月齢
女性向けブログ。ネタ語りや小説など。ルーク至上主義。
中編
最終話。5話に続き、同行者に厳しめです。イオン含。
ジェイドとイオンには救いありです。
最後、微妙に暴走しました…(笑)
最後まで楽しんで頂けたなら幸いです。
「ルーク・フォン・ファブレ。汝に親善大使となり、アクゼリュスへと慰問に向かうことを命じる」
「謹んで、拝命致します」
さぁ、時は来た。
ルークとインゴベルトはちらりと視線を交わし、密かに頷き合った。
*
頭が痛い。
アリエッタとルークは揃って額に手を当て、天を仰いだ。二人の背後では、マルクトより和平の使者としてやって来たアスラン・フリングスが苦虫を噛み潰したような顔で唸っている。
ルークたちの護衛にと周囲を囲んでいる白光騎士やマルクト兵もあっけに取られている。わかっていないのは、目の前で小首を傾げている、問題発言をした自覚のないイオンや導師守護役のアニス、そして、アスランとともにやって来たジェイドくらいのものである。
空は快晴。風もそよぐ程度で海も穏やか。絶好の旅立ち日和だというのに、出発直前で暗雲が垂れ込めだすとは。
顔を顰めるルークの横で、長旅に適した装備を身につけたアリエッタは、アニスに不審の目を向けた。あれが今の導師守護役か。元同僚たちから噂には聞いていたが、これほどの役立たずとは思わなかった。
(みんなが神託の盾騎士団辞めたの、わかるです…)
アリエッタに紹介を頼み、ファブレ邸や城、軍で働く数人の元導師守護役たちを思い出し、アリエッタは一人頷いた。
こんな役立たずが自分たちの後釜についている姿を見るのは、苦痛以外の何物でもなかっただろう。自分もまた導師守護役であった少女は、彼らへの同情を禁じえない。
「あー…。なんだ、俺の聞き違いかな、導師イオン。一緒に行きたいって聞こえたんだが」
「そうです、どうか僕も一緒に連れて行って下さい、ルーク殿」
「アニスちゃんからもお願いします、ルーク様!イオン様のお願いだし、アニスちゃんもルーク様ともっと仲良くなりたいなぁ、って思ってぇ」
不自然に身体をくねらせ、あからさまな媚を売るアニスにアリエッタは嫌悪を募らせる。己の役目も理解していないくせに、媚び諂うことばかりを考えるとは。ぐ、と殴りつけたい気持ちを抑えるように、拳を握る。
ルークの隣に立つアリエッタに、アニスがちろ、と視線を向けてきた。
「っていうかぁ。どうして根暗ッタがここにいるわけぇ?」
ピク、とアリエッタの肩が跳ねる。妬ましげに睨んでくるアニスを、アリエッタは睨み返した。アリエッタがいかに優秀かを知っている、今は長距離移動に適した簡易な装備となっている白光騎士たちが、常とは違い、露わになっている顔に不快だと言わんばかりの表情を滲ませる。仲間への侮辱に、彼らは怒りを覚えていた。
だが、彼ら以上に、怒りを露わにする者がいた。
「それはアリエッタのことか、アニス」
ピリッ、と空気が凍る。凍て付き、地を這うルークの声音は、為政者のそれを思わせた。
ハッと息を呑み、ルークを見上げたアリエッタの緋色の目に、怒りに煌く翠の目が映った。アニスの隣にいることで、ルークの怒りを覗いてしまったイオンが息を呑み、アニスが顔を強張らせる。
「あ、の…その…」
「アリエッタは俺が絶対の信を置く部下だ。その彼女を侮辱することは、俺への侮辱と見なす」
「わ、私、そんなつもりじゃ…!」
「待ってください、ルーク!アニスも悪気があったわけでは…ッ」
アニスの顔から血の気が引き、イオンが彼女を庇おうと一歩前に出る。ルークは深く息を吐き、頭を掻いた。
ジェイドがぽつりと、「子どもの戯言に付き合っている暇はないのですがね…」と呟いたのを聞いたアスランが顔色を変え、ジェイドの頬を張った。
「己の立場を弁えなさい、ジェイド・カーティス!」
「ッ」
「フリングス将軍、貴方に免じて、今の発言は聞かなかったことにしよう」
「ありがとうございます、ルーク殿」
深く頭を下げるアスランとマルクト兵たちに、ルークが苦笑する。アリエッタはあれがジェイド・バルフォアかと、眉根を寄せた。外交手腕を持たない彼が連れてこられた理由は一つ。瘴気に満ちるアクゼリュスに赴き、キムラスカへと無事帰り着くまで、レプリカであるルークの身に何も起こらぬようにするためだ。
ベルケンドよりレプリカ研究者を連れて行く案もあったが、アクゼリュスに向かうには、途中、馬車を降り、デオ峠の険しい道のりを越える必要がある。足腰の弱い研究者を連れて歩くには不向きなため、軍人でもあるジェイドに白羽の矢が立ったのである。
