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月齢

女性向けブログ。ネタ語りや小説など。ルーク至上主義。

2025.04.21
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2008.06.02
ss

昨日の雑記で更新速度がとか言った側からであれなんですが…(笑)
ssは、原稿の合間…というか、話が詰まったときに書いてるので、ssの更新がしばらく続くかもです。
灰の騎士の方は、ミシェルとアリエッタの会話に微妙に煮詰まってるっていうのもあるので、遅くなるかも…。もしかしたら、先に別のリクをアップすることもあるかもしれないです。
流れは決めてても、会話の細かいところまでは決めてないので(汗)

えーと、それでssですが、アシュルクです。ED後。
一応、二人揃って帰ってきて、タタル渓谷飛ばしてキムラスカ入りしてる感じです。キムラスカ王城前に第七音素が観測され、そこにアッシュとルークが現れました。(前置き)
なので、マルクト側とダアト側はいません。キムラスカ側だけ。
ナタリア断罪入ってますので、ご注意を。

注!ナタリア厳しめ





トン、と背を押され、アッシュは前方に立つナタリアや両親へと二、三歩よろけてから、慌てて振り返った。にこ、と微笑むルークの顔。ルーク。小さくアッシュの唇がルークの名の形に動く。

「幸せになってよ、アッシュ。そこで、さ。そこがアッシュの居場所でしょ?」
「何、言ってんだ、お前」

まるで、自分は違うような言い方。そこは俺の居場所じゃないよ、と言わんばかりのルークの笑み。突き放したような、笑み。
ぞわりと肌が粟立つ。そんな顔、見たくない。そんな一人っきりの笑顔なんて、見たく、ない。

「ルークの言うとおりですわ、アッシュ。だって、貴方は本物のルークなんですもの。お帰りなさいませ…!」

感極まったように、ナタリアが若草色の目を潤ませ、手を伸ばしてくる。抱きしめてくださいな、と強請るように。アッシュはそんなナタリアを一瞥することもなく、ただルークを見つめた。
クリムゾンとシュザンヌもまた、アッシュの隣に立ち、ルークを見つめた。ルークが困ったように首を傾ぐ。

「ナタリアが呼んでるよ、アッシュ」
「俺は」
「感動の再会、でしょ?抱きしめてあげなきゃ」

にこにこ笑うルークの目は、空虚だった。笑顔の仮面の奥に、果てしない虚無を隠す、傷ついた子ども。心が砕けてしまった子ども。
アッシュは、ぐ、と拳を握り、唇を引き結ぶ。誰がルークを追い詰めた。答えなんてわかりきってる。みんな、だ。俺を含めた世界すべてが、こいつを追い詰め──壊した。

「どうしたら、いい」

きょとん、とルークの翠の目が瞬く。不思議そうなその顔は、あどけない。
当然だ。こいつはまだ七年しか生きていないのだから。七歳の子どもを、寄って集って、俺たちは追い詰めて殺したのだ。罪深いなんてものじゃない。贖いの術すら、この浅はかな頭には浮かばない。どうしたらいい。

「どうしたら、お前は俺の側にいてくれるんだ。俺はお前を愛してる、のに」

ナタリアが背後で小さく悲鳴を上げる。動き出す気配もした。それでも、アッシュは振り向かない。ナタリアはあっさりとクリムゾンが視線で合図を送ったジョゼットによって押さえ込まれた。離しなさい!と喚く声。なんて疎ましい。ルークの声が聞こえなくなるじゃないか。

「黙れ、ナタリア」

目障りだ。
ひゅっ、とナタリアが息を呑み、怒声を上げる。王女らしからぬ下卑た声で、ナタリアはルークを罵った。
私からルークを奪うなんて!偽者のくせに!俺とルークの違いに、気づきもしなかったくせに。
アッシュは思わず、腰に提げた剣の柄に手を掛ける。が、その剣を抜く前に、ナタリアはジョゼットによって口を塞がれた。紛れもない罪人の扱いに、ナタリアが暴れ、ルークが戸惑うように視線を揺らす。

「アッシュ?ナタリアが…」
「お前を偽者扱いする女なんて、どうでもいい」
「でも…」
「これが当然なのだ、ルーク」

クリムゾンがゆっくりと口を開き、ナタリアを一瞥した。ナタリアが咎めるように、クリムゾンを睨む。
王に向かって、なんて態度を、とジョゼットがナタリアの頬を張った。

「ナタリアが今まで見逃されてきたのは、前国王が支持率の低下を回復させるため、ナタリアを英雄と宣伝し、王家の血を継がぬことも、王命に逆らい、王の名代であったお前にも逆らい、自国に背を向け、アクゼリュスへと向かったことも隠し続けてきたからだ。だが、インゴベルトが崩御し、私が王となった今、ナタリアの後ろ盾はなくなった。ナタリアの所業も公表した。その結果は見てのとおりだ」

