に隠し持っていたものなのだから。
いつのまに、掏られたのだろう。

「これ、ちゃんと砥いであるのな。すっげーよく切れそう」

く、と喉に当たる冷たい感触。
スゥ、と皮が切れ、生暖かい血がガイの首を流れ、襟に染みた。

「ルー、ク」

流れる血にうっとりと細められる翠の目に、ガイは魅せられたように息を呑む。
あどけない顔に浮かぶ微笑が、酷く艶やかなものとしてガイの目に映る。
どくりと心臓がひとつ跳ねる。

「なぁ、どんな気分?馬鹿にしてた『お坊ちゃま』にあっさり殺されかけてるのって」

子どもが息が掛かるほど顔を寄せ、無邪気に笑う。
愉快そうに、けらけらと。
ガイは全身から力が抜けていくのがわかった。
気圧されて、いた。

「どうする、ガイ?このまま俺に殺られちゃう?それとも」

にこりっ!
ルークが満面の笑みを顔に咲かせた。





ケセドニアの宿の主人からほどよい温度に下げられた湯を張った盥を受け取り、ガイは階段を上がった先に当てられたルークの部屋の扉をノックした。
入れ、と許可が与えられてから、ノブを回す。
中に入れば、ベッドから足を無造作にはみ出させ、倒れこんでいるルークの姿があった。
両腕はだらりと疲れきった様子でベッドの上に投げ出されている。
苦笑し、盥を持ってガイはルークに近寄った。

「疲れてるなぁ」
「当たり前だろ」
「まあな。…靴、脱がせるぞ」
「ああ」

しゃがみこみ、ルークの足から靴を脱がせ、血がついた靴下も取る。
歩き慣れないルークの足裏には肉刺が出来ていて、見るからに痛々しい。
破れているものもあって、血が滲んでいる。靴下に染みた血はこれだ。
ガイは眉を寄せ、そっと盥の中にルークの足を入れた。
小さくルークが呻く。

「大丈夫か?」
「ん…」

ちゃぷ、と湯を揺らしながら、湯の中で丁寧にルークの足裏を揉む。
肉刺が潰れた痕は労わるように洗う。
消毒し、ガーゼを当てて包帯を巻いてやらなければ。
こういうとき、自分が回復術師であったならと思わないではいられない。
やはり、馬車を用意すべきなのだ。
隠密行動ですからの一点張りで、身体の弱いイオンにすら長い道のりを歩かせる左官はこちらの要求をさらりと無視してくれているが、もういい。
一応、和平の使者であるからと顔を立ててやってきたが、知ったことか。
ルークにこれ以上、負担を強いさせるわけには行かない。この足では立っているだけでも痛むはずだ。
せめて馬を用意しようと、ガイは心に決めた。

「…なぁ、ルーク」
「んー?」
「あいつら置いて、さっさと戻らないか?」

二人だけで。
言外にそう含めれば、苦笑が返って来た。
俺だってそうしたい、という台詞とともに。

「親書のことがなきゃ、とっくにそうしてる」
「親書、か」
「そう、アクゼリュス救援を願い出た親書のことがなきゃな」

不意に、ルークがくくく、と笑い出す。
可笑しげに腹を抱えて。
ルークの白い足が踊り、ぱしゃんっ、と湯を跳ね上げた。
ガイの顔や髪を湯が濡らす。
ぽたりと顎の先から湯を滴らせるガイに、上体を起こしたルークがにやりと笑った。

「水も滴るいい男──だな、ガイ」

ガイもにこりとルークに微笑む。
ルークのしぐさの一つ一つが愛しい。
ルークの濡れるつま先が、ひちゃりとガイの頬を撫でた。

「すべては俺が自由になるための布石だ」
「ああ、わかってる。そのために、俺を使ってくれ、ルーク」
「いい子だ、ガイ。来いよ」

指先を曲げ、自分を呼ぶルークに、ガイは蕩けるような笑みを零し、近寄っていく。
ギシ、と安物のベッドが音を立てる。
長い朱色の髪をシーツにたゆたせ、ルークが嫣然と微笑んだ。

