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月齢

女性向けブログ。ネタ語りや小説など。ルーク至上主義。

2025.04.21
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2008.04.09

短編

ピオスレルク。
キムラスカというか、インゴベルト王捏造入ってます。
ディストもサフィールとしてマルクトに戻ってます。亡命者扱いされてません。名前しか出てきてませんが。
舞台はアクゼリュス崩落後。
ユリアシティに置き去りにされて、グランコクマに一人で行ったルークの話。
ルークはもともとピオニーと顔見知りでした。ケセドニアとかでお互い身分隠したままとかで知り合ったとかそんな感じです(えー)
いろいろ突っ込みどころがありそうな話になったような(汗)

注!同行者厳しめ(アッシュ含)






喜べ、と満面の笑みを浮かべるマルクト皇帝に、喜べるか、とルークは蹴りを飛ばした。
半ば本気のその蹴りは、そこらの軍人であれば蒼ざめるほどのスピードを誇っていたが、ピオニーにはあっさりと避けられた。
チッ、と隠すことなく、舌を打つ。

「避けんな!」
「だって、お前、それまともに喰らったら、肋骨折れるだろ」
「ああ、そのつもりだからな」
「おいおい。お前のこと、可愛がってやれなくなるだろ?」
「誰もんなこと望んでぬぇー!」

この色惚けオヤジ!
ルークは叫び、拳を握った。
にやにやとピオニーは可笑しげに笑うだけで、不敬を咎める様子もない。
日常茶飯事の光景なため、側に控えるアスラン・フリングス将軍も何も言わない。
ただ哀れむような視線を、一度、ルークに投げはしたが。

「お前が何と言おうと、俺が決めたんだ。従ってもらうぞ、ルーク」
「無茶言うな。大体、キムラスカだって許さねぇだろ」
「ああ、それなら安心していいぞ。なぁ、アスラン」

アスランに話を振るピオニーに、ルークは髪よりも少し濃い色の眉を寄せ、アスランを見やった。
申し訳なさそうに、アスランが一枚の紙を広げ、口を開く。
見る間にルークの顔から血の気が引いていく。

「キムラスカ=ランバルディア王国国王、インゴベルトの名において、ファブレ公爵家が一子、ルーク・フォン・ファブレとマルクト帝国皇帝、ピオニー・ウパラ・マルクト九世殿の婚姻を祝福するものとする。我が『姪』を末永くよろしく頼む…とのことです」
「いやいやいやいや、可笑しいだろ、いろいろと!婚姻とか、姪とか!俺、男だっつーの!」
「だから、喜べって言ったろ?」

王宮からの脱出で培ったのか、素早い動きで背後に回ったピオニーに、あっさりと背中から抱きすくめられ、ルークは色気のない叫び声をあげ、暴れた。
が、ピオニーの腕はびくともせず、仕舞いには疲れきってしまい、ルークは肩で息をしながら、ぐったりと項垂れた。
アスランが気の毒そうに、そんなルークから目を逸らす。

「…これでも、七年、男として生きてきた、俺のプライドはどうなる」
「お前だって、大爆発とやらでオリジナルに乗っ取られるのは嫌だろ」
「だからって、何で…」

何で、俺が女にならなきゃいけないんだと、ルークは情けない声を出す。
レプリカである自分の身体の方が、音素を調整しやすいのはわかるけれど。
大爆発を避けるために、完全同位体として、アッシュとまったく同じである音素振動数を変えねばならないのもわかるけれど。
だからって、何故、すぐにピオニーとの婚姻になるのだ。
しかも、インゴベルト王はインゴベルト王で『姪』だと宣言しているし!
アクゼリュスの自然崩落以降、周囲の状況が、あまりに目まぐるしく変わるものだから、正直、ついていけない。
せめてもの救いは、あの偽善的で自己完結主義者ばかりの身勝手で愚かな同行者たちから離れることが出来たことか。
くくく、と背後でピオニーが楽しげに笑った。

「別に問題はないだろ。お前、俺のことが好きだろ?だったら、お前が女の方が都合がいい。跡継ぎ問題も大爆発の問題も解決するし、一石二鳥だ。レプリカではあっても、キムラスカ王が直々に認めた『姪』だぞ。血筋は問題ないんだ、元老院も黙るだろ」
「……どっから出てくんだよ、その自信」

