月齢
女性向けブログ。ネタ語りや小説など。ルーク至上主義。
ワタルさまリク「ルーク依存で婚約者なアリエッタと、兄ルークと弟アッシュ」でキムラスカ捏造です。
ルークはレプリカではないです。
黒ルク。イオンに冷たいルークです。
アリエッタのほうが依存強とのことだったのですが、ルークも十分アリエッタに依存してます…。
同行者厳しめとのことでしたが、ほとんどティアだけになってます。アニスにも厳しめではありますが。
マルクト側にも捏造というか、ガイが捏造です。
注!ティア&アニス厳しめ
怪我の功名と言うのだったか。
ルークは内心、苦笑しながら、ライガクイーンの前で腰を折った。
背後で何をしているの!と喚く女の声がする。やはり、タタル渓谷で切って捨てておくべきだったろうか。
だが、あの女からは聞き出したいことがある。まだ死なせるわけには行くまい。残念だが。至極、残念だが。
「お久しぶりです、ライガクイーン。我が義母上殿」
ほんの少しではあったが、ルークは魔物と意思を交わす術を身に着けていた。
すべては愛しい婚約者、アリエッタの母君や友人たちと親交を深めるために。
もっとも今ではそれは、親交のためばかりではなく、この身を守る術ともなっている。魔物も自分がライガクイーンの縁者と知ると、近寄って来ないからだ。
ティアやイオンが呆気に取られる中、ルークはライガクイーンとにこやかに話を進めた。
『誰かと思えば、婿殿か。久しいの』
「何でも、棲家をそこのチーグルに燃やされてしまった、とか」
『…その通りだ』
ぐるる、と喉を鳴らし、牙を剥くクイーンがチーグルの仔、ミュウを睨む。ミュウが身体を竦ませながらも、必死の態でクイーンの前で頭を地面にこすり付けんばかりに下げた。
恐怖に震え上がりながらも己の罪を償おうとする姿に、ルークは少しだけ、好感を持つ。
「ごめんなさい、ごめんなさいですの、ボクがボクが…ッ」
「謝ってすむもんでもないけどな」
「ルーク!あなた、ミュウが可哀想だと思わないの?!何故、味方しないの!」
どうやらティアの中では、いつの間にやら加害者と被害者が入れ替わっているらしい。そうでなければ、加害者の味方をしろなどと、言えるわけもない。
姿が哀れならば、被害者だとでも言うのだろうか。付き合ってられないと、ルークはティアを一顧だにしなかった。
「義母上、このような場所は貴方には不向きです。ここは人里に近い。いずれ、草食のチーグルたちが肉までも人里から盗み出した理由を察し、貴方を退治しようとする人間も現れるかもしれません」
『…我とて、いつまでもこのような場所にいるつもりはない。卵が孵れば、すぐにでも』
ちら、とクイーンが卵へと愛しげな目を向けた。ルークももうすぐ生まれてくる『兄弟』たちへと愛しげに目を細める。
家であれこれと名前を書き出しては、ああでもない、こうでもないと頭を悩ませていたアリエッタの姿が脳裏を過ぎる。今、彼女は何をしているのだろう。
(クイーンのことも心配してたしなぁ)
そこに自分の誘拐が加わってしまった今、卒倒せんばかりに不安に陥っているかもしれない。あの愛らしいあどけない顔は、きっと可哀想なまでに蒼ざめていることだろう。
せめて、クイーンの問題を解決して帰れば、少しは慰めになるはずだ。
そして、問題を解決し次第、早く帰らなければ。何故、俺を庇ったのですか!とアッシュが激昂しているはずだ。
可愛い弟であるアッシュを守りたかったからだ、と言っても、それで兄上が怪我でもされたら、どうするんです!とさらに怒るに違いない。
そんなところも可愛いんだけどな、とルークは内心、苦笑する。自分を心配してくれているからこそだと、わかっているからだ。
「大変…、卵だわ!ライガの子どもは人肉を好むのよ!今のうちに」
「…今のうちに、何だと?」
背後でロッドを構え、クイーンへと殺気を飛ばし始めたティアに、ルークは顔色を変えた。纏う空気すらも変え、ティアへと切り裂かんばかりの殺気を叩きつける。
ヒッ、と息を飲んだティアの顔から血の気が引いた。
「役に立つかと生かしておいてやったが、我が義兄弟たちを害するつもりならば、容赦はしないぞ、ティア・グランツ」
それとも、ここでクイーンの滋養となるか。
