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月齢

女性向けブログ。ネタ語りや小説など。ルーク至上主義。

2025.04.21
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2008.05.21
5万HIT感謝企画

タケヤさまリク「誇り高き薔薇は微笑する」の続編です。
本編軸希望ということで、アクゼリュスを選んでみました。
ナタリアは真っ黒です。インゴベルトも黒くなりました。
同行者厳しめですが、空気です。
アッシュ好き、アシュナタ好きさんは回避推奨。
この黒ナタはイオンを評価しなさそうなため、イオンにも厳しめです。

注!同行者厳しめ(イオン&アッシュ含)






秘預言を王に聞かされたナタリアは、私室に戻り、愁眉を寄せ、荒ぶる感情を落ち着けようと、息を吐いた。それでも怒りは収まらない。

「冗談ではありませんわ」

怒りのあまり戦慄く唇から紡がれた声音は、凍てついた響きを伴っていた。預言などにルークを奪われてなるものか。







ティア・グランツという名のダアトの軍人によって誘拐され、帰ってきたルークを訪ねるため、ファブレ邸の応接間に通されたナタリアは、椅子に腰掛け、吐息した。報告書にあった非常識極まりない連中がルークの同行者かと思うと、胃が痛くなってくる。
あまりに深く悩ましげなため息に、白光騎士たちはナタリアの心中を思い、胸を痛めた。婚約者であるルークをあれほど心配なされているとは、と。
そして、ルークに負担を強い、ナタリアの苦悩の種となっているティアへと怒りを募らせた。
メイドが置いていった紅茶が冷めていく様をぼんやりと眺めながら、ナタリアは思考を巡らせる。どうにかしなくてはなるまい。キムラスカのためにも。

(ルークが王とならずに、誰が私の夫となり、王になるというの)
秘預言どおりに『聖なる焔の光』をアクゼリュスで喪うことを渋るインゴベルトに、あのルークはレプリカであって、本物はダアトにて保護していると嘯いたモースの醜悪さが脳裏を過ぎる。一瞬、父王が覗かせた驚愕と──怒りを、あの愚か者は悟ったのかどうか。
いや、悟ってはいるまい。あれはインゴベルトがすぐに浮かべた満足そうな笑みにしか気づかなかった。その笑顔の裏に潜んでいる意味を履き違えているのも明白だ。

(お父様にも困ったものですけれど)
何しろ、モースに言われるまで、ルークがすり替えられているという事実に気づかなかったのだから。だが、事実を知った後の対応を、ナタリアは評価し、玉座を追い落とす計画を始動することは止めた。
もし、モースに言われるがまま、預言を大義名分にルークを犠牲にしようとするのならば、ナタリアはインゴベルトを容赦なく玉座から追い落とすつもりでいた。その計画もすぐにでも実行できるまでに進ませてある。
テーブルに肘をつき、両の指先を合わせた手でそっと微かな笑みを刻む口元を隠す。淡く桜色に塗った爪がナタリアの若草色の目に映りこんだ。

(命拾いしましたわね、お父様)
モースが去った後、二人きりになってからインゴベルトと交わした会話を思い起こす。もし、レプリカルークの生殖能力に問題がなく、子孫を為せるというのならば、七年もの間、政治から遠ざかっていた上、ルークを襲い、自国の民を強襲した被験者ではなく、七年の間に積み上げた確かな実績を評価し、レプリカルークを後継者としたいと思うが、どう思う、と確信を持って訊ねられた問いへの答え。
迷いなく答えた自分を、ナタリアは誇りに思っている。心のうちで、軽やかに笑う。

(ああ、ルーク。貴方を死なせたりなど、しませんわ)
被験者などいらない。ルークこそが唯一の王。
アクゼリュスでキムラスカのためにその身を贄とするのは、己こそが真の『聖なる焔の光』と吠える愚か者のほうだ。キムラスカに背を向け、民を傷つけた罪をその命を持って贖ってもらわねば。
預言に唯々諾々と従う気はないが、キムラスカにとって有利となる預言ならば活用すべきだ。預言は一つの指針でしかない。二年ほど前から急激に求心力が落ち始めた導師イオンへのナタリアの評価は低いが、この言葉にだけは賛同している。
悪いことが詠まれているならば、それを避けるよう努力し、よいことが詠まれているならば、それが実現するよう努力する。預言とはそういうものでいいと、ナタリアは思う。
そして、キムラスカの繁栄が『聖なる焔の光』の死によってもたらされるというのならば、それをキムラスカのために実現しよう。

