月齢
女性向けブログ。ネタ語りや小説など。ルーク至上主義。
ss
某所での黒チャットに参加させて頂いて、思いついたというか…もごもご。
アルルクです。というより、ルクアル。で、アシュアル。
ルークもアッシュもノエルもギンジもなんだかいろいろ大変です。
厳しめ要素は特にはありませんが、アシュナタ、ルクティア好きな方はご注意。
アルビオールの整備のために訪れたシェリダンで、うっとりと目を細め、ルークはため息を零した。
このフォルム、この色。何より、その機能。
素晴らしいの一言に尽きるよなぁ、と翡翠はとろりと溶ける。
「うん、やっぱり俺のアルが一番、美人だ…」
アルビオール二号機。創世歴時代の遺産である浮遊機関を用いた飛行する音機関。
それは、ルークの心を惹きつけてやまない。はぁ、とルークの唇から悩ましげな吐息が漏れる。
いつもいつもありがとうな、とアルビオールの外装をキュッキュッ、とワックスを塗ったタオルでルークは丁寧に磨いていく。
顔が映り込みそうなほどに磨かれたアルビオールが、まるで喜んでいるかのように太陽の光を受けて、キラリと光る。ルークが眩しそうに目を細め、綺麗だよ、と囁いた。
その頬はほんのりと赤い。
「ルークさんは本当にアルビオールを愛してくれているんですね」
「当たり前だろ、ノエル」
「ふふ、嬉しいです」
ルークとともにアルビオールを磨いているノエルが、嬉しそうに笑う。ルークもまた、アルビオールへの有り余るほど深い愛情を理解し、共有してくれるノエルに、にっこりと微笑んだ。
──そんな二人に、ティアやアニスが音機関相手にどうかしてるんじゃないのかと喚くが、二人の耳には届かない。
「うう、ルーク…。ああ、でも、音機関を愛するその気持ちも尊いものだし、くそっ、俺はどうしたら…!」
「どうしようもないと思いますよー、ガイ。そもそもあなた、ルークの視界に入ってもいませんし」
アルビオールと争う以前の問題でしょう、とジェイドが愉快そうに言う。そんなことは…!とガイが叫ぶが、実際にルークはガイを一瞥すらしないのだから、否定のしようもない。
うう、と嘆き、ガイが地面に伏した。
「やっぱりアルは白が一番だよ…」
「それは違うぞ!」
ルークが白く輝くアルビオールに甘く囁いたときだった。
声を張り上げ、アッシュが姿を見せたのは。自分たちもアルビオールの整備のために、シェリダンへとやってきたのだと、ともにいるギンジが言う。
マントを翻し、紅い髪を靡かせるアッシュの視線は、険しい。
「アルビオールは黒こそが相応しいんだ、わかっていないな、お前は」
「はぁ?アッシュこそ、美的センスがおかしいんじゃねぇの。アルには白だっつーの!」
「いいや、俺の黒を纏ったオールこそ、もっとも美しいアルビオールだ!」
「ざけんな!一番美人なのは、俺のアルに決まってんだろ!」
現在のところ、オールドラントで活動が可能な二機であるアルビオールを、ルークとアッシュは己のものこそ美しい、と競い合う。
ノエルとギンジの兄妹は、二人の言い分にうんうん、と頷いているが、ジェイドたちからしてみれば、色が違うだけとしか思えない。被験者とレプリカは美的センスも似るものなんですかねぇ、とジェイドが興味深そうに一人ごちる。
アルビオールばかりを褒め称え、自分には一言も触れてくれないアッシュに、ナタリアが怒ったように怒鳴るが、アッシュは取り込み中だ、とにべもなく、振り払った。
ナタリアが頬を膨らませ、アルビオールを睨む。同じく、ルークに振り向いてもらえないティアが、慰めあうようにナタリアへと近寄った。
「だぁ、もう!アッシュはわかってねぇ!俺のアルのこの美しさが何でわかんねぇかなぁ!」
「貴様こそ、何故、俺のオールの美貌がわからないんだ!」
ギッ、とルークとアッシュは、互いを睨む。互いに、その手が自然と剣へと伸びる。
一触即発の空気に、誰もが息を飲む。
そこに、日光を受けたアルビオールが煌めき、ルークとアッシュ、二人の目を眩ませた。
「…アル?」
ルークが訝しげに眉を寄せ、アルビオールを仰ぐ。アルビオールは日の光を受け、静かに佇んでいる。
その様に、ルークはアルビオールが悲しんでいるのを見て取った。
「ッ、アル、お前…!」
え、とガイたちが首を傾ぐ。一体、今度は何だというのだろう。
見れば、アッシュも剣の柄から手を放し、一人、何やら頷いている。ガイたちはさらに混乱した。
「ふ…、なるほど。お前のアルもなかなかだな」
「アルは優しいからな」
「ああ。自分のためにお前が傷つくところなど見たくない、か。…俺のオールもこの場にいれば、同じことを言っただろうな」
「そうですよ、アッシュさん。オールはアッシュさんが傷つくとこなんて、見たくないに決まってますよ!」
「そうですよ、お二人とも。お二人が傷ついたら、アルビオールは悲しみます」
そんな会話がいつ繰り広げられたんだ、とガイたちが思わず、叫ぶ。当然、ルークたちは取り合わない。
アルビオールの言葉がわからない人間の声など、彼らにとっては雑音以外の何物でもないからだ。
傍観者に徹しているジェイドだけが、可笑しそうに眼鏡の奥の目を細め、笑っている。
ごめんな、とルークがアルビオールの白い機体に触れ、頬を擦り寄せた。愛しくて仕方ないと、唇に滲んだ笑みが雄弁に語っている。
アッシュが俺も戻ってやらないと、とルークたちに背を向けた。
「そろそろオールが寂しがっているだろうからな。…アルを大事にしてやれよ、ルーク」
「言われるまでもねぇよ。お前も、オールのこと、大事にしてやれよ」
「ああ」
ふ、とルークはアッシュと微笑を交わし、去っていく紅い髪に覆われた背を見送った。
その間も、アルビオールを労わるように撫でる手は止まらない。
「…愛してるよ、アル」
幸せそうに、再び、アルビオールを磨くのに精を出すルークに、ノエルだけが微笑ましそうな目を向けた。
END
なんかもういろいろすみません…。