それを理解しているのか、いないのか。アリエッタは屈辱に顔を歪めるジェイドに、密かに吐息した。アスランも米神に指を当て、首を振っている。
「まあ、カーティス大佐の言い分ももっともだからな。導師イオン。はっきり言おう。貴殿を連れて行くわけにはいかない」
「そんな…」
「貴殿は身体があまり強くはないと聞く。そんな貴殿を瘴気に満ちるアクゼリュスに立ち入らせるわけにはいかない。そもそも、貴殿にアクゼリュスまでの道中を歩きとおす体力があるとも思えない」
「それは、頑張りますから」
「導師イオン。貴殿に何かあれば、キムラスカやマルクトにも責任問題が生じるんだ。わからないか?それとも、ダアトは我々と事を構えたいとでも?…グランツ兄妹のこともあるしな。否定しきれないと思うが」
ティア・グランツの公爵邸襲撃。ならびに、『取調べ』にて明らかになったヴァン・グランツによるルーク・フォン・ファブレの誘拐。
ダアトとキムラスカの間に戦争が起こったとしてもおかしくない、この二つの事件が『穏便』に済まされたのは、彼ら二人と、二人の上司である大詠師モース、三人の身柄がキムラスカに譲られ、処刑されたからだ。そうでなければ、和平の仲介として導師イオンがキムラスカに迎えられることもなく、マルクトの間に和平が取り交わされることも難しくなっていたはずだ。
サッ、と顔を青ざめさせ、俯くイオンに、アリエッタは失望の目を向けた。きゅ、と唇を噛む。
(わかってる、です)
彼は生まれて二年。被験者であるイオンに負けず劣らずの導師となるには、まだまだ経験も勉強も足りていないのは明白だ。
このイオンはイオンなりに、アクゼリュスで苦しむ人々を助けたいと思っているのもわかる。けれど、彼は己を理解していなさ過ぎる。
「ルーク様。発言の許可を、頂けますか?」
「…ああ」
言葉少なに頷くルークに小さく微笑み、アリエッタはイオンと向き合った。アニスが敵意の目を向けてくるが、意に介さない。アリエッタには、己を恥じ入ることなど、何もないのだから。
「イオン様。元導師守護役として、一言、言わせてください」
「あ…は、はい」
被験者イオンとアリエッタの信頼関係を知っているイオンが、複雑そうな顔を俯かせる。アリエッタはじ、とイオンを見つめた。ルークとアッシュが違うように、彼も自分の知るイオンとは違う。顔つきだって違う。似ているけれど、よく見れば気づくはず。気づいてもらえず、被験者を強いられるイオンに、アリエッタは哀しげな目を向けた。イオンが息を呑み、目を瞠る。
「今の導師は、貴方、です。ローレライ教団にとって、世界にとって、貴方は大切な、人。だから、自分の身を危険に晒すような真似しちゃ、ダメです。…本当なら、今の導師守護役が、言うべき台詞、です」
「アリエッタ、あなた、は」
アニスが顔を屈辱と怒りに染め上げる横で、それっきり、言葉を失ったように呆然と立ち竦むイオンに、こくりと頷く。知っていると言うように。
イオンがきつく拳を握り締め、緑の目を潤ませた。ひたすら導師であろうとしてきた少年は、その日、初めて子どもらしい泣き顔を見せた。
「…僕は、ダアトに帰ります。困らせてすいません、ルーク殿」
「いいや。…イオン、また会ったときは、友だちになろうぜ」
「あ…、っ、ありがとう、ございます」
ふ、とルークが微笑み、イオンが目の端を指で拭う。アニスが困惑を顔に浮かべ、ジェイドが息を呑む。アスランたちは、皆、頬を緩め、アリエッタはルークを笑みを浮かべて見上げた。翠と緋色が合い、互いに慈しみを浮かべ合う。
「さてと。行こうか、フリングス将軍」
「はい、ルーク殿」
深く頭を下げ、晴れやかな笑みを零すイオンに背を向け、親善大使一行は港へと向かった。おそらく、イオンは考えを改めるだろう。
ちら、とアリエッタは振り返り、自分を睨みつけてくるアニスを一瞥する。モースは失脚した。導師守護役は新たに編成されるはずだ。アニスのような役立たずには荷が重過ぎる。ダアトに戻れば、アニスの居場所はなくなっているに違いない。
自業自得だと、今までの導師守護役たちへと唾を吐いたに等しい愚か者に、アリエッタは一切の憐れみを覚えない。
港に入る直前で、アリエッタたちは足を止めた。騒ぎの声が聞こえてくる。全員が眉根を寄せる。
一体、今度は何の騒ぎか。和平反対派かと、緊張が高まる。
そんなルークたちの耳に届いたのは、予想もしていない声だった。ルークが頭を抱え、呻き声を上げた。