(ですから、私のルークのため、キムラスカのため、死んで頂かなくてはね)
ねぇ、『ルーク』。
カイツールよりもたらされた鮮血のアッシュによる愚行に、密かに怒りを滾らせながら、ナタリアは応接間へと向かってくるルークの足音に耳を澄ませる。
ガチャリと開いた扉に、顔を笑みに輝かせ、王女は愛しい『聖なる焔の光』を迎えようと立ち上がった。

「お帰りなさいませ、ルーク」







自分は城に泊まり、導師イオンを街中のホテルに泊めようとしたモースを一蹴し、イオンこそを城に泊めさせた翌日、ナタリアはモースが出した許可証を振りかざし、城内へと入り込もうとしていた神託の盾騎士団の軍服を着込んだ者たちを前に、艶やかな笑みを零した。不審に思い、取調べを行おうとしたキムラスカ兵を押し退け、侵入しようとしたということだった。
何のために導師イオンに会おうとしていたのか、聞き出したところ、六神将に命じられ、キムラスカ内から連れ出そうとしていたからだと答えが得られた。それも、秘密裏に。
ただえさえ、マルクトの例があるのだ。誘拐だと騒がれ、キムラスカの落ち度と取られかねない事態を引き起こそうとしていたその者たちを捕らえ、ナタリアはモースを呼び出した。ちなみに、いくらキムラスカ兵が警護に当たっていたとはいえ、朝まで眠りこけていた導師守護役の存在はナタリアにますます導師イオンへの評価を下げさせる要因となった。
モースは知らぬ存ぜぬを通し、許可証は偽造されたのだと言い張ったため、モースには厳重注意を言い渡すに留める。が、ここぞとばかりに、カイツール襲撃のこともあり、鮮血のアッシュを引き渡すよう、言い渡しておいた。アッシュこそが、と耳打ちしてきたモースに、では、なおのこと返して頂かなくては、とナタリアは微笑んだ。
グランツ兄妹のルーク誘拐の連帯責任を、貴方にまで負わせることも可能ですのよ?と甘く睦言のように囁いて。モースは血の気の引いた顔で、王者の風格を漂わせるナタリアに諾と従った。

(頭の悪い狸ですもの、働きも期待はできませんわね)
何としてもアクゼリュスまでにアッシュを捕らえなくてはならない。ナタリアはアクゼリュス慰問のための準備をルークとともに城の一室で進ませながら、アッシュをカイツール並びにキムラスカ第三王位継承者襲撃犯として捕らえるよう、インゴベルトに進言し、手持ちの駒から数人を選び、アッシュをアクゼリュスへと連行するよう命じる。
ダアトの愚か者たちのおかげで余計な手間ばかりが増えていく、と目頭を押さえ、ナタリアは嘆息した。側近たちも心配そうにナタリアを見つめる中、疲れを目元に滲ませるナタリアの肩に、ルークがポン、と手を置いた。

「大丈夫か、ナタリア」
「ルーク…。ええ、私ならば大丈夫ですわ」
「そんな疲れた顔して何言ってんだ。無理して倒れたらどうすんだよ」
「ですが、私はアクゼリュスにはともに行けないのです。だからこそ、準備万端にしておかなくては。時間はいくらあっても足りませんわ」
「ダメだ」
「ルー…、きゃあ?!」

唐突に椅子を立ち上がったかと思うと、ナタリアを抱き上げたルークに、その場に居合わせた側近たちや護衛の兵たちがぎょっ、と目を瞠る。ナタリアも呆気に取られ、慌てて、落ちないよう、ルークの首に手を回し、困惑を表情に浮かべた。

「何をしますの、ルーク!」
「言っても聞かないなら、実力行使しかないだろ」
「だ、だからって、こんな…ッ」
「大丈夫だよ、ナタリア」

にっ、と口角を吊り上げ、頼もしげに笑うルークが、ぐるりと円卓を囲む側近たちを見回す。側近たちがピシリと背を正した。

「俺たちにはこんなに優秀な部下が揃ってる。だから、一人で頑張ろうとすんなよ。少しくらい頼ってやんなきゃ、こいつらも可哀想だろ?」
「そうです、ナタリア様!」
「どうぞ、お休み下さい」
「我ら、全力を尽くし、お二人のご期待に応える所存です!」