朱色の長い髪に顔を埋めて笑うピオニーの身体が小刻みに揺れるせいで、自身もまた揺らされながら、ルークは諦めの境地で息を吐いた。
ああ、確かに。

(確かに、俺は)
この男を、好いている。
それが恋愛感情かどうかは、自分でもよくわからないが。
仕方ないじゃないか。七年、頭も腕も磨いてきたが、そんな感情とは無縁に生きてきたのだから。
アスランがルークに助け舟を出すように、ピオニーを軽く睨んだ。

「陛下、あまり焦ってはルーク殿が困惑されるだけです。時間を掛けることも時には大事ですよ。何だかんだと言っても、ルーク殿はまだ七歳なのですし」
「わかってるよ。とりあえず、婚約は済ませようぜ、ルーク。誰もお前に手が出せないようにな」
「…俺に手を出そうなんて物好きは、あんたくらいだろ」

何も見ていないくせに、敵の言葉を一方的に信じ込み、アクゼリュスが崩落したのは、貴様のせいだと決め付けてくれやがったあの同行者どもが煩そうだなぁ、とルークはぼんやり思う。
大体、自分はセフィロトの中にすら入っていないというのに、よくもまあ、ああも自分たちの都合のいいように捻じ曲げられたものだ。
ルークは、イオンが扉を開けようとするのを止め、ヴァンと対峙したのだ。
そうこうするうちに、とうに限界を迎えていたパッセージリングが自然と砕けてしまっただけだというのに、あの同行者たちはイオンの言葉すら信じなかった。
導師守護役といい、襲撃犯といい、イオン様イオン様言っているわりには、たいした忠誠心だ。

今、彼らはどこにいるのだろう。ピオニーは多分、掴んでいるのだろうが。
どうでもよくて、自分で調べる気も起きない。
グランコクマにすら報告に戻ってこないのだから、つくづく救いようがないと、ルークはため息を禁じえない。
インゴベルト王が預言を妄信していて、預言に従うままに宣戦布告していたらどうする気だったのやら。
幸い、彼の王は現実をきちんと見据えることの出来る賢い王であるから、ルークが送った『親善大使一行は勝手についてきたナタリア王女もとい謀反人も含め、皆、無事です』という報告を信じ、ホド戦争の爪あと大きい今、戦争を起こすような愚かな真似はしていないが。
どうやら、モースもグランツ兄妹の失態(なんてレベルじゃない)により、キムラスカより放り出すことに成功したらしい。
マルクトにアクゼリュスのことを報告に向かうルークに送られてきた返書に、うきうきとその旨が書かれていたのは記憶に新しい。
預言預言と国政にまで口を出してくるモースがよほど煩わしかったようだ。
秘預言を自身の判断で勝手にキムラスカにバラしたとして、モースは失脚間違いなしだという。

「あいつら、煩そうだけど、どうすんだ?」
「別にどうもしないさ。煩い羽虫は払うだけだ」
「…なるほど」

ちら、とアスランが持つキムラスカ=ランバルディアの紋章が入った羊皮紙を見やり、ルークは一人頷く。
インゴベルト王から送られてきた書は、あれだけではないに違いない。
きっと、既に護衛が何であるかも理解するだけの頭脳もない襲撃犯や使用人もどき含め、全員の身の上は王二人の間で決まっているのだろう。
あの悲劇に酔っている被験者殿もどうなることやら。
今は、同行者どもと道行きを同じにしているらしいが。

「なぁ」
「ん?」
「あいつら裁くときは、立ち合わせろよ」

散々、煩わしい思いを味わわせてくれたのだ。
見世物として楽しませてもらわなくては、やってられない。
にやり、とピオニーが口角を吊り上げた。

「いいぜ。サフィールも立ち合わせるか。ジェイドの奴、面白い顔しそうだな」

言葉の端にジェイドに対する抑えきれない怒りと、ジェイドを名代に選んでしまった己への自嘲を滲ませ、ピオニーが言う。
ルークは苦笑し、そうだな、と頷いた。
ジェイドに関しては、フォローも出来ないので、ピオニーを下手に慰めることも出来ず、苦笑するしかないのだ。

「あいつら、いつグランコクマに来るんだろうな」
「オリジナルルークを親善大使の『ルーク・フォン・ファブレ』として立ててくるかもしれないぞ」
「…そうなったら、面白そうだな」

レプリカだからという理由で、偽者、と断じてくれたのだ。
ガイもナタリアも、七年間、気づきもしなかったくせに。
アニスに至っては、人間もどきとまで罵ってくれたのだ、報いを受けてもらわねば。
今度は、こっちが親善大使を騙る『偽者』として裁いてやる番だ。
ルークはピオニーと揃って愉しげな笑みを零し、アスランに似た者夫婦になりそうだと苦笑させた。

END

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