脅しつけ、睨みつければ、クイーンが不味そうだ、と頭を振った。肉はほどよくついているが、性格と同じく腐っていそうだということらしい。
確かに、とルークはティアを嘲笑った。
「義母上、私の記憶が正しければ、確か、ここからそう離れていないところにキノコロードと呼ばれる場所があったはずです。その先にある森は、こことは違い強い魔物が住んでいることもあって人が立ち寄ることもないとか」
『…ふむ。しかし、卵が…』
卵を不安そうに見やるクイーンに、いい考えはないものかと頭を捻る。ティアは変わらず、ロッドを握り締めたままだが、無益な殺生を嫌うイオンにも止められたこともあり、動く様子はない。
もっとも、イオンが止めずとも、ルークの殺気に当てられ、身動き一つ取れなかったのだが。
「卵…んー…」
安全に運ぶ策はないものか、と腕を組み、唸るルークの耳に、ばさりと羽音が聞こえた。
ん?と首を傾ぎ、クイーンが身体を休めていた洞窟の入り口を見やる。
「ルーク!」
小柄な人影が走りこんでくるのが見え、ルークは目を瞠った。ティアやイオンを一瞥することなく、駆け寄ってくる人影を、両腕を広げて迎える。
「ルークゥ!」
真っ直ぐに腕の中へと飛び込んできた柔らかな身体を、しっかと受け止める。
ひっく、と泣きじゃくりながら、縋りついてくるのは、愛しい婚約者──アリエッタだった。桃色の髪を撫で、アリエッタ、と安心させるように名を呼ぶ。
「アリエッタ、俺なら大丈夫だから」
「しんぱ…心配、した、です…!」
「うん、ごめんな」
「アリエッタ、ルークに、もう会えなかったら、どうしよう、って…ッ」
腕を一杯に伸ばし、ぎゅうぎゅうとしがみ付いてくるアリエッタを、ルークは強く抱き締めた。
ここにいるよ、と示すように。
もう大丈夫だと言うように。
アリエッタの側にいるよと安心させるように。
アリエッタの背を軽くぽんぽん、と叩きながら、ルークはちらとイオンを見やった。目を丸くし、戸惑うイオンに、小さく笑う。
(気づかなかったな、アリエッタ)
イオンがそこにいたのに、気づきもしなかった。見もしなかった。
ただただ真っ直ぐに、自分だけを求めて、飛び込んできた。
まだぼろぼろと涙を流すアリエッタの髪を指で梳いてやりながら、ぼんやりとルークはイオンを見、イオンの被験者を想起する。
アリエッタが大切で大切で、自分が死んだ後も、自分を想っていて欲しいと駄々を捏ねていた子ども。ルークにとって、被験者イオンとは、そういう人間として認識されている。
(…可哀想に、イオン)
く、とルークの口の端が上がる。
導師守護役から外され、イオンにも見捨てられたのだと泣いていたアリエッタを、ダアトへと見学に訪れ、見つけたときのことを思い出す。
イオン様、と震える声で呼び、緋色の目から次から次へと涙を溢れさせていた、少女。
あのときの喜びを、今でもルークは覚えている。被験者イオンを守るべく、側に立つ姿を初めて見たときから、欲しいと思っていたアリエッタが、手に入るところにいる。そう思ったのだ。
アリエッタの悲しみに付け込むことに躊躇いはなかった。
今では、ルークがいなければ、生きては行かれないほどに依存し、執着してくれるようになったアリエッタに限りない愛しさを抱きながら、ルークはイオンへと鮮やかに笑む。
レプリカを作り出し、死してのちまでアリエッタを縛りつけようとした被験者イオンへの手向けのように。
甘い言葉を囁き、魔物の中でも特に知能が高いライガの女王の娘を、ルークは手に入れたのだ。
(可愛い可愛い、俺のアリエッタ)
純粋で無垢な存在であり、なおかつ、魔物と人の残酷さをも持ち合わせる稀有な存在。
ルークまでいなくなったらどうしようと思ったと、目を真っ赤にして幼い子どものように泣くアリエッタを抱き上げる。柔らかな髪に顔を埋めれば、ルーク、とアリエッタが擦り寄ってきた。
(誰にも渡すもんか)
被験者イオンだろうと、レプリカイオンだろうと、渡しはしない。
アリエッタは自分のものだ。自分だけのもの。
この愛しい存在を手に入れるために、どれほどの労力を払ったことか。
「ルーク様、お怪我はございませんか」
アリエッタに続き、洞窟へと入ってきたジョゼットに、ルークは大丈夫だと首を振り、ちろ、とティアへと目を向けた。こくりとジョゼットが頷き、素早く、ティアを叩き伏せ、拘束していく。