口々に決意を示す側近たちを、ナタリアは一人一人、見つめていく。ナタリア自身がルークとともに、キムラスカのために選んだ優秀な部下たち。護衛の兵たちも、敬礼をナタリアとルークへと捧げた。

「…わかりましたわ。後を頼みます」
「はっ!」

誇らしげに顔を輝かせる者たちに、ナタリアの薄く紅を塗った唇が弧を描く。この優秀で忠実な部下たちを、誇りに思う。

「すぐ戻るから、その文書、進めておいてくれ」
「ルーク?」
「部屋まで連れてく」

そう言って、自分を抱きかかえたまま歩き出したルークに、ナタリアは心底戸惑う。見れば、既に兵がルークのために扉を開け、通りやすくしていた。いくら城の中とはいえ、気恥ずかしさにナタリアの頬が火照る。

「ルーク…、私、自分で歩けますわ」
「いいから、おとなしくしてろ。お前が寝るとこ見届けないと、落ち着かねぇんだよ」

だって、お前、寝てないだろ。
ちら、と目の下にくっきりと刻まれた隈を見下ろされ、ナタリアはぐ、と口を噤む。苦笑うルークに返す言葉もない。
スタスタと危なげない足取りでナタリアの部屋へと向かって、廊下を歩くルークに、通り過ぎる兵やメイドたちが驚きながらも、深く頭を下げる。ナタリアに疲労が溜まっていたことを知る者たちは、そのことに気づいたルークへと惜しみない賛辞と感謝を心のうちで送った。自分たちではどれほど心配であろうと、ナタリアを止めることができないからだ。
ナタリアの部屋の前まで来ると、警護の兵がドアをノックし、中からメイドが開けてくれた。慌てながらも、ホッと息を吐いているメイドを見やり、ナタリアは一人反省する。どうやら彼女にも相当心配を掛けていたらしい。

(確かに…少し肌も荒れていますわね)
頬を撫で、吐息する。いつもならば滑らかな肌が少しかさついているようだ。無理を重ねていたツケが、こんなところで出たのだろう。
ナタリアはルークに抱きかかえられたまま、ベッドまで運ばれた。そっと労わるように下ろされる。

「温かい紅茶でも淹れてくれるか?ブランデー垂らしてな」
「はい、かしこまりました」

ぺこりと頭を下げ、早速準備を始めたメイドの目が自分たちから逸れたことを確認すると、ルークがナタリアの前髪を左手でかき上げた。何事かと目を瞠れば、朱色の髪がさらりとナタリアを覆うように降って来て。

「!」

ちゅ、と額に口付けが落ちてきた。キョトン、と瞬いているうちに、赤く染まる顔をそそくさと隠すように逸らし、「おやすみ」と一言言うや否や、ルークは走り去っていってしまった。ルークの勢いに驚くメイドの視線を感じながら、ナタリアは額に手を当てる。

(今、のは)
昔、帰っちゃイヤだと駄々を捏ねたルークに、よくしてやっていたキスだ。宥めるために送った、愛情をこめたキス。いつからかルークはそんな駄々を捏ねなくなっていたから、忘れていた。けれど、ルークは覚えていてくれたらしい。
ルークの唇が触れた額が熱い。

「…嫌ですわ」
「ナタリア様…?」

ルークに送っていたキスが、こんなふうに返ってくるなんて思いもしなかった。いつのまに、駄々を捏ねる側と宥める側が変わったのだろう。顔を真っ赤に染め上げたナタリアに、メイドが眉を跳ね上げ、目を見開いた。

「お顔が真っ赤ですわ、お熱でもおありなのでは…」
「いえ、いいえ。大丈夫ですわ」
「御典医をお呼びした方がよいのでは」
「ああ、いえ、いいのです。…医師でもこればかりはどうにもなりませんもの」

不思議そうに首を傾ぐメイドに苦笑し、下がるように言い渡し。ナタリアはばたりとベッドに倒れこみ、熱のこもった息を吐いた。







バルコニーに出て、まだかまだかと空を見上げては、ため息を零すナタリアの耳に、インゴベルトの苦笑が聞こえた。あら、とナタリアははにかみ、振り返る。

「嫌ですわ、お父様。いらしたのでしたら、声を掛けてくださいな」
「お前が私の気配に気づかぬとは珍しいこともあるものだと思ってな。それほどルークが心配か?」
「当たり前ですわ」

