月齢
女性向けブログ。ネタ語りや小説など。ルーク至上主義。
2008.06.18
5万HIT感謝企画
先にこちらを…。
夜虹さまリク「TOI×TOAクロスオーバーネタ」。
「TOIメンバーが同行者を袋叩き」で、メンバーはお任せとのことだったので、アニス以外叩いてみました。が、袋叩きというには甘くなってしまったような(汗)
ガイがルークに絆されていないので、ちょっと嫌な感じになってますのでご注意を。
ネタ語りでも書きましたが、TOIはリカルカ前提ですー。
思いっきり、TOIのネタバレしてます。
注!同行者厳しめ
先にこちらを…。
夜虹さまリク「TOI×TOAクロスオーバーネタ」。
「TOIメンバーが同行者を袋叩き」で、メンバーはお任せとのことだったので、アニス以外叩いてみました。が、袋叩きというには甘くなってしまったような(汗)
ガイがルークに絆されていないので、ちょっと嫌な感じになってますのでご注意を。
ネタ語りでも書きましたが、TOIはリカルカ前提ですー。
思いっきり、TOIのネタバレしてます。
注!同行者厳しめ
ルカは信じられないと顔を歪めながら、ルークを抱き締めた。もっと背が高ければ、せめてスパーダくらいあればよかったのに、と歯噛みする。
そうすれば、ルークをもっとしっかりと覆い隠してやれただろうに。安心、させてやれただろうに。
ミュウもまた、ルークを庇うように、ルークの足にしがみ付いている。
「ルカ、貴方が優しいのはわかるけど、ルークにそんな価値はないわ」
ビクリ、と腕の中でルークが震える。ギリ、と唇を噛み、ルカはティアを睨んだ。女性に手を上げたくなったのは、これで三度目──マティウスやチトセと戦ったとき以来だ。
だが、あの二人に覚えた怒りと、ティアに覚える怒りは、別物だった。マティウスやチトセ、二人に対して抱いたのは哀しみを含んだ怒りだった。
同じアスラの転生者だった、マティウス。アスラを愛し、マティウスの後を追った、チトセ。二人を助けられたらと、そう思ってもいたから、ルカは哀しみを覚えずにはいられなかった。
けれど、今、ルカがティアに覚えるのは憎悪にも似た怒りだった。価値がないのは、ティアの方だと、ルカは眉間に皺を刻む。
「価値?可笑しなことを言わないで欲しいな。どうして君にそんなことが言えるの」
「何を言うの!ルークはアクゼリュスを落としたのよ?!」
「ええ、ティアの言うとおりです。まったく、どうして相談の一つもしてくれなかったのか」
「…失望したよ」
ティアに賛同するジェイドとガイに、ルークが呻くのが聞こえた。暴力は何も肉体だけに振るわれるものではない。言葉もまた暴力となり、心を傷つける。どうしてそれがわからない。幼いチーグルの子どもでさえ、その暴力に怯え、憤りを隠せないというのに、平気で彼らはナイフのように鋭く、棘のようにじくじく痛む言葉を口にする。
自分たちの愚かさを棚に上げ、自分たちの罪から目を逸らしたいあまりに、ルークを罪人として仕立て上げようとする三人に、ルカは翠の目を怒りに煌かせた。今、アスラの力が使えたならば、覚醒して秘奥義を食らわせているところだ。
見れば、ナタリアも無言ではいるものの、失望の眼差しをルークへと向けている。自分の方が『約束を交わしたルーク』に失望されているとは考えもしていないに違いない。
ガイも使用人ならば、主人を守るべきだというのに、己の立場を理解しているのだろうか。いや、していまい。ルークの優しさに漬け込み、公爵の許可もなく、勝手に親善大使一行について来た愚か者は、キムラスカに自分の居場所がもうないことなど、一欠けらも理解していないのだ。それとも、キムラスカに居場所など欲しくもないと言い出すのだろうか、この『ホドの生き残り』は。マルクトにこそ自分の居場所はあるのだと、ガルディオス伯爵家こそが自分の居場所だとでも思っているのだろうか。
馬鹿馬鹿しいとルカは心のうちで唾棄する。そんなものは当の昔に失われている。ガイが公爵家復興よりも、復讐という私情を優先した瞬間に。
アニスとイリアが顔色を失っている導師イオンを支え、ジェイドたちに三人で口を挟もうとしているが、ティアに「イオン様はアニスとイリアと一緒にお下がり下さい。あんな人のこと、庇う必要なんてないんですから。二人もイオン様を中へ連れて行ったらどうなの」と頭ごなしに『命令』された。
己こそが正しいと疑いもしないティアに目を吊り上げたイリアの手が、ティアの頬をパァンと張った。