「一難去ったかと思えば、また一難かよ…!呪われてんじゃねぇのか、この和平」
アリエッタも白光騎士たちも、揃って唸る。彼らは、思わず、確かにと頷きかけた。
何しろ、港で騒いでいるのが──自国の王女であったのだから。
「そこをお退きなさい!私を誰だと思っているのです!」
「ナタリア王女の命令だぜ?」
しかも、どういうわけか、ナタリアの隣には、ファブレ邸で雑用をこなしているはずのガイ・セシルまでもがいる。恥さらしどもめ、とキムラスカ勢は顔を怒りに赤くした。ガイの素性を事前にピオニーにより聞かされていたアスランは、視線を遠くマルクトの方角へと恨みがましく向けている。
「そうは申されましても、王のご命令に逆らうわけには…。この船は親善大使であるルーク様のためにご用意したものなのです、殿下」
「お父様もルークもわかってくださいますわ。私はアクゼリュスの民のために向かうのです。ルークとて、経験豊富な私が一緒の方が安心でしょうし」
自分が正しいと誇らしげに胸を張るナタリアの名を、ルークが鋭い声で呼んだ。ナタリアが顔を輝かせ、振り返る。が、すぐにルークの隣に立つアリエッタに気づくと、その目を憤りに細めた。ルークが心を許すアリエッタへの嫉妬の感情を隠すことをしないナタリアに、ルークがさらに怒りを膨らませていくのを、アリエッタは敏感に感じ取る。
ルークが、ス、とアリエッタをナタリアから隠すように前に出た。そこで初めて、ナタリアはルークが怒りに顔を顰めていることに気づいたらしく、戸惑いを浮かべた。
「ルーク…?」
「何をしている、ナタリア」
「何って…貴方だけでは心配ですもの。私も共に行こうと…」
「つまり、お前は俺が信用できないわけだ」
「おいおい、ルーク。そんな言い方はないだろう。ナタリア様はお前を思ってだな」
「黙れ、ガイ。俺は発言の許可を与えた覚えはない。呼び捨てされる謂れもないけどな」
しかも、マルクトの名代の前で。
ルークの当然の叱責に、ガイが一瞬、苛立ちを覗かせた。すぐに、その顔は苦笑に変わり、我侭坊ちゃんはこれだからとでも言いたげに肩を竦めたが、どちらにしろ、不敬には違いない。アリエッタがちらりと既に船に乗り込み済みの姉妹に目をやった。ブリッジで姿勢を低くし、身構えている。合図一つで、あの場から飛び上がり、ガイを押さえ込んでくれるだろう。
「ナタリア。王の許可は得てきたのか?」
「お父様なら、わかってくださいますわ」
「…つまり、何も言ってきてないのか。今すぐ城に帰れ」
「まあ、ルーク!どうしてですの?長年敵対してきたマルクトとの間に和平が成り立とうとしているこのときに、王女である私が行かなくてどうしますの」
「だから、親善大使として俺がいる。お前は今回のことには必要ないから、王も命令を下さなかったんだ」
わかったら、帰れ。ルークは近寄ってきたナタリアを払うように手を振る。ガイがまたもや場違いにもフェミニストぶりを発揮せんばかりにルークの肩を掴もうとしたが、寸前で白光騎士の一人によって、腕を掴まれた。ライガを呼ぼうとしていたアリエッタは、ガイを睨むに留める。
「ガイ、お前もだ。大体、何でお前がこんなところにいるんだ。仕事はどうした」
「俺も連れて行ってもらおうと思って来たんだよ。必要だろ?世話係は同性の方がいいに決まってる」
「そうですわ、ルーク!私も前から思っていたんですの。何か間違いがあってからでは遅いですもの。貴方には私がいるのですからね」
「約束を交わしたお前がいるから、か?ナタリア」
「ええ!思い出してくださいましたの?」
周囲の冷え切った空気にも気づかず、ナタリアは笑み、ガイがアリエッタを侮辱するように睨む。アリエッタはルークの背を見上げ、顔を強張らせた。目に見えるのではないかと思うほどに、ルークが纏う怒気が濃さを増している。
普段、ルークがここまで怒りを露わにすることはめったにない。ルークは怒りを覚えたとき、シュザンヌの教えで怒りではなく、笑みを浮かべるようにしているからだ。そのルークが、抑え切れないほどの怒りを発露している。
「どこまで…、どこまで、侮辱すれば気がすむんだ、お前らは」
「る、ルーク…?」
「どうしたんだよ…?」
「ガイ、お前が世話係から外されたのは、世話係としても、護衛としても、お前が役立たずだったからだ。大体、女性恐怖症の護衛なんて聞いたこともねぇ。アリエッタは女性だけどな、立派に役目を果たしてくれている。元導師守護役のアリエッタとお前じゃ、比べるまでもないことくらい、わかっててもよさそうなもんだけどな」