親子はにこりと笑みを交わし、揃ってバルコニーの白い大理石の手すりに手を乗せた。のっぺりとした青で塗り潰された空を二人、並んで見つめる。求める小さな影はまだ見えない。アクゼリュスを覆っているという瘴気の雲も、遠いキムラスカからでは見えない。

「ルークはお前が育てたようなものだからな、ナタリア」

ぽつりと独り言のように呟いたインゴベルトを、ナタリアはちらりと横目で見やる。空を向いたままの父王の横顔は、酷く老いて見えた。金茶の眉を寄せ、父の手に己の手を重ねる。インゴベルトが重なった手に視線を落とし、ふ、と穏やかに笑った。

「私ももう老いた。──わざわざクーデターを起こす意味もないほどに」
「何を仰いますの、お父様」

内心の動揺を綺麗に隠し、ナタリアは慈愛に満ちた笑みを浮かべる。インゴベルトがその笑みをじ、と見つめ、ゆるゆると首を振った。

「非難しているわけではない。私以上に国の行く末を憂う者がいた。それだけのことだ」
「……」
「ナタリア。ルークの帰国後、すぐにでも婚姻の日取りを決めなさい」

急に何を言い出すのかと、若草色の目が瞬く。インゴベルトがくしゃりとナタリアの頭を撫でた。無心で父に甘えることができた幼いころにしてくれたように、優しい手で。戻りはしない時に、懐かしさがこみ上げる

「何か、ありましたの、お父様」
「モースがお前が私の本当の娘ではないと言い出した」
「…いまさら、ですわね」

片頬に嘲りを刻み、ナタリアは忌々しげに眉をひそめる。悪知恵を働かせたつもりなのだろうが、爪が甘い。父とも母とも違う金色の髪の意味を、考えなかったとでも思っているのか。赤い髪に焦がれなかったとでも思っているのか。
ナタリアは十五となったとき、自らベルケンドに赴き、己の音素振動数を調べた。そして、保管されている父母の音素振動数と比較し、自分が二人の本当の子ではないことを、知った。ショックだった。が、同時にやはりという諦観もあった。ずっと誰よりも自分自身が疑ってきたことが事実であった、それだけのことだという思いがあった。
国を思うが故に、ナタリアはその事実を正直にインゴベルトに申し出た。証人として本当は祖母であった乳母も連れて。涙一つ零さず、淡々と事実を告げるナタリアに、インゴベルトは知っていたと言い添え、頷いた。自分とも王妃とも似つかぬナタリアの出生をインゴベルト自身も当然のように探っていたのだ。
なら、何故黙っていたのかと訊ねた王女に、王は言った。お前が真に賢い者かどうか、試したのだと。王族の証を持たぬ自分に疑問を抱き、その疑問と向き合うだけの勇気があるか。そして、答えを知ったとき、己の感情を押し殺し、国のためにこそそれを告白する勇気があるか。それを知るために。
それを聞いたナタリアは、インゴベルトにこそ、親子の絆を覚えた。実の娘への惨い仕打ちを棚に上げ、インゴベルトを情のない王だと非難する祖母にではなく、国のため、私情を犠牲にすることの出来る王にこそ、絆を感じた。
だからこそ、預言を武器にモースが幅を利かせることを容認する父が、許せなかった。そんな王を見ることに、王女は耐えられなかった。だから、こそ。

「ナタリア」

インゴベルトのかさついた手が、ナタリアの頬を包む。昔よりも皺の増えた手。幼いころは、大きな人だと思っていた。いつのまにこんなに小さくなってしまったのだろう。
ナタリアは父の手に頬を摺り寄せた。この温かさだけは、昔と変わらない。

「私はお前ほど国を思い、民に愛される王女を他に知らない」
「……」
「お前ならば、この国を正しく導けるだろう。私は年を取り過ぎた。己の才覚で全てを決めることが億劫でならない。年々、まやかしと知りながら、預言に縋りたい気持ちが強くなる一方だ」