「何するのよ…!」
「黙りなさいよ、瘴気の海に沈めるわよ。あんたに命令される筋合いなんてないっての。大体、あんたさぁ、何であたしとアニスにタメ口効いてるわけ?わかってる?私たちの方があんたより軍位、上なのよ?今まで、わざわざ言うのも面倒だし、ジェイドには敬語使ってるから、そのうちわかるかしらね、ってアニスと黙ってたけど、もうダメ。耐えらんない。何様のつもりよ、あんた。軍人だなんて名乗るんじゃないわよ。あんたみたいな役立たずのせいで、あたしたちまで無能だって思われたら、泣くに泣けないわ」
「っ、わ、私は軍人よ!あなたこそ、いきなり失礼じゃない!」
「だーかーら、言ってるでしょうが。階級制度くらい理解しなさいよ。ホンット、あったま悪い女ねー。軍は縦社会なのよ?それすら理解出来ないんだから、そりゃルークに対しても不敬を尽くすわけよね。あーあ、付き合いきれないわ。導師イオン、この女の捕縛許可をもらえません?」
「ええ、好きにしてください、イリア」
「にっしっし。そうこないと!」
「なっ、導師イオン、どうして…!」
ティアの抗議の声に、イオンがス、と目を逸らし、アニスがティアを睨みつけながら、イオンを背に庇う。イオンの視界に入らせることすらしたくないと言わんばかりに。その間にイリアは手際よくどこからか縄を取り出し、あっという間にティアに抵抗する間も与えず、捕縛した。
鮮やかな手並みにルカが拍手を送れば、当然、と満面の笑みが返ってきた。すっきりとしたいい笑顔に苦笑する。
ナタリアがイオンへと抗議に詰め寄ろうとしたが、導師守護役二人によって阻まれた。無礼者!と叫ばれても、二人が退くことはない。その必要もなかった。自ら王女として扱うなと言った『一般人』を導師に近づけないのは、当然の職務なのだから。
ジェイドが眼鏡のブリッジを押し上げ、皮肉に口の端を吊り上げながら、ルカが抱くルークを指差した。
「もっと捕縛すべき人間がいると思いますがねぇ。アクゼリュス崩落の罪で捕縛させて頂きましょう。協力してくださいますか、ガイ」
「ああ、そうだな。ルカ。ジェイドの言うとおりだ。残念だけど、ルークをどこかの部屋で監視しないと」
「馬鹿言ってんじゃねぇよ」
「ああ、まったくだ。聞くに堪えん」
ス、と自分とルークを庇うように前に立ったスパーダとリカルドに、ルカはホッと息を吐く。ルカの安堵の吐息を聞きつけたように、ルークも僅かに強張った身体から力を抜いた。
ぽんぽんとルークの背を安心させるために撫でてやりながら、ルカは二人に視線を送る。二人がこくりと頷いた。
「ここは俺とおっさんに任せて、お前はルークを中に連れてけ、ルカ」
「タトリン、アニーミ。お前たちも導師と中へ。こんな瘴気が漂う中に身体の弱い導師をいつまでも置いておくわけにもいくまい」
「おやおや、ずいぶんとお優しいですねぇ。ですが、わかっているんですか、スパーダ。ルークはマルクトの領地を崩落させた罪人ですよ?」
「ああん?馬鹿言ってんじゃねぇって言ってんだろうが。俺には扉を開けられず、焦ってるヴァンしか見えなかったぜ。俺より後ろにいたてめぇはもっと何も見えなかったはずだよなぁ。言ってみろよ。てめぇに何が見えたってんだ。見たいもんしか見ねぇ、聞きたいもんしか聞かねぇ、馬鹿野郎が。どこぞのフリフリピンクといい勝負だぜ」
「やめとけ、ベルフォルマ。言っても無駄だ。自分たちの都合のいいように記憶を捏造しているようだからな。何を言わせたところで、こちらが不快になるだけだ。理解できん発言を聞くのは、ハスタで懲りただろう」
「それもそうだな。じゃあ、こうしようぜ。ジェイド、お前、今後一切、俺の許可なく口を開くな」
「何を…」
「聞こえなかったのかよ。俺は口を開くなっつってんだ。てめぇはピオニー陛下の名代であるこの俺に逆らうってのか?別に構わねぇぜ。その首、不敬罪で落としてやるだけだからな」
剣の柄に手を当て、にやりと口角を吊り上げ笑うスパーダから発されるのは、怒りのそれ。リカルドも片頬を吊り上げ、笑みを作ってはいるものの、他を圧倒するほどの怒気を発している。これほどリカルドが怒っているのを見るのは、オズバルドがガードルの死を辱めたとき以来だなぁ、とルカはここまでリカルドを怒らせたジェイドやガイにある意味、感心し、イオンを支えるアニスとともに、ミュウを抱かせたルークを連れ、タルタロスへと入っていった。