嘲弄すら浮かべるルークに、周囲の白光騎士たちもずっと同じことを思っていたらしく、賛同を示し、ガイに凍て付いた視線を向ける。ガイが表情を強張らせ、ひくりと喉を引き攣らせた。ルークの怒りに当てられているナタリアも、顔を青ざめさせ、言葉を失っている。
「それでも、俺はお前が嫌いじゃなかったよ。紙飛行機教えてくれたこと、忘れてない。あのころは、本当にお前を友だちだと思ってた。…でも、お前はそうじゃなかった。だろ?」
「お、俺は…」
「俺はお前を殺したくない。甘いんだろうけどさ。でも…これ以上、お前をファブレには置いておけない。お前の不敬は目に余る。…フリングス将軍。どう思う?」
ガイの素性を知らぬ者たちは、何故、マルクトの軍人に尋ねるのかと、訝しげに眉を寄せるが、アスランは気づいた。このルークの問いが、ガイ・セシル──ガイラルディア・ガラン・ガルディオスに対する、マルクトの対応を求めているのだと。
「同感だと思います、ルーク殿。もし我が国で彼のような人間がいたなら、即刻首を刎ねているところです」
それは、事実上、マルクトがガルディオスの生き残りを見捨てたことに等しい発言だった。
ガイが素性がバレてもなお、ファブレ邸に雇われていたのは、キムラスカがアクゼリュスへとルークを派遣するための駒として、利用するためだった。ガルディオスの遺児がガルディオスを滅ぼしたファブレの屋敷で何をしていたのか。考えるまでもない。ガイの存在はそのまま戦争の口実となる。前皇帝ならばガイは駒の価値もなかったが、ピオニーは穏健派だ。戦争を望まないピオニー相手には有効な駒となる。
そのために生かされていたが、ガイを利用するまでもなく、ピオニーから和平が申し込まれた今、ガイの存在はむしろ、両国にとって和平の障害でしかない。ガルディオスの遺児であることは知られてはならないこととなった。
白光騎士によって押さえ込まれ、猿轡を噛まされるガイに、ルークが憐れみの目を向ける。アリエッタは辛そうに顔を歪めるルークの左手を、そっと両手で握った。ルークの翠の目が、和らぐ。
ナタリアが剥き出しの嫉妬をアリエッタにぶつけてきた。けれど、アリエッタは引くことなく、ルークの手を握り続ける。身分の差は理解している。それでも、ルークの手を離すことなど、出来なかった。傷ついているルークの手を離すことなんて、出来るわけもない。
ルークに自分の中の理想のルークを押し付けるばかりで、ルークを理解しようともしないナタリアに、負けたくはなかった。ルークがきゅ、と手を握り返してくる。
「ナタリア、何度も言ってるだろ。俺は約束なんて覚えてない。…知らないって」
「ルーク…ッ」
「帰れ、ナタリア。迎えも来たみたいだしな」
つ、とルークがバタバタと駆けてくる人影に顔を向ける。駆けつけてきたジョゼットが、ナタリアとルークの前に膝を着いた。
「お戻りください、殿下。陛下が御呼びです」
「お父様が…?でも…」
「殿下。これは陛下からの御命令です」
ジョゼットの口調は、ただならぬ雰囲気を纏っていた。それに気づいたルークが、息を吐き、首を振る。王命に逆らった王女の末路など、考えたくもないのだろうと、アリエッタは気遣うようにルークの手を握る手に力を込めた。ルークが弱弱しく微笑む。それはアリエッタの胸を、締め付けた。
「…わかりましたわ」
渋々頷いたナタリアの周りを、ジョゼットたちが取り囲む。それは罪人の扱いに等しかったが、ナタリアは気づくことなく、ルークに未練がましい視線を絡ませる。ルークはそれを一瞥もすることなく、アリエッタの手を取り、船に向かって歩き出した。
親善大使一行は、精神的に疲弊させられきった中、ようやくキムラスカを出発した。
船に乗り込み、警戒を怠らないながらも、ブリッジで悠々と寝そべるライガを前に、白光騎士とマルクト兵が交流を持つ中、アリエッタはアスランに一言断ってから、ルークを船室に連れて行った。憔悴した表情を浮かべるルークが、心配でならなかった。
「ルーク様、大丈夫、ですか?今、紅茶淹れるです」
「うん」
疲れきった顔でベッドに腰を下ろしたルークに、アリエッタは苦痛に眉を寄せ、改めてガイとナタリアに怒りを覚える。ルークを苦しめる二人が、許せない。
「…会わせる顔、ねぇなぁ」
「え?」