自嘲を口の端に滲ませるインゴベルトに、ナタリアは返す言葉を持たない。ただ黙って耳を傾ける。こんなふうに父と向き合うのは、久しぶりだった。

「私はお前ほど王にふさわしいものはいないと思っている。しかし、お前の立場は不安定だ。確固たるものとするためにも、紛れもない王族の特徴を持つルークと婚姻を結ぶ必要がある」
「ええ、わかっておりますわ」
「だがその前に、一つだけ、お前に訊ねたい」

白く濁り始めている翠の目をしっかりと見据え、言葉を待つ。父王もまた、王女の若草色の目をしっかりと見つめた。

「ルークはお前が、私人としてのお前を晒すことが出来る相手か?」

ナタリアというただの女としての自分を晒すことが出来る相手か。そう問う父に、娘は迷いなく頷いた。

「もちろんですわ、お父様」
「そうか」

インゴベルトもまた、王ではなく、父の顔で笑みを零し、最愛の娘を強く抱きしめた。ナタリアは父の背に腕を回し、幼いころのようにその抱擁に甘えた。
つかの間の、親子の時間。それは、バサリと羽音が聞こえるまで、続いた。文書を足に結わえた小さな筒に仕舞い込んだ鳩がもたらした報せに、ナタリアは顔を輝かせる。

「ルークからですわ」

そこに記された報せは、すべてナタリアが描いた図面に違うことなく沿っていた。すなわち、アクゼリュスの崩落を利用した、『キムラスカの繁栄』へと続く計画の成功がルークの手によって記されていた。
それをナタリアはインゴベルトに報告しながら読み上げていく。

「ヴァンの意志を継ごうと暗躍していた『魔弾のリグレット』がルークを大地を支えるパッセージリングに連れて行こうとしたようですけれど、当然のごとく、ジョゼット・セシル少将に退けられたようですわ。ダアトへの帰国後、連れ去れた導師イオンは導師守護役を人質に取られ、セフィロトへの入り口を無理やり開かされたようですけど、無事だそうです。どちらが主かわかったものではないと、ルークたちは呆れているようですわね」
「ふむ。それで、そのパッセージリングはどうなったのだ?」
「セシル少将に計画を阻止されたことで、自棄になったリグレットが仲間である『黒獅子ラルゴ』と『鮮血のアッシュ』を巻き込み、自分たちもろとも譜業爆弾で破壊した、ということですわ。そのせいでアクゼリュスは崩落したとありますわ」

華やかな笑みがナタリアの顔に広がる。そうか、とインゴベルトは同じように笑みを浮かべ、満足そうに頷いた。

「ルークももうすぐ帰ってきますわね」
「そのあとはどうするつもりだ、ナタリア?お前にすべてを任せようと思っているのだが」

その一言で全権限を得た王女は、きらりと瞳を輝かせる。齢十八にして全盛期の己を凌ぐ策謀を働かせる娘に、年老いた王は国の将来は安泰だと安堵の息を吐き出した。

「アクゼリュス崩落には危うく、キムラスカの次期国王までも巻き込まれてしまうところでしたわ。マルクト側のジェイド・カーティスによる職務怠慢並びにルークに対する不敬もありますし、ああ、ガルディオスの遺児のこともありましたわね。それら全てをピオニー陛下にぶつけるつもりですわ」
「どおりでお前があの不埒な輩どもを放っておいたわけだ。立派すぎる戦争理由だな」
「あら、いやですわ、お父様。今、戦争などすれば、ホド戦争の傷跡が癒えていないキムラスカにも大打撃となってしまいます」
「では、和平は成し遂げるつもりか」
「ええ。──もっとも、キムラスカに有利な条件で結ばせて頂くつもりですけれど」

セントビナーの薬草もエンゲーブの作物も魅力的ですわね。
にこにこと微笑み、ナタリアは鳩の頭を指先で撫でる。くるる、と気持ちよさそうに鳩が鳴いた。
風がふわりとナタリアの金色の髪を揺らめかせる。

「ルークとの婚姻は、『贈り物』で一杯になりそうですわね、お父様」
「ああ、楽しみなことだ」

ナタリアは風を浴び、国を見渡し。咲き誇らんばかりの笑みを国に向かって送った。


END


タケヤさん、リクありがとうございました!
少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。
頂いた感想も嬉しかったですー。
イオンにもうっかり厳しくなったのですが、よかったのかしら(汗)
これからもよろしくお願いします(^^)

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