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月齢

女性向けブログ。ネタ語りや小説など。ルーク至上主義。

2025.04.21
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2008.08.10
ss

企画物も三本くらい進めてるんですが、どれもちょっと行き詰まり中で遅々として進まず(汗)
お待たせしてすみません。

今日は、「君が歩むは幸いの道」番外編。
ルークの治癒術修行風景と決意。
母と子の会話風景にもなってます。




ゆっくりと息を吐き出し、ルークは一度、目を閉じた。
スゥ、と開いた翡翠の目には、決意が宿っている。
ただ一つの想いが、ルークを突き動かしていた。
アリエッタ、彼女への想いが、ルークの活力だった。

「…癒しの力よ」

意識を集中し、第七音素を探る。瞳のフォンスロットから音素が流れ込んでくる。
手のひらが、ぼぅ、と熱くなる。

「ファーストエイド」

ルークは術の名を唱え、淡い光を放つ両手で、そぅと茎から落とされた薔薇の花を覆った。柔らかな光となって、第七音素が干からびた薔薇の花へと降り注ぐ。
色褪せた薔薇に瑞々しさが戻り、乾いた花弁にしっとりと潤いも戻る。

「そこまで」

ルークの横に立ち、術の行方を見守っていたシュザンヌの言葉に、ふ、と力を抜き、ルークは深く息を吐いた。
両腕をだらりと椅子に腰掛けた身体の両脇に落とし、呼吸を整えながら、薔薇を見やる。
たった今、切り落としたばかりのように見える薔薇に、ルークは疲労を滲ませながらも、嬉しそうに微笑んだ。

「ふふ、頑張りましたね、ルーク」
「母上、ありがとうございます!」

穏やかに微笑む母に、礼を言う。あらあら、とシュザンヌが笑い、褒めるようにルークの頭を撫でた。
照れくさそうにはにかみながらも、その優しい手を受ける。
体温の低いシュザンヌの手はひんやりとしていて、心地よかった。

「もうファーストエイドは完璧ね」
「母上の教えのおかげです」
「あら、それだけではないでしょう?」

ぱちんっ、と悪戯めいた笑みを浮かべ、ウインクをするシュザンヌに、ルークは呻く。
顔が熱くなるのを止められない。母にはすべてお見通しらしい。
そんなに自分はわかりやすいのだろうかと、ルークは赤い顔を俯かせる。
ころころとシュザンヌが鈴の音のように軽やかに笑った。

「お前に大切なものが出来たことを、母は嬉しく思っているのですよ、ルーク」
「母上…」

腰を屈め、きゅ、とルークの両手を握るシュザンヌを、翡翠の目を瞬かせ、見つめる。
シュザンヌもまたルークとよく似た翡翠の目を細め、肌の白い頬に笑みを刻んだ。

「お前が選んだ道は、とても険しい道になるでしょう。今のあの子には、後ろ盾も何もありませんから」
「…わかっています。でも、俺はアリエッタがいい。アリエッタじゃないと、嫌なんです。そのためなら、俺は俺がレプリカであることだって利用する」

アッシュがキムラスカへと戻り、ナタリアと結婚し王となったとき、ルークは跡継ぎのいないファブレ公爵家を継ぐことになっている。
その際、レプリカであることは公表せず、預言によって来たる日まで生誕を隠すよう言われたため、存在を隠されてきた双子の弟として公表されることになっている。今、現在では、だが。

「またとないチャンスと、数多の婚姻が持ち込まれるでしょうね。でも、俺がレプリカであることが知られれば、誰もが二の足を踏むはずだ。アリエッタにも…つらい思いをさせることになるけど」

レプリカの公爵など認めぬ、というものも現れるはずだ。そのとき、アリエッタにも、実力も見ず、本人にはどうしようもならない生まれだというのに、侮る者たちとともに戦ってもらうことになるだろう。
どろどろとした貴族社会に、アリエッタを巻き込みたくはない。けれど、ともに生きたいと、ともに歩みたいと願う気持ちが、止められない。

「まあ、アリエッタに断られたら、それまでですけど」

苦笑し、頬を掻く。
アリエッタが今でも亡くなった導師イオンを想っていることに、ルークは気づいていた。誰よりもアリエッタを見つめているうちに、気づいてしまったのだ。
時折、アリエッタが悲しげに空を仰ぎ、小さく、本当に小さく、イオン様、と呟く声も、聞いてしまった。
きゅ、と唇を引き結び、目を伏せる。ルークの両手を包んだシュザンヌの手に、優しく力が篭った。

「確かに、アリエッタにとって、導師イオンは唯一無二の存在だったわ」
「……」
「でもね、ルーク。お前もまた、あの子にとって、唯一無二の存在です。忘れてはダメよ?」

自分の存在をどうか軽んじないで欲しい。
そう哀しげに眉根を寄せるシュザンヌに、ハッと顔を上げる。憂いを湛えた翡翠の目に、ルークは息を飲み、こくりと頷いた。
シュザンヌの瞳は、アリエッタにとってだけではなく、自分たちにとってもまた、ルークが唯一無二の存在であることを、伝えてきていた。

(俺は、幸せだ)
幸せすぎて、泣いてしまいそうになる。
この幸せを失いたくなかった。そして、被験者であるまだ会ったことのないアッシュにも、幸せであって欲しいと願う。
大切な人たちの誰もが幸せならいいのに、とそう思う。

(だから、俺は自分の出来る精一杯のことを、したい)
守る力を自分は持たない。けれど、せめて、癒す力を持ちたい。
守るために傷ついた人たちを、癒す力を持ちたい。
守られる者として、せめて、とルークは強く望む。

「母上、治癒術だけじゃなく、補助系の術も覚えたいです」
「ふふ、そういうと思って、本を用意しておきましたよ。教師も手配済みです」
「ありがとうございます」

バリアーやシャープネスなども会得することが出来れば、後衛からでも役に立てるはずだ。
ルークは翡翠の両眼を輝かせ、よし、と拳を握った。


END


将来的には、回復補助系のエキスパートなルークもいいかな、と。

 

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