「アッシュにさ、会わせる顔、ないなぁと思って。ガキのころに、ナタリアが今でも一言一句違えず覚えてるような約束交わしたくらい、ナタリアに惚れてたんだと思うとさ、アッシュになんて言ったらいいか、わかんないなって思ってさ…」
眉をハの字に下げ、苦笑うルークに手を伸ばし、アリエッタはルークの頭を抱きかかえ、胸にルークの顔を押し付けた。そんな寂しそうに苦しそうに笑ってなんて欲しくなかった。そんなふうに笑うくらいなら、泣いてくれたほうがいい。
緋色の目がじわりと潤み、涙が零れた。泣かないルークの代わりにぽろぽろと溢れ、ルークの髪を濡らしていく。
「悪いのは、ルーク様じゃ、ないです」
「アリエッタ…」
「ルーク様は、いつでも一生懸命、頑張ってる、です」
アリエッタがベッドに膝を乗せ、ギシ、とバネが軋む。ルークの手が、おずおずとアリエッタの背に回された。
ルークの朱色の髪に鼻先を埋める。シャンプーの香りが鼻腔を擽った。
「アリエッタは、ルーク様が主で、よかった」
「…アリ、エッタ」
「アリエッタは、ルーク様を誇りに思うです」
こつ、と額を合わせ、笑みとともに告げる。細めたアリエッタの目から、パタパタッ、と雫が落ち、ルークの頬で跳ねる。
ルークが目を瞠り、アリエッタをきつく抱き寄せ、肩先に顔を埋めた。
「ありがとう。ありがとう、アリエッタ」
「ルーク様…」
ルークの肩に顎を乗せ、アリエッタは吐息する。もうすぐ、預言に記されたルークの『死』がやってくる。必ず、覆してみせる。死んでしまったイオンのために、何より、ルークのため、自分のために。
アリエッタはルークを抱き締め続け、朱色の髪を指で撫でるように梳き続けた。
*
アクゼリュスまでの道中、和平反対派の邪魔は入ったが、障害となるほどの邪魔は入らなかった。最大の障害となるはずだったヴァン・グランツは既に処刑され、彼の手の者であった六神将も、アッシュとシンク、カンタビレの働きにより、ヴァンやモースと行ってきた悪事が露わとなり、処分された。モースに付き従っていた預言保守派たちも、旨い汁を啜ろうとする輩ばかりが揃っていたため、モース処刑後は弱体化し、トリトハイム新大詠師によって駆逐されている。
ルークたちにとっての最後の障害は、預言だけだった。
キムラスカの先遣隊やマルクト兵、アッシュたちに従う神託の盾騎士団員によって救出され、デオ峠の麓に集まるアクゼリュスの民たちの前で、ルークたちは馬車を降りた。瘴気障害に苦しむ民たちの間を渡り歩くルークは、顔に心からの民たちへの労わりと優しさを浮かべ、彼らを励ました。
瘴気障害のことを事前に勉強してきたルークは、躊躇いなく、重病患者にも近寄り、励ましの言葉を掛けていく。朱色の髪をなびかせ、てきぱきと指示を出していくその姿に、アクゼリュスの民たちは感謝の意を述べた。ルークはその言葉に苦笑し、緩く首を振った。当然のことをしているだけだ、と。王族だからではなく、人として当たり前のことをしたいだけだと。
人として。その言葉がレプリカとして生を受けたルークにとってどれほど重みがある言葉であるかわからぬ者であっても、ルークの優しさに心打たれ、涙し。その重みを知る者たちは、ルークが主であることに、誇らしさを抱いた。
アリエッタもまた、緋色の目を決してルークから逸らすことなく、誇りを胸に抱く。イオンを失ったとき、二度と抱くことはないと思っていた誇りを。
「アリエッタ」
「はい」
名を呼ばれ、アリエッタはルークと見合った。アクゼリュスに、向かうとき。
一度、ゆっくりと瞬き、アリエッタは頷いた。
「フリングス将軍、行きましょう」
「ええ、ルーク殿。終わらせに行きましょう」
民たちに見送られながら、ルークたちはデオ峠を登っていった。暗雲に覆われているようなアクゼリュスがちらちらと覗く。その不穏さに、誰もが眉をひそめた。
アリエッタはぎゅ、と拳を握る。すれば、ぽん、とルークに肩を叩かれた。
「大丈夫だよ、アリエッタ」
「ルーク様…」
「大丈夫だ。アリエッタを置いて、死んだりなんてしねーよ」
照れくさそうにそっぽを向いて、ルークが言う。強張っていた身体から力を抜き、アリエッタは微笑んだ。
「当たり前、です。アリエッタが、ルーク様のこと、絶対絶対、守ります」
太陽の光を、大きな影が遮る。ばさりと翼をはためかせるフレスベルグが、一声鳴いた。おお、と歓声が上がる。
「全員で生きて帰ろうな」
幸せになるために。
ルークの掛け声に、キムラスカ、マルクト問わず、掛け声が応と返った。
ルークへと、ジェイドがス、と歩み寄る。アリエッタが警戒するように目を細めた。傍らを歩くライガもまた、喉を鳴らす。