何を、とイオンが声を荒げたが、ルークはジョゼットを止めなかった。
「ルーク、これは一体…ッ」
「その女は見張りを譜歌を使って眠らせ、ファブレ邸に侵入した襲撃犯だ。どうやら、ヴァン・グランツ謡将殿を狙ったようだが、その際、間に入った俺の弟に武器を向けた罪もある。ちなみに弟は第三王位継承者でもある。俺の言っていることがわかるかな、導師イオン?」
ザァ、とイオンの顔から血の気が引く。けれど、ルークは追求の手を緩めない。
ティアに反省した様子がまったく見られないからだ。ジョゼットが嫌悪に顔を歪め、ティアを睨みつけている。
アリエッタもまた、ティアをきつく睨み、殺気を飛ばした。
「その上、だ。弟を守るべく、前に出た俺との間に擬似超振動を起こし、俺を誘拐した。俺は王位継承権こそ、預言に詠まれていることもあって弟より低いが、それでも王族であること、ファブレ公爵家を継ぐ身であることに変わりはない。わかるだろうか?導師イオン。キムラスカの法に照らせば、その女がいかに大罪人であるか」
ダアトの法に照らしても大罪人だけどな。
ルークは朗らかに笑う。イオンは卒倒せんばかりに顔を蒼ざめさせ、座り込んだ。少し苛めすぎたかな、と苦笑する。
だが、ここまで言っても、ティアの方はまったくわかっていないらしい。ここまで己の罪を自覚しないでいられるとは。ある意味、感心する。見習いたくはないが。
あれは事故だと言ったでしょう!と猿轡を嵌められながらも、ティアは喚き続けている。
ジョゼットが目で抜刀の許可を求めてきたのに、ルークは首を振った。今すぐここで斬首してやりたいのは自分も同じだ。
けれど、アリエッタとの婚約に今だ反対する者たちを押さえつけるためにも、この女の譜歌の知識を利用したいのだ。
「アリエッタ。フレスベルグは何羽いるんだ?」
「…ルークが必要なら、いくらでも来てくれる、です」
「そうか。なら、卵を無事に運ぶのに力を貸してくれるよう、頼んでくれ。ここは人里に近い。何かあってからでは遅いからな。義母上殿、それでよろしいでしょうか?」
話の間、傍観に徹していたクイーンが了承するように一声吠え、ぎろりとミュウを睨んだ。今後、チーグルを見かけるようなことがあれば、遠慮なく切り裂く、と言い添える。
ミュウが震え上がりながらも、何度も何度もクイーンへと頭を下げた。
「ルーク」
「ん?」
「ママのこと、ありがとう」
嬉しそうに、アリエッタがはにかみ、頬を染めた。その愛らしい笑みに、ルークもまた、微笑を零す。
ティアに連れ去られて以来、荒んでいた心が癒されていくのがわかる。
「愛しいアリエッタのためだからな」
イオンが物問いたげに見ているのにルークは気づいていたが、振り返ることはしない。
イオンが求めるような答えなど、返すことなど出来ないとわかっていたから。
「ルーク様、問題が解決なされたのならば、長居は無用です。皆様、ルーク様のご無事なお姿を心待ちにしておられます。特に、アッシュ様が」
「怒ってる?アッシュ」
「……ご自分でお確かめ下さい」
「……帰るの、こえぇ」
ひく、と頬を引き攣らせ、ため息を零す。怒られるだろうとは思っているが、覚悟を決めておいた方がいいらしい。
参ったな、と引越しの準備を整えるクイーンを手伝うアリエッタを横目に項垂れる。
「これはこれは…」
今度は何だ、とルークは声の主へと目を向けた。長い茶色の髪を背に垂らした眼鏡の男に、眉を寄せる。青い軍服はマルクト兵士の証だ。
面倒そうだな、と吐息し、ハッとルークの顔色が変わった。男の背後から、金髪の青年が姿を見せたからだ。
「ガイ!」
「ルーク!よかった、無事だったんだな!」
軍服の男の横を抜け、駆け寄ってきたガイへと、ルークも駆け寄る。ガイラルディア・ガラン・ガルディオス。ルークの父、ファブレ公爵によってホド戦争時、姉とともに救助され、一時期、ファブレ邸に保護されていた、現ガルディオス伯爵である。
ルークの無二の親友でもあり、また、ガイの姉、マリィベルはアリエッタの養母でもある。アリエッタの血筋を理由に婚約の反対を訴える者たちを抑えるため、ガイたちは協力してくれているのだ。