ナタリアが何事か喚いていたが、あいにく、雑音を聞く耳は持ち合わせていない。ナタリアが入ってくる前に、扉をバタリと閉じる。
「…俺、本当に、何も」
「わかってるよ、ルーク。僕は、僕たちは知ってる」
掠れた声で呟くルークの手を握り、にこりと笑む。ルークを守ることが出来てよかった。
イリアやアニス、イオンもまた、ルークの側へと近寄り、ルカの手の上からルークの手を握った。ミュウもぎゅう、とルークの腹に短い腕で抱きついている。
「君を救えてよかった」
「…ルカ」
「本当に、よかった」
この手を握り続けていられて、よかった。
泣きそうになりながら、ルカは笑う。アクゼリュスの預言が成就されれば、ルークは死んでしまっていただろう。
けれど、死なせたくなかった。救いたかった。この手を離さずにすんでよかった。
(僕は一度、自分から手を離そうとしてしまったけれど)
イナンナに裏切られていたと知ったとき。
天上を滅ぼしたのがアスラだったと知ったとき。
憧れて、焦がれてやまないアスラの転生者が自分であったことが嬉しくて、自分とアスラを同一視していた僕は、それを知ったとき、耳を塞ぎ、目を塞ぎ──みんなとの絆を忘れた。
けれど、みんなは笑って僕を受け入れてくれた。手を離さずにいてくれた。僕との絆を信じてくれていた。
だから、今度はルークとの絆を僕が守りたいと、ルカは思ってここまで来た。
「何、泣きそうになってんのよ、おたんこルカ」
「うう、だって」
前髪を引っ張りながら、ぐす、と鼻を啜れば、イリアが呆れたように嘆息しながらも、仕方ないわねと苦笑し、ルークに目を合わせ、微笑んだ。
「でも、本当、無事でよかったわ、ルーク」
「うん、何事もなくてよかったよぉ」
「ご主人さまが無事で、ミュウも嬉しいですの!」
「みんなの言うとおりです。貴方に何かあったら、僕は…」
「そういうイオンだって無事でよかったよ。…でもさ、何でアクゼリュスについて来たんだ?ずっと訊こうって思ってたんだけど」
談話室に入り、アニスがお茶を淹れてくれるのを待ちながら、話を交わしていれば、ルークが首を傾いだ。ちら、とルカはイリアと視線を交わせるイオンを見やる。
イオンが、ふ、と吐息した。
「ダアトの…いえ、世界の根幹に関わることなので黙っていたのですが…。アクゼリュスがああなってしまった今、話すべきなのでしょうね」
きゅ、と拳を握り、緊張に顔を強張らせるルークの肩に、そっと手を置く。翠の目が動き、ルカを映し、ルークがこくん、と頷いた。大丈夫だと言うように。
「アニス、あなたは…」
「私も、差支えがないなら、聞きたいです」
「アニス…」
「イリアやアンジュに比べたら、私まだまだですけど、でも、イオン様を守りたいって気持ちなら、イオン様を支えたい気持ちなら、負けません」
「だってさ。いいんじゃないの?アニスの決意は本物だもん」
ねぇ?とイリアから送られたウインクに、アニスが決意を込めて深く頷く。わかりました、とイオンが苦笑し、アニスがホッと息を吐いて、ルカたちの前にお茶を置いた。
ふわりと漂う紅茶の香りに、心身の疲労が解れていくのがわかる。
「僕がルークたちに無理矢理にでもついて行ったのは、モースの目を欺くためです。パッセージリングの調査をするという本来の目的から、目を逸らさせるために、和平を理由にして」
「パッセージ、リング?」
「ええ。ヴァンが僕にセフィロトの入り口を開けさせようとしていたでしょう?あの扉の奥にそれがあったんです。大地を支える柱とも言うべきものが」
イオンは淡々と語った。今いる大地はパッセージリングによって支えられた、本来の大地の表皮のようなものであること。パッセージリングを調べようとしていたのは、アクゼリュスで瘴気が噴き出した原因が、パッセージリングの耐久年数が限界に至ったからではないかと思ったからということ。
けれど、ヴァンが何をするかわからなかったため、結局、扉を開けられぬまま──中でリングが限界を迎え、アクゼリュスが崩落してしまったということ。
アニスやルークにわかるよう、噛み砕いて語るイオンの声を聞きながら、ルカは紅茶を啜った。
世界というものは、どこであっても不可思議なものなのかもしれない。ふと、そんなことを思う。ルカは、生まれ育った世界を思い出す。天上と地上。転生者として覚醒するまで、世界が二つに分かれていたなんて、知らずに生きていた、自分。あのころは、世界が不完全なものだったなんて、思いもしなかった。