「ルーク殿、これを」
「それは?」
「瘴気は第七音素です。貴方の音素が瘴気に侵された第七音素と結びつかないよう、音素の干渉を防ぐ装置とお考え下さい」
ジェイドが差し出した両手首に装着するらしい、赤い石がついた銀色のリングを二つ、ルークが興味深げに眺める。眼鏡のブリッジを押し上げ、ジェイドが心に凝った澱を吐き出すように言った。
「貴方は一つの命なのですね」
「……」
「私などよりも、よほど立派な人間だ」
「…褒めすぎ。そんなたいそうな奴じゃねーよ。でも、もしそうだとすれば、アリエッタのおかげだ」
ルークが愛しげにアリエッタを見つめ、アリエッタの頬が熱くなる。慌てて、見られないよう、顔を逸らす。昔ならば、こんなことはなかったのに。
(ダメ、です)
アッシュがキムラスカに戻っても、ルークは公爵家を継ぐのだ。公爵と自分では、身分が違いすぎる。ルークも自分を好いてくれている。それだけで、十分。それ以上を望む気はアリエッタにはなかった。
「それをつければ、音素の循環も鈍くなるため、身体が重くなります。それだけはご注意を」
「わかった。ありがとな、カーティス大佐」
「…私は」
「俺はあんたに感謝してるよ。だから、あんたの今までの無礼な態度、チャラにしてやるよ」
リングをつけ、にやりと口角を吊り上げて、悪戯めいた笑みを浮かべるルークに、ジェイドが眼鏡のブリッジに指を当てたまま、固まる。それから、ふ、と苦笑し、「ありがとうございます」と頭を下げた。
「…あれが、そうか」
デオ峠を越えた一行の前に、アクゼリュスが姿を見せた。街は、底が見えないほどの濃い瘴気に覆われている。デオ峠へと兵に連れられ登ってきた住民たちを労いながら、ルークたちはアクゼリュスに足を踏み入れた。
呼吸をするだけで肺が侵されそうな瘴気に、アリエッタは息を詰めた。これほど、とは。
先遣隊から報告を受けるルークの横で、周囲を見回す。黒髪の青年が、若草色の髪の少年を連れ、姿を見せた。背後には部下を引き連れている。
「…あれが、アッシュ、だよな」
確かめるように呟くルークに、こくりと頷く。アッシュとシンクの二人は、仮面で顔を隠していた。混乱を招かないためだろう。二人はルークの前にやって来ると、膝を着いた。ルークが一瞬、顔に戸惑いを過ぎらせる。
「お待ちしておりました、ルーク様。お初にお目にかかります。アッシュとお呼びください。こっちはシンク」
「…初めまして」
「会えて嬉しいよ、二人とも。あの…それで、アッシュ」
「時間がありません」
ルークの言葉を遮り、アッシュが立ち上がる。仮面の下の翠を、ルークが目を逸らすことなく、見つめ返した。アッシュが小さく苦笑する。
「そうだな、行かないと、な。避難の方は、あの一団で最後だよな?」
「ええ」
「そっか。…みんな、ここまでありがとう。彼らを連れて、デオ峠の麓まで戻ってくれ」
白光騎士とマルクト兵たちに声を掛けるルークに、どよめきが起こる。これから先、連れて行くわけにはいかないのだ。何が起こるかわからない。巻き込まれる人間は少ない方がいざというとき、身動きが取り易い。
アリエッタは苦渋を示す白光騎士たちに向き合った。
「ルーク様は、アリエッタが必ず、守ります」
この命に代えても。アリエッタの決意に、白光騎士たちが頷き、ルークの命令に従うべく、向きを変えた。
マルクト兵たちがアスランに指示を仰ぐ。アスランが頷き、戻るよう、指示を出した。
「カーティス大佐は…」
「私の知識は必要だと思いますよ」
「それもそうですね。では、私とカーティス大佐の二人で、ルーク様を護衛しましょう」
「ええ、見届けるためにも」
にこ、とルークに二人が笑みを向ける。有無を言わさない、一歩も引く気のない笑みだ。ルークが苦笑し、わかったと頷く。
アッシュがちらりとシンクを見た。
「シンク、お前も行け」
「でも、アッシュ」
「お前が神託の盾騎士団員たちに指示を出さなくてどうする。頼むぞ」
「っ」
「俺なら大丈夫だ」
くしゃりとシンクの頭を撫でるアッシュの視線は柔らかい。まるで兄弟のように見える二人に、アリエッタはホッと息を吐いた。イオンの方はモースやヴァンがいるせいでアッシュも近づくことが難しかったのだろうが、シンクの方は親身になって面倒を見てきたらしい。約束を守ってくれたアッシュに、嬉しくなる。
「もう、子ども扱いしないでよね!…わかったよ。ちゃんと戻ってきてよ」
「ああ、わかってる」
