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月齢

女性向けブログ。ネタ語りや小説など。ルーク至上主義。

2025.04.21
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2008.06.14
ss

ファブレ家捏造でルクノエ。
クリムゾンが常識人というか、息子を愛していることをちゃんと表現する人です。
ルークがレプリカであることも知ってます。それでもアッシュと同様愛してる、パパ。
ヴァンにのみ厳しいです。





視察のため、シェリダンにともに訪れた息子が、きょろきょろと物珍しげに周囲を見回している様子に、クリムゾンは苦笑した。初めての遠出に高ぶっているのだろう。
余所見をしていたら、転ぶぞと窘めれば、慌てて、ルークは居住まいを正した。いい子だと頭を撫でる。ルークが嬉しそうに顔を綻ばせた。

「父上、シェリダンでは今は何を作ってるんですか?」
「ふむ…。口で言うよりも、実際に見た方がいいだろう。イエモン、すまないが案内してもらえるか?」
「もちろんですじゃ」

さぁ、どうぞと促されるままに、期待に胸を膨らませるルークの頬は、初めての視察の緊張もあり、蒸気している。貴族であろうと頑張りながらも、子どもらしい興味を捨てきれないルークに、クリムゾンは穏やかに笑んだ。

五年前、誘拐され、記憶も何もかも失ってしまった我が子と、クリムゾンはシュザンヌとともにまた親子になればいいんだと話し合い、記憶を失う前と同じく、ルークを慈しんできた。
そのうち、記憶がないというだけでは説明出来ない、切った髪が音素に溶けてしまうといったような事象にぶつかり、ベルケンドで秘密裏に詳しい調査をし、帰って来たルークがレプリカだと判明してからも、二人がルークに注ぐ愛情は変わらなかった。
けれど、本物のルークもまた心配であったため、二人はルークの第一発見者であったヴァン・グランツを疑い、徹底的に調べ上げた。結果、ルークがアッシュと名乗り、ダアトで神託の盾騎士団に所属していることがわかった。
数人をダアトに送りこみ、クリムゾンはアッシュと接触し、息子がヴァンによって洗脳されていることを知るや否や、ヴァンを監禁し、拷問に掛け、秘預言や計画の全貌を聞き出した。
ヴァンの遺体はイニスタ湿原に放置し、偽の遺書をダアトの私室に残したため、ヴァンは自殺したものとして扱われた。

ヴァンの代わりに神託の盾騎士団総長となったのは、クリムゾンの息が掛かった男で、アッシュは日々、着々と回復に向かっていると報告が入っている。
本当ならばキムラスカに連れ帰りたかったが、預言を妄信するモースやヴァンの部下たちを欺くためには、やむを得なかった。また、本来の『聖なる焔の光』であるアッシュを、『鉱山の街』とともに消滅する預言から遠ざけておくためにも、インゴベルトが預言を妄信している今、キムラスカに近づけるのは得策ではないと判断し、クリムゾンはアッシュをダアトに留めた。

「うっわぁ…!」

案内された研究室で、ルークが感嘆の声を上げた。クリムゾンも声こそ出さなかったものの、吐息を漏らす。
誇らしげにイエモンたちが胸を張り、あれこれと説明を始めた。

「これは、アルビオール。飛行譜業ですじゃ。まだ骨組みが出来上がったところですがの」
「本当にこんな鉄の塊が空を飛ぶのか…」
「ええ。今のところ、創世暦時代の遺産に頼らざるを得ないのが、悔しいところですがなぁ」
「ふふ、お前らしい」

必ず、同じ、いやそれ以上のものを自分たちの手で一から作り出してやる、と意気込むイエモンたちに、クリムゾンも頼もしげに微笑み、頷く。
今日のキムラスカの譜業によって得られた発展は、彼ら、技術者たちの努力があればこそだ。それを忘れてはならないと息子にも伝える。
ルークが神妙な顔で頷き、アルビオールをじ、と見つめた。
いずれ、アッシュが戻ってきて、ナタリアとともに玉座についたとき、ファブレ公爵家当主として、右腕となり、支えていけるようにと努力を怠らないルークを、クリムゾンは誇りに思っていた。
折りを見て、会いに行っているアッシュも、ヴァンによって植えつけられたレプリカへの偏見を薄め、それ以上に俺も頑張らないと、と腕を磨き、騎士団員としての生活の傍ら王となるための勉学に励んでいる。
二人の賢い息子を持てたことにだけは、ヴァンに感謝してやってもいいとクリムゾンは内心、酷薄な笑みを零した。

「こっちの小さいのは?」

ひょい、と作業机の端に置かれていたアルビオールをそのまま小さくしたような模型を手に取り、眺め回すルークの背後から、クリムゾンもそれを覗いた。よく出来た模型だった。

「どういった形にすれば一番、効率よく飛べるか、といったようなことを調べるために作ったものでしてな。孫娘が気に入ってプレゼントにやりまして」
「へー…」

口にこそ出さなかったが、ルークの翠の目が、明らかに言っていた。欲しい、と。
が、我が侭を言っては、と自粛したらしく、そっと机に模型を戻した。それでも、目が離れない。口に手を当て、クリムゾンは零れる笑みを隠した。肩が小刻みに震えてしまうのまでは止められなかったが。

「よかったら、お持ち帰り下さい、ルーク様」

にこりと穏やかな笑みを浮かべた少女が、イエモンの側へと寄ってくる。件の孫娘なのだろう。
でも、と躊躇うルークに、少女が笑みを深め、ルークが置いた模型を手に取り、ルークへと差し出した

「大切にしてあげてくださいね」
「っ、も、もちろん!その…ありがとう」
「どういたしまして」

肩まで金色の髪を伸ばした少女から模型を受け取り、ルークが満面の笑みを零す。少女もまた薄く頬を染め、微笑んだ。
ルークと同じくらいの年だが、よく出来た子どもだと、クリムゾンは微笑ましい二人のやり取りに頬を緩める。
ルークのこんな嬉しそうな顔は久方ぶりだ。模型よりも何よりも、少女の優しさが嬉しいのだろう。

「私からも感謝しよう。名前を聞いてもいいかな?」
「あっ、名乗り遅れまして、申し訳ありません。ノエルと申します、公爵様」

ぺこりと深く頭を下げるノエルに、そう畏まらなくていいと苦笑する。ルークがちら、と咎めるようにこちらを見たのは、ノエルの態度が硬くなったからだろう。ずいぶんとこの少女が気に入ったらしい。

「君の祖父とは旧知の中でな。君もルークと仲良くしてやってくれないか」
「ち、父上ッ」
「私でよろしければ。これから仲良くしてやってくださいね、ルーク様」
「…う、あ…う、うん。…よろしくな、ノエル」

顔を真っ赤にしながら、模型を抱き締め、照れくさそうに目を逸らすルークと、にこにこと優しく微笑むノエルの二人を眺め、クリムゾンは笑みを深めた。


END


身分差があるから恋愛感情に発展しなければいいな、とイエモンは思ってますが(つらいのはノエルなので)エルが優しいだけじゃなく、芯が一本しっかり通っていることを見抜いたクリムゾンは、ルークがレプリカであると公表したとき、ノエルがルークの支えとなってくれるんじゃないかとか思ってたり。レプリカだと知れば、婚姻の申し込みに貴族たちもその令嬢も二の足を踏むことを読んでいるのでなおさら。
もしルークが本当にノエルを望むなら、有力貴族の養子にしてしまう手もあるしな、とかも考えてます。気が早いよ、クリムゾンパパ(笑)

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