アリエッタは今はガルディオス伯爵家の養女という立場にあり、いずれ、マリィベルが皇帝であるピオニーのもとへと嫁いだときには、王妃の養女ということになり、王族であるファブレ公爵家とも釣り合いが取れるようになる。
もうじき大々的に発表される予定ではあるものの、預言に反するため、ダアト対策として秘密裏に進めてきた和平の証にもなるとなれば、反対する者たちも口を噤むだろう。
(それでも、本当のところは下賎の出だとうるさい連中には…)
アリエッタがユリア・ジュエの傍系の出であることを、ルークは示すつもりだった。
そのために、ティア・グランツを殺さずに生かして捕らえたのだ。ティアがヴァンの妹だというのならば、それはフェンデの出であるということであり、ティアが歌う譜歌はユリアの譜歌ということになる。
その譜歌の知識を、アリエッタが手に入れ、使うことが出来れば、ユリア・ジュエの血を引く者として、血にこだわる連中を抑え込むことが出来るだろう。
「ガルディオス伯爵、彼らは…」
「ああ、報告が入っていただろう、カーティス大佐。誘拐されたルーク・フォン・ファブレがマルクトへと連れ去られた可能性があるってキムラスカから連絡が来たってやつ」
「ええ、ありましたね。丁重に保護するように、と皇帝直々の。…初めてお目に掛かります、ルーク様。私はマルクト軍第三師団師団長ジェイド・カーティスと申します。大佐の位を賜っている身です」
ジェイド・カーティスの名に覚えがあるルークは、ちらとジョゼットを見やった。ジョゼットは表情一つ動かさず、ティアを拘束し続けている。
内心では、ジェイドに対して恨み言の一つもあるのだろうが、さすが、とジョゼットの評価をルークは一つ上げた。
「…っつっても、保護いらなそうだなぁ」
「俺たちのだったらいらねぇよ。アリエッタの友だちに連れ帰ってもらうから。それより、そこの導師を保護しろよ。こんなとこ、一人でのこのこ来させるなよな」
「…それについては、面目ない」
「ええ、耳が痛いですね」
「いや、なぁ。アリエッタの実力を知ってるもんだから、まさか今の導師守護役があそこまで役立たずとは思わなかったつーか…」
こそっ、と耳打ちしてくるガイに、眉根を寄せる。エンゲーブですれ違った黒髪の少女が頭を過ぎる。神託の盾騎士団の軍服を着ていたが、あれがそうだったのだろうか。
なるほど、だとすれば、確かに役立たずだ。守るべき主を見失うくらいなのだから。
「アリエッタ」
「何ですか?」
「…導師守護役、戻りたいか?」
ジェイドによって苦言を呈され、さらに意気消沈した様子のイオンを一瞥し、ルークはアリエッタに問いかける。無能者が導師守護役についているなら、自分がイオンを守るため、返り咲きたいと思うだろうかと、そんな危惧を抱く。
アリエッタは今の導師イオンがレプリカであることを知っているけれど、それでも、もしまだ『イオン』に未練があるのなら。
アリエッタが緋色の目を見開き、イオンを一瞬、見やってから、くしゃりとまた顔を歪めた。
「…イヤです」
「アリエッタ…」
「アリエッタ、ルークの側、いたい」
だから、イヤ。
ぐす、と鼻を啜るアリエッタを抱き寄せ、よかった、と息を吐く。
俺だってアリエッタの側にいたいよ、と耳元で囁く。
「ずっと一緒だ、アリエッタ」
こくんと頷くアリエッタの額に口付けを落とし、ルークは微笑む。
アリエッタが迷いなく自分を選んでくれたことが、たまらなく嬉しい。
「さて、それじゃ、帰るか。ガイ、キムラスカで待ってるからな」
「ああ、なるべく早く着くよう、急ぐよ」
では、とルークは引越しの準備を終えたライガクイーンやガイたちへと優雅に別れを告げ、ティアを引き摺り、フレスベルグへと乗せたジョゼットに出発させると、アリエッタとともに別のフレスベルグへと乗り込み、キムラスカへと戻って行った。
END
アッシュ、出せませんでしたが、ブラコンです(笑)ルークもですが。
王位はアッシュとナタリアが継ぐことになってます。
預言に詠まれているので、ダアトに預言にしたがっていると思わせるためにも、そうしているのですが、ルークはアリエッタと結婚したいので、預言は嫌いだけど、これはちょうどいいやとばかりに思ってます。
将来的にはアッシュが王、ナタリアが王妃。ルークがファブレ公爵でアリエッタがその妻。
少しでも楽しんで頂けたなら幸いですー。