ぺしっ、とアッシュの腕を払い、シンクも兵を連れ、アクゼリュスを出て行き、後にはルーク、アリエッタ、アッシュ、アスラン、ジェイドの五人が残された。ライガも魔物から民を守るために去らせた。
「さて、行くか」
「あ、あの、アッシュ」
「話なら歩きながら聞く」
「…うん」
行動の奥へと進みながら、ルークがぽつぽつとナタリアのことやキムラスカのことを話すのを、アリエッタは眺めた。アスランとジェイドの二人も無言で後に続く。アッシュがそうか、と息を吐いた。
「アッシュ、その…ゴメ…」
「謝るな。殴りたくなる」
「う」
「…だから、謝ってくれるな。お前が悪いわけじゃない。お前が俺に何かしたわけじゃない」
「アッシュ…」
「いいんだ」
仮面で顔を隠したままのアッシュの表情はわからない。ただ、苦しげに吐き出された吐息が、すべてを物語っていた。
「あれだ」
最奥まで来たところで、アッシュがぴたりと足を止め、全員がそれに従った。目の前には、光が漏れ出した、ぽかりと開いた縦長の穴が一つ。そこを閉じているはずの扉は、既になかった。
「セフィロトはダアト式封咒で封じられているはずでは…?」
「一年前に、イオン様が開けた、です」
何のためにアクゼリュスになど、秘密裏に訪れる必要があったのか、あのときはわからなかった。でも、今は知っている。すべて、この日のためだった。
自分が死んだあとも、すべてが滞りなく動くよう、イオン様が前もって敷いてくれた道。どこまで考えていたのだろう。アリエッタは思いを馳せる。自分がルークに惹かれることまで、考えて、いたのだろうか。だから、ファブレ邸に向かうよう、指示したのだろうか。
「行くぞ」
アッシュに続き、中へと入る。ルークの朱色の髪で覆われた背と、アッシュの今は黒く染められた髪で覆われた背を、アリエッタは見比べる。飛びつきたいと思うのは、ルークの背。
(イオン様が何を考えていたのか、もう、わからない、けど)
ルークとともにいたい、この気持ちは、自分の想いだ。それは、確かなこと。
「これが…パッセージリング…」
キラキラと音素が煌くいにしえの装置を見上げ、全員が息を呑む。これが、世界を支えているのだ。そう思うと、自分たちが信じてきた大地が、いかに儚いものであったのかを思い知る。
「…これは…限界が、近い」
パッセージリングを見上げていたジェイドの台詞に、四人の視線が向く。眼鏡のブリッジを押し上げ、ジェイドがきつく眉を寄せた。
「このまま放っておけば、セントビナーまでも巻き込んで崩落しかねません。一刻も早く、他のパッセージリングとの繋がりを断ち切る必要があります」
「断ち切るって、どうすれば…」
「超振動だ」
アッシュの言葉に今度はアッシュへと視線が向く。アッシュが顔を顰め、頭を掻いた。
「だが…、正直、俺はコントロールに自信がねぇ。超振動の力が強すぎて、うまく扱えねぇんだよ」
「なら、俺がコントロールする。譜術の練習は母上に習って、ずっとやってきたから、自信あるし。それに、俺はアッシュの完全同位体ってやつなんだろ?だったら、きっとうまくいく」
「本番ぶっつけでやることじゃねぇな」
「でも…」
ドッ、と地面が揺れ、それぞれがバランスを崩し、慌てて、周囲のものに掴まる。限界を知らせる、大きな揺れ。押し問答をしている時間は、ない。
「大丈夫、です」
「アリエッタ…」
「大丈夫。アリエッタは、二人を信じてます」
ルークとアッシュ。二人の手を取り、重ねさせる。アリエッタの緋色の目に迷いはない。大切な主と大切な友人の二人になら、命を掛けられる。ジェイドとアスランもまた覚悟を決めたように、頷いた。
ちら、とルークとアッシュの二人が視線を交わし、苦笑しあう。
「仕方ねぇな。…やるぞ、ルーク」
「ああ、アッシュ」
二人が手を握り合い、パッセージリングへと歩み寄るのを、三人は見つめた。ジェイドが二人に指示を飛ばす。
『聖なる焔の光』たちは、パッセージリングを見上げ、目を閉じた。ここが正念場だった。誰もが口を閉ざし、固唾を呑んで二人を見守る。
ここで、アクゼリュスとともに沈み、消滅すれば、預言の勝ち。世界も滅びを辿るだろう。
けれど、ここで生き残れば。
(違う、です)
生き残って、みせるのだ。預言になんて、負けるものか。
二人の身体が発光し、高く掲げた繋いだ手から、光が溢れ、パッセージリングに向かった。ジェイドの指示通り、パッセージリングがパキンッ、と砕け散る。
大地の揺れが、酷くなる。
「急いで脱出しなければ…!」