「俺はお前のものだ。お前こそが俺のすべてだ」
「忠実な犬には褒美をやるよ」

ルークが襟をゆるりと開き。
ガイは身体を歓喜に震わせ、真っ白な喉元に唇を寄せた。

アクゼリュス。鉱山の街。
『聖なる焔の光』という役割を課せられたルークにとって、運命の分岐点となる地だ。
だが、ルークは預言を理由に、屋敷に軟禁状態にあった。
ND2018の間に、何としてもアクゼリュスに向かわねばならぬのに、軟禁されている身では自らの意思で動くことは難しい。
いくらガイがルークのためならば何でも出来るとは言っても、キムラスカに未曾有の繁栄を齎す『聖なる焔の光』をバチカルから連れ出すことは不可能に近い。何しろ、王も目を光らせているのだ。
国家相手に逃走劇を繰り広げるのは分が悪い。
しかし、ルークのアクゼリュス行きには、キムラスカ上層部も頭を悩ませているらしい。
アクゼリュスがキムラスカ領であったなら何とでも理由をつけられるが、現在、彼の地はマルクト領である。
──預言が本当に絶対のものならば、悩む必要などあり得ないことに、彼らは気づかない。

そんなとき、屋敷にティアが侵入し、ルークはマルクトへと連れ出される結果になった。
そして、ルークにとっては好都合だったものの、何を考えているのか、アニスから親書を受け取り、部外者だらけのその場でジェイドが親書を開き、確認したことで──それを盗み見たルークは、アクゼリュス行きのきっかけを掴んだのである。
キムラスカに入るなり、襲撃犯もろとも不敬罪でジェイドたちを捕らえる手筈を整えようとしていたガイは、ルークにそれを止められた。
イオンもジェイドもどうでもいい。が、親書を王のもとへと届けさせるまでは何もするな、と。
ティアに関しても、イオンが駄々を捏ねるのを嫌い、盾代わりにすりゃいいと捨て置くことにしたルークに、ガイは諾々と従った。
放っておけば、ティアはさらに罪を重ねるに違いないというのも理由の一つだ。
ティアの罪が重くなればなるほど、彼女の親族、つまり、兄であるヴァン・グランツにも罪が及ぶ。
兄と共に朽ちるのならば、ティアも本望だよな、とルークとガイが顔を見合わせ笑っていたこと知る者はいない。

分を弁えない同行者たちに腸煮えくり返りそうではあったが、ルークの命に応えることこそがガイにとっては大事だ。
己の感情など、二の次である。
ベッドの上でルークを悦ばせ、戯れながら、ガイはルークのために生きられる己が生に歓喜する。
ああ、これほどの幸せがこの世にあろうか。
朱色の髪を散らばせ、唇に弧を描くルークは美しい。
凍てついた赤い月のような、禍々しくも惹かれずにはいられない光。
そんな光を放つルークに、ガイは心酔して止まない。





──どれほど、この瞬間を待ち侘びただろう。
身勝手で愚かで始末に負えない非常識な連中ともこれでお別れだ。
ガイはルークに悪意を向ける分も弁えない者たちから離れられるこの瞬間をずっと待ち侘びてきた。
そう、アクゼリュス崩落の瞬間を。
預言を失くすという大義名分のもと、故郷を奪わせた世界へと復讐せんとする『栄光を掴む者』が本性を現す瞬間を!
ルークが愚者を演じるのもこれで終わりだ。

気配を消し、こっそりとセフィロト内部を窺いながら、ガイはルークの合図を待つ。
同行者たちは皆、好き勝手にアクゼリュスの民を治療している。
本当に彼らを助けたいならば、一刻も早くこの瘴気渦巻く地から連れ出すべきだろうに。
中途半端な仕事しか出来ない彼らに、ガイは唾棄する。
ティアに至っては、罪の軽減のため、ルークの護衛としてここまでやって来たはずだというのに、自分は許されたと都合よく事実を曲げ、教団の仕事を優先した。
こちらにとっては好都合だが、どこまで救いようがないのかと、出来の悪い頭を嘲笑を込めて同情する。

「さぁ、力を放て!『愚かなレプリカルーク』…!」

イオンを壁へと叩き飛ばし気を失わせ、ルークに蔑みの視線を向けるかつての幼馴染の姿に、ガイは蔑視を向ける。
ヴァンがこちらに気づいた様子はまったくない。
どうやら目前に迫った瞬間に高揚し、警戒を怠っているようだ。
邪魔など入るわけがない、とそう高をくくっているだけかもしれないが。
ぐ、とガイは剣の柄を握る。
さぁ、もうすぐだ。
ルークの嘲笑が朗々とセフィロト内部に響いた。

