月齢
女性向けブログ。ネタ語りや小説など。ルーク至上主義。
アシュルク。ルークがスレ気味で、微エロ。というか、事後です。
軽いカニバリズム的表現あり。
勢いで書き上げましたが、そういえば、こういうのアップするの、もしかして初めてか…。
ピオルクで匂わせるような会話は書いたことあったけど。
そういうのがダメな方は自己回避願いますー。
ちょこっとですが、ナタリアと公爵夫妻に厳しめな一文があります。
注!ナタリア&公爵夫妻厳しめ
隣で眠るアッシュの顔を、ルークは黙って見つめた。自分と同じ造作の顔。
当たり前だ。自分はアッシュから作られたのだから。
「……」
翡翠の目を細め、薄闇の中、ルークは忍び笑う。
それでも、自分とアッシュは違う存在だ。違うからこそ、抱き合い、繋がり合い、一時のことであろうと一つになろうと絡み合っていたのだから。
(好きだよ、アッシュ)
肌を触れ合わせてもいいと思うほどに。
身のうちを抉られてもいいと思うほどに。
汗を交わして、唾液を交わして、どろどろに溶けてしまいたいと思うほどに。
繋がったままでいたいと、思うほどに。
ふ、とルークの口の端に穏やかな笑みが滲む。アッシュの一部になれてしまえたら、アッシュの血肉となれたなら、きっと幸せだろう。
(俺の身体が、死んでも残るような身体だったら、よかったのに)
レプリカとして生まれたこの身は、死ねば乖離し、後には何も残らない。髪の一本も骨の一欠けらも血の一滴さえも何も。
血肉を残すことが出来るなら、とろとろに溶けるまで煮込んで、アッシュに食べて欲しかったな、と笑う。アッシュは冗談じゃない、と顔を顰めるだろうけれど。
それじゃ、お前に触れられないだろうと、怒るだろうけれど。
「……」
ルークは唇にキリリ、と犬歯を立てた。痛みに思わず、眉根が寄ったが、力を緩めることなく、噛み続ける。
やがて、血の味が舌先に広がった。鉄錆の匂いが、鼻腔を擽る。
「……」
血の滲む唇を、アッシュの薄く開かれた唇へと近づける。触れ合わせ、唾液とともに、僅かに染み出た血をアッシュの口腔へと舌を潜り込ませ、送る。
うん、とアッシュが呻き、アッシュの濡れた舌先とルークの舌が触れた。
「…何、してんだ」
緩々と瞼を押し上げ、眉間に皺を刻むアッシュに苦笑する。アッシュの翡翠の目が眇められ、小鼻がぴく、と動いた。
血の匂いに気づいたらしい。
「切れてたか?」
「…そういうこと聞くなよ。心配しなくても、アッシュが丹念に丁寧に解してくれたおかげで切れてねぇよ」
「なら、何だ。どこか怪我でもしてたのか?」
心地のいいまどろみから覚醒しきれていないアッシュは、どうやらまだこの唇の傷に気づいていないらしい。
だが、己の口の中に残る鉄錆の匂いには気づいたらしく、訝しげにぺろりと赤い舌で唇を舐めた。そのしぐさに、ルークの背筋がぞくりと粟立つ。
「…血の味か、これは」
「……」
「唇を切ったのか?」
ス、と伸びてきたアッシュの手が、ルークの顎を掴み、親指の腹が唇を撫でた。
ピリ、と走る痛みに、ルークの頬が強張る。
「よく見せろ」
「たいした傷じゃないよ」
「いいから」
引き寄せられまま、ルークはアッシュへと再び顔を近づけた。呼気が触れ合うほどの距離にあるアッシュの顔をじ、と見つめる。
アッシュの翡翠の瞳に、頼りなげな顔をした自分が映っているのがぼんやりと見えた。
「アッシュ…?」
ぴちゃ、とアッシュの舌がルークの唇を舐めた。傷口を舐められ、ルークの肩が跳ねる。
ルークの唇をアッシュが舐める湿った音が、二人っきりとの宿の一室に響く。鼓膜を犯す音に、静められたはずの熱が高ぶってくるのがわかり、ルークは焦ったように身を引こうとした。
が、がっしりとアッシュに顎を掴まれているせいで、それは失敗に終わった。
仕掛けたのは自分だが、このままでは。
「ア、ッシュッ」
こくん。アッシュの喉が唾を飲み込み、上下する音が聞こえた。
ルークの血が混ざった唾液を嚥下するアッシュに、ルークから抵抗する気が失せていく。アッシュの舌を滑り、喉を通った血は、アッシュの一部になってくれるだろうか。
アッシュの栄養となってくれるだろうか。
アッシュを形作る一部となってくれるだろうか。
「どうした、笑ったりなんかして」
「…俺、笑ってる?」
「ああ、気づいてなかったのか?」
可笑しな奴だな、とアッシュが目を細めて、優しく笑う。ルークはアッシュの首に手を回し、ぎゅう、と抱きついた。
ルーク?と訝しげに自分を呼ぶアッシュに、首を振る。
(好きだよ、アッシュ)
愛してる。誰よりも愛してる。
女だからと、婚約者だからと、胡坐をかいて安穏と笑っているようなナタリアよりも。
七年もの間気づきもしなかったくせに、今更、息子として愛そうとしている虫がいい両親よりも。
この世の誰よりも、ずっとずっと愛してる。
「もし、アッシュっていう存在を作る一部になれたなら、幸せだろうな、って思ったんだ」
「何、馬鹿なこと言ってんだ」
頭をくしゃりと撫で、指で梳いた朱色の髪に口付けを落としてくれるアッシュを、ルークはちろ、と見やった。
照れくさそうに目元を朱に染め、穏やかに細められた翡翠がそこにあった。
「お前という存在自体、とっくに俺の一部だろう。お前がいなきゃ、俺はもうどこに向かって歩いていいかもわからないんだからな」
「…俺もだよ、アッシュ」
アッシュが、いなきゃ。いてくれなきゃ。
泣き出す一歩手前のようにへにゃりと顔を歪め、ルークは笑みを零してアッシュの唇に自分の唇を押し付けた。
END