焦るジェイドたちとともに座り込んだルークたちに駆け寄り、アリエッタは一声鳴いた。バサッと羽音がし、フレスベルグが三羽、崩れた天井を抜け、降りてくる。
「ルーク様たちを早く…!」
フレスベルグの背に疲弊したルークとアッシュを乗せ、二人が落ちないよう、アリエッタはルークとともに、アスランがアッシュとともに、ジェイドがもう一羽の背に乗り、空へと上がった。崩れ落ちてくる岩を、先んじたジェイドが譜術で砕きながら、青空を目指す。
瘴気の層を抜け、アクゼリュスを脱した彼らの耳に、大地を轟かす地響きが聞こえてきた。土煙が瘴気と混じって立ち上る。
「…アリエッタ」
「ルーク様、大丈夫ですか…?!」
蒼い顔をするルークが起き上がろうとするのを、アリエッタは支える。ルークがこめかみを押さえ、頭を振り、アクゼリュスを振り返った。
「アッシュは…?」
「あっちに乗ってます。無事、です」
「そっか…。はは、俺たち、やったんだな」
「ええ、ルーク殿。預言を覆す、第一歩ですね」
ジェイドがホッと息を吐き、笑みすら浮かべている顔を見やり、ルークが首を振った。起き上がったアッシュもまた、同じように首を振る。
「違うぜ、死霊使い。第一歩を刻んだのは、俺たちじゃない。今はいないイオンが、その一歩を刻んでくれたから、俺たちは今、ここにいる」
「うん、そうだ。イオンがいてくれたから。イオンが、その一歩を次に繋いでくれたから、俺たちも続くことが出来たんだ」
「…なるほど」
死んだイオンを思うように、五人は揃って空を仰いだ。見えるのは、音譜帯と真っ白な雲と空ばかり。そこにイオンがいるかなんて、誰にもわからないが、感謝の意を伝えるように、見上げた。
「…なぁ、アリエッタ」
ぎゅ、とアリエッタはルークに手を握られ、きょとん、と瞬いた。目を向ければ、険しいとすら言えるルークの、真剣な表情が、あった。
「ルーク、様?」
「アクゼリュスが瘴気に覆われたみたいに、他のところも危ないんだと思う。預言との戦いは、まだまだ続くってわかってる」
「はい」
「でも、全部終わったら、消滅預言が回避されたら、さ」
その、とルークが言いよどむ。顔が赤い。アリエッタはますます不思議そうに首を傾ぐ。
ルークの様子に気づいたらしいアッシュたちが、わざとらしくルークたちから視線を逸らし、フレスベルグに離れるよう、そっと指示した。
余計な気遣いしやがって、とルークが呻く。
「どうしたですか?」
「あ、いや、その…その、さ!全部、終わったら」
「はい」
「…俺と結婚して、欲しいんだ」
ぽかん、とアリエッタは呆け、耳を疑い、「結婚は早いだろ!」と喚くアッシュの口を、アスランが如才なく手で塞ぐ。ジェイドもどこから出したのか、布を引っ張りだし、アスランに渡した。
「ムリ…、です。だって、だって、アリエッタとルーク様じゃ…ッ」
「父上と母上の許可なら得てる。身分の差とか文句言うやつは、俺が頑張って抑え込む。たくさん苦労させると思うけど、でも、俺、アリエッタじゃなきゃ、嫌だ」
「ルーク様…」
「いつか、ルーク、って呼んでくれるか、アリエッタ」
耳まで真っ赤に染め上げるルークの目は、ただただひたむきで。アリエッタの緋色の目に、じわりと涙の膜が張る。
「アリエッタも、頑張る、です。一緒に、頑張りたい、です」
「ああ」
「…ルーク、大好きッ」
「っ、俺も!」
アリエッタは小さな身体でルークに飛びつき、ぎゅ、と背に手を回して抱きついた。ルークも嬉しそうに抱き締め返してくれる。温かい腕。大好きなルークの腕。叶うことのない想いの、はずなのに。
(ルークが頑張るって、言ってくれる、から)
アリエッタも、頑張ろうと思う。
二人の子どもはお互いを一生懸命に抱き締めあいながら、満面の笑みを零す。フレスベルグが祝福の声を高く上げた。
大地から、ライガが呼応するように鳴き声を響かせる。
(イオン様。イオン様が作ってくれた道を、アリエッタは、生きます)
ルークと一緒に、幸せへと続く道を、歩んでいきます。
アリエッタは目を閉じ、ルークの匂いを肺一杯に吸い込んだ。
どんなに険しい道が続いていようと、ルークと一緒なら、迷いはない。
「頑張ろう、ね、ルーク!」
「おう!」
二人は笑顔を交わし、触れるだけのキスをした。
END
最後までお付き合いありがとうございました!
後日談でルクアリ結婚式を書くかもしれませんー。
アッシュとシンクの話も書きたいなぁなんて思ってるので、番外編が思い立ったときに増えていく予定です(笑)