「る、ルーク?!」
「どうしたんです、師匠。そんな面白い顔をして。ご立派な眉毛が跳ね上がってますよ?ふふ、俺がどれほどこの瞬間を待ち侘びていたか、師匠にはわからないでしょうね。俺をレプリカ風情と侮ることしかしてこなかった師匠には」

艶やかに唇を吊り上げ、ルークが笑う。
ヴァンが動揺露わにそんなルークを凝視している。
知っていたのか、と愕然としたヴァンの声がした。

「ヤだな、師匠。気づかないわけがないじゃないですか。ついでに言えば、秘預言の内容も知っていますよ。親切な第七音素集合体が教えてくれましたから」
「な、んだと」
「でもね、知っているだけじゃダメなんですよね、世の中。それを利用しなくちゃ知識なんてあっても意味がない。だからね、俺、得た知識をどうやって使おうかなぁ、と考えて、キムラスカからも貴方からも完全に自由になる機会を待っていたんです。まさに今、この瞬間を」

にこりっ!
ルークがあどけない顔で笑い、パチン、と指を鳴らした。
待っていたとばかりにガイは飛び出し、ヴァンの利き手を切り落とし。
ガイの登場に驚くヴァンの腹に、ルークが超振動で風穴を開けた。
ぽかりとそこだけ綺麗に丸く、ヴァンの身体に穴が開く。
あまりに鮮やかな穴からは血が噴出すこともなく、身体の向こう側が覗いて見える。
どぉ、と音を立てて、ヴァンの身体が崩折れる。

「ば…か、な…こんな…こん、な」
「あははは、ねぇ、師匠、どんな気分ですか?散々馬鹿にしてきたレプリカにあっさり殺される気分は!この瞬間もね、ずーっと楽しみにしてたんです。な、ガイ」
「ああ、ルーク。よかったな」

にこり。
二人で笑みを交わし合う。
心底、楽しそうな主人に、ガイも幸せになる。
ヴァンが力を振り絞り、身体を起こし、ガイに咎めるような視線を向けた。

「ホド、を…っ、ホドを、お忘れに、なったのですか…、ガイラルディア様…!」
「別に忘れちゃいないさ。だが、俺の最優先事項はルークなんでね。ただそれだけのことさ」

忘れてはいないけれど、ルーク以外はもういらない。
ガイは青の目を氷のように尖らせ、くつりと笑う。
ヴァンの身体が大きく震え、びしゃりと血を吐き出した。

「サヨナラ、『栄光を掴み損なった者』。あんたの役目はここで終わりだ」

晴れやかな笑みとともにルークが左手をヴァンへと翳し。
ヴァンの身体は跡形もなく、超振動の力の前に塵となった。
と、バタバタバタ、と誰かが駆けて来る足音が聞こえてくる。

「あ?何だ、あいつら来たのか」
「みたいだな。どうする?あいつらもやるか?」
「んー…。いや、生き証人になってもおうぜ。──ミュウ」

ルークの肩に乗ったままのミュウを腕に抱き寄せ、ルークがつぶらな瞳と目を合わす。
ミュウの目は一点の曇りもなく、ルークを見つめている。
そこには、怯えも軽蔑もない。あるのは、純粋な忠誠心。
ふ、とルークが苦笑を零した。

「お前は森に帰れ」
「ヤですの!ボクはご主人さまと一緒がいいですの!」
「ダメだ。…お前には、お前の役割がある」
「ボクの役割…ですの?」
「そうだ。ここであったことを誰にも言わないこと。それがお前の役目だ」

ぽん、と一度、ミュウの頭を撫で、ルークはそっとイオンの側にミュウを下ろした。
えぐえぐと別れの言葉に涙を流しながらも、頷いたミュウに、ガイは自分と似た想いを感じ取る。
ルークへの揺るぎない想いを。
だが、つれていくわけにはいかないのだ。
言葉を話すチーグルは、あまりに目立ちすぎる。
そして何より、純粋に自分を慕ってくれるミュウだからこそ、ルーク自身、仲間たちのもとに帰してやりたいのだろう。
ガイは一人、ルークに寄り添う。自分だけは、側にいると言うように。