サッ、と手を凪ぎ、ルークとアッシュの二人を迎えようと集った周囲の貴族や軍人たちを示すクリムゾンに、ナタリアが慌てて、彼らを見回す。ナタリアへと向けられるのは、失望の目だった。誰一人、同情や哀れみの目すら向けてはいない。
多くの者が、裏切られた失望を、ナタリアへと向けていた。猿轡を嵌められたナタリアが、くぐもった叫び声をあげる。どうして、と縋りつくような目が、アッシュに、クリムゾンに、シュザンヌに向けられた。
ス、とナタリアの前にシュザンヌが立ち、にこりと艶やかに微笑した。

「それでもね、ナタリア。貴女に私たちは最後のチャンスをあげたのですよ。ローレライのもとからアッシュとルークが帰ってきたとき、貴女がルークも快く迎えるならば、王女のまま、降嫁する用意も整えてあげていたのですから。ですが…」
「ナタリア、お前にとって、やはりルークは偽者でしかないのだな。お前こそが偽姫であるというのに」

厳しくも優しい叔父と叔母。そう思っていたナタリアの顔から血の気が引き、がくがくと膝が笑っている。クリムゾン新国王はため息を一つ零し、ジョゼットに連れて行くよう、命じた。こくりと頷いたジョゼットが、部下に命じ、すっかりおとなしくなったナタリアを連行させた。
バチカル王城前の広場に、再び、沈黙が落ちる。朱色の髪をゆったりと靡かせたルークが、ぼんやりとナタリアを見送っていた。

「教えてくれ、ルーク。どうしたら、俺はお前の側にいられるんだ」

アッシュはルークへと一歩、踏み出した。ルークの目がアッシュへと戻り、伏せられる。アッシュが踏み出した分、ルークが後ずさった。

「俺はここにはいられないんだよ、アッシュ。今、ここにいる俺は、幻でしかないんだ」

知ってるだろ、とでも言うように、ルークの身体が明滅し、透けた笑顔の向こうに空が見えた。青い青いバチカルの空。ルークがレプリカたちとともに勝ち得た空。ルークはあの空へと、還っていくのだ。──俺を、置いて。

「どうして…どうして、俺だけを地上に戻すことを選ぶんだ、お前は…ッ」
「俺が見たもの、見られなかったものを、アッシュには見て欲しいから。アッシュには、生きて欲しいから。犠牲にされ続けてきた分も、生きて欲しいんだ」

それは、お前も一緒じゃないか。アッシュは叫ぶ。ルークはゆるゆると首を振り、果敢無く笑った。
少しずつ、ルークの輪郭がぼやけていく。どんどんルークの朱色の髪が色をなくし、透明になっていく。透けていく。ルークが、消えていく。

「っ、ルー…!」

トン、とアッシュは再び、背を押された。二人分の両手に、優しく、強く、ルークの方へと。

「アッシュ・フォン・ファブレ。クリムゾン・ヘアツォーク・キムラスカ・ランバルディアの名において、ファブレ公爵家を継ぐ身でありながら、ダアトへと亡命した罪により、お前を、キムラスカより追放する」
「お行きなさい。貴方の幸せのある場所へ」

父母に促されるまま、アッシュは呆然と目を瞠るルークへと走った。そのままの勢いで、ルークを抱きしめる。透ける身体は、それでもまだ形を保っていた。肩口に顔を埋め、ルークの匂いを肺一杯に吸い込む。ふんわりと温かな太陽の匂いだ。

(俺の幸せの匂いだ)
ルークとともにあることが、俺の幸せだ。

「あ、ッシュ。父上、母上」
「ルーク、世界を救ってくれた礼と…そして、お前への償いになればいいのだが」
「一緒に幸せにおなりなさい」

愛しい愛しい子どもたち。
クリムゾンとシュザンヌは、二人寄り添い、アッシュとルークへと手を振った。さよなら、と皺の寄った目尻に涙を滲ませて。
周囲の貴族や軍人たち、ぽつぽつと姿を見せた民たちも、戸惑いを浮かべながらも、二人に向かって膝をつき、頭を下げる。
アッシュはルークを強く強く抱きしめたまま、両親に、民に頷いた。

「キムラスカに俺の居場所はなくなったぞ。…連れて行ってくれるか、ルーク」

虚無を映していた翠の目に、じわりと涙の膜が張る。よかった。ルークの心は、まだ残っている。まだここにある。抱きしめて、やれる。
アッシュは靡く己の紅い髪が、ルークの髪とともに透けていく様を見やり、笑みに細めた目を閉じた。腕の中の確かなぬくもりを感じながら。


END

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