この世界も似たようなものだ。外郭大地として打ち上げられた大地と、瘴気に侵された本来の大地。二つに分かれてしまったが故に、今、亀裂が生まれている。
このままでは、大地はいずれ崩れ去る。アクゼリュスのように崩落していく。
そして、それを防ぐため、自分たちをオールドラントへと連れて来たローレライが見せたように、世界はルークとアッシュを犠牲にしようとするだろう。
(そんなのは、ダメだ)
創世力を使ったとき、隣で感じた、リカルドの存在。背後で見守ってくれていた、みんなの存在。
献身と信頼の証を立て、愛する者を犠牲にするのではなく、振るった力。
この世界でだって、可能なはずだ。誰かが犠牲にならずとも、成り立つ平和や幸せがあるはずだ。
「そのパッセージリングとかいうやつって、他にもあるんだよな」
「ええ。世界を支えている柱ですからね。…おそらく、他のリングもまた、限界が近いはずです」
「な…、ど、どうすりゃいいんだよ?!」
顔を青ざめさせるルークの手を、ルカは握った。同じように顔から血の気が引いているアニスの手もまた、イリアに握られている。
大丈夫だと、ルカはイリアとともに、二人に請け負った。
「いいかい、ルーク。僕たちは一人じゃない。僕たちには、掛け替えのない絆がある」
「その絆が、あたしたちに力をくれるわ」
「大丈夫。世界は終わらない」
「そうよ。諦めない限りね」
「そう、二人の言うとおりです。だから、一緒に頑張ってくれますか?ルーク、アニス」
にこりと微笑むイオンに、ルークとアニスが揃って頷く。自分たちに何が出来るかわからないけれど、出来ることがあるのなら、何でもやり遂げてみせる、と。
ルカは、いい子だね、とルークの頭をくしゃりと撫でた。ガキ扱いするなよ、と頬を膨らませながらも、払い除けることをしないルークに、笑みを深める。
死なせたりなんて、絶対にしない。
(君も、君が生きる世界も、君が結んだ絆も、守ってみせる)
僕もまた一人ではないから、きっとそれが出来るはず。
もうすぐユリアシティに着くと、知らせに来たリカルドに頷き、小さな微笑を向ける。
僅かに切れ長の目を見開き、リカルドも同じように微笑をくれた。
穏やかに、しばし視線を交わす。それだけで、心が温まり、力が湧いてくるような気がした。
「アンジュとエルマーナがユリアシティで待ってるはずだ。ユリアシティで外郭大地を救う術が何かないか書物を探してみるって連絡が来ていたから」
「セレーナのことだ。何かしら見つけているだろう」
「エルはまたヨダレ垂らして寝てるかもだけどね。前に誰かさんと一緒に寝こけてたみたいに」
にたにたと意地悪く笑うイリアと、ふん、と鼻を鳴らし、顔を逸らすリカルドに、ルカは苦笑する。どこの世界にいても、それこそ、今のような瘴気の海の上にあっても、イリアもリカルドも変わらない。それは、スパーダやアンジュ、エルマーナにも言えることだ。
(僕もそうだ)
もう迷わない。迷うことはない。ルカ・ミルダ、それが自分だと知っている。
みんなと掛け替えのない絆を結んだルカ・ミルダは、自分だ。
「ルーク」
「ん?」
「君はきっとこれから先、いろいろなことで迷うこともあると思う」
じ、と翠の瞳と目を合わせ、ルカは言葉を綴る。思いを綴っていく。
幼いころからずっと側で見守ってきたルークへと、真摯な思いを告げていく。
ルークもまた、そんなルカに応えるように、目をしっかりと合わせてきた。
「でも、忘れないで欲しいんだ。君には絆があるということを。君だけの絆があるということを」
「俺だけの、絆?」
「そう。君が君だからこそ、築いてきた絆だ」
口の中で、絆、とルークが反芻する。噛み締めるように、飲み込むように、自身のものとするように。
朱色の長い睫を一、二度、ゆっくりと瞬かせ、ルークがルカたちを見回し、はにかんだ。
「…ありがとな」
俺、頑張るから。
小さく照れくさそうに呟いたルークに、ルカは目尻に涙を滲ませ、決意新たに拳を握った。
END
アンジュやエルを登場させられなかったのがちょっと悔しい…。
夜虹さんのご期待に応えられていればいいのですが。少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。
リクエスト、ありがとうございました!
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