「さて、最後の仕上げと行くか!…俺から離れるなよ、ガイ」
「当たり前だろ?」

差し出されたルークの右手をしっかりと握り締め、ガイは笑って頷いた。
ルークが一つ苦笑を零し、素早くガイの頬に口付ける。
忠実な僕への褒美だ。
ガイの顔が嬉しげに綻んだ。

ルークが近づいてくる足音に合わせ、ゆっくりと左手に力を集めていく。
同時に、ルークの身体全体も白い光を帯びていく。
それはガイの身体すらも包み込んでいった。

「ご主人さまー!」

ミュウの慟哭が響く中、駆け込んできた同行者たちの目に飛び込んできたものは、ルークの超振動によってキラキラと煌きながら崩壊していくパッセージリングと、音素が乖離していくルークとガイの姿だった。
──寄り道の後、それぞれの国へと帰還した彼らは、為政者たちの前でありながら、堂々と苛立ちを露わにし、レプリカルークがパッセージリングを破壊し、アクゼリュスを崩落させ、使用人も巻き込み乖離した、と報告した。
そして、それは事実として広まった。

すべてを見ていたチーグルの仔は、故郷の森へと帰り、穏やかな笑みとともに消えた主人たちのために、口を閉ざし続けた。
たとえ、外殻大地を降下させるため、超振動の力が必要になっても。
たとえ、世界を覆う瘴気を消すため、『聖なる焔の光』を再び名乗ることになった被験者がローレライを解放し、命を懸けることになっても。
ひたすら健気に、真実を隠し続けた。





知事として仕事を終えた帰り道、ネフリーの目の前で金髪の青年がどしゃりと転んだ。
雪に足を取られたらしい。
いてて、と腰を押さえ、立ち上がる青年に小さく笑って手を貸す。

「あらあら、大丈夫?」
「あー…、どうも」
「どういたしまして。観光に来たのかしら?」
「わかるのか?」
「この街の人は皆、雪に慣れているもの」

一年中、雪が消えることのない、銀世界。
それがネフリーが治めるケテルブルクだ。
この街で暮らす人々は、雪への耐性が幼いころからついている。
今は止んでいるものの、空は相変わらず暗く、曇天が立ち込めている。
いつまた雪が降り出してもおかしくはない、そんな街。
なるほど、と青年が苦笑し、立ち上がった。

(…あら、綺麗な目)
さらりと揺れる金色の前髪から垣間見えるのは、翠の目。
金色の睫毛に縁取られた翠は、宝石のように煌いている。

「気をつけて、ゆっくり楽しんでね」
「ああ、そうさせてもらうよ」

にこやかな笑みを交わし、ネフリーは青年と別れた。
ふと前を見やれば、タタッと別の金髪の青年が駆けて来る。
今度の青年は翠の目をした青年よりも年嵩で、青い目をしていた。

「ガラン、走ると、転ぶぞ!」
「平気平気」

言葉どおり、危なげない足取りでガランと呼ばれた青年がネフリーの横を走り抜ける。
その手には、二つの湯気を立ち昇らせるフタのついた紙コップ。
どうやら、翠の目の青年のために、温かな飲み物を買い求めてきたらしい。
ほら、ココア、とネフリーの背後でガランが青年に紙コップを差し出す声がする。
どこか面白くなさそうに、青年が鼻を鳴らし、それを受け取ったようだ。

ちらりとネフリーは振り返り、二人を見やる。
仲睦まじい二人は兄弟というには似ていない。友だち同士といったところだろうか。
ふ、とネフリーは微笑んだ。
どんな関係にせよ、このケテルブルクに遊びに来た観光客が楽しそうにしている姿を見るのは、知事として、この地で育ったものとして嬉しい。

(私も家に帰って、久しぶりにココア、作ろうかしら)
甘いものが好きな夫にも作ってやろう。
そんなことを思いながら、ネフリーは笑い声をあげる二人の青年に背を向け、家路に着いた。


END


各地を転々と旅しながら、ルークたちはこっそりとミュウにはときどき会いに行ってるかと思います。
ラスト、ネフリーを出したのは趣味入ってます…(苦笑)
軽くあれな要素も入ってますが、楽しんで頂けたなら幸いです。

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