月齢
女性向けブログ。ネタ語りや小説など。ルーク至上主義。
黒ルクアリ
アリエッタが一番大事なルークによる、世界改変。捏造過多。説明も多々(汗)
同行者というか、被験者に厳しいです。
特にティアが酷い目にあってます…。
注!ヴァン&アッシュ&同行者厳しめ
(イオンも死亡してます)
意外と簡単だったな、とルークはふんわりとした桃色の髪に指を滑らせながら、低く笑った。
自分の胸に頭を預け、すやすやと眠るアリエッタの髪の一房に口付けを落とす。
森と太陽の香りがする。いい香りだ。
ミュウもアリエッタの横で転がって眠りこけている。
(満たされた気分だ)
実にいい気分だ。
くすくす笑って、ルークは肩に掛かる朱色の長い髪を後ろに払った。
王族の象徴たる赤い髪は長く豊かでなければならない、と伸ばすことを義務付けられてきた、鬱陶しいだけの髪だったが、今は切ろうとは思わない。
アリエッタが綺麗だと、切ってしまうのはもったいないと惜しむからだ。
この髪が好きだと笑ってくれるから、ルークは髪を切らない。
純粋無垢なアリエッタと出会ってから、ルークのすべては桃色に染まった。
アリエッタさえいればいい。他には何もいらない。
アリエッタが笑ってくれる。それこそが至上の喜び。
ルークにとって、アリエッタがすべてだった。
被験者の代わりに、国の繁栄のために死ぬ。
そのためだけに生かされてきたルークにとって、初めて得た生の喜び。
誇り高いライガの女王を救うことにしたのは、どこぞの襲撃犯が気に入らなかったからという気まぐれでしかなかったが、本当に救ってよかった。
あのとき女王を救っていなければ、今頃、アリエッタは憎悪の瞳を自分へと向けていただろう。
アリエッタに嫌われる。
想像しただけで、ルークは身体が震えるのがわかった。
アリエッタに嫌われたら、もう自分は生きていけないだろう。
(あの襲撃犯も最期の最期で役に立ったしな)
生まれてくるライガの子どもたちの食事として。
タタル渓谷で殺さなかったのも気まぐれの一つだったが、あの場まで生かしておいてよかった。
おかげで、ライガクイーンは自分を気に入ってくれたのだから。
ルークはくすくす笑う。
チーグルたちも滅ばずに済んだのだ。万事丸く収まってよかったじゃないか。
導師イオンだけが、顔色を失っていたが。
クイーンは超振動で人間たちの襲撃がない場所、キノコロードの奥まで飛ばした。
(イオンも、可哀相にな…)
ついて来るな、と警告してやったというのに、のこのこアクゼリュスまで着いてくるから、瘴気に耐え切れずに…。
あの役立たずの導師守護役のせいだ。あいつがちゃんと止めなかったから。
最後は苦しまずに逝かせてやることしか、出来なかった。
イオンがレプリカであることはわかっていたから、第七音素に還元し、音素帯へと昇らせたのだ。
それを殺したと阿呆共が喚いていたが、あいつらももういない。
よかった、とルークは薄く笑む。
あいつらは皆、自然崩落していくアクゼリュスと運命を共にした。
この自分を利用しようとしていた髭もといヴァンもまた、同じ運命を辿った。
セフィロトの前でイオンと自分が来るのを待っていたようだが、その前にイオンは乖離してしまったし、自分はそこまで行かなかった。
そして、魔物の手助けもヴァンにはなかった。
当然だ。アリエッタはそのころには被験者イオンが亡くなっていたことを知り、ヴァンから離反していたのだから。
何を考えていたのか、アクゼリュスへと駆けつけていた被験者ルークもまた、為すすべなく、崩落するアクゼリュスに巻き込まれていったらしい。
大爆発などという忌まわしい現象が起こる前に死んでくれてよかった。
それにしても、髭はどんな顔を晒していたんだろうな、とルークは目を細める。
間違いなく、譜歌を歌おうとしたはずだ。無駄だということも知らずに。
ユリアの譜歌は『更新』されたのだ。
『ルーク・フォン・ファブレ』のレプリカであり、ローレライの真なる完全同位体である自分の手で!
何も知らずにいい気にふんぞり返っていた『栄光を掴む者』を思い出すだけで、ルークは笑い転げそうになる。
すべては、この手のひらの上で転がっていただけだったというのに。
「ん…」
もぞ、と身じろぐアリエッタに、慌てて、笑い声が漏れていた唇を引き結ぶ。
じ、と息を殺して見守っていれば、アリエッタはすり、とルークの胸に頬を摺り寄せ、起きることなく眠り続けた。
ホッと詰めていた息を吐き、穏やかな微笑を浮かべ、アリエッタの頭にルークは優しいキスを落とす。
最愛の導師を失っていたという悲しみに付け入るような形になったのは、わかっている。
それでも、アリエッタの涙を止めたかった。
アリエッタに笑って欲しくて、そのためなら何でもしてやれた。
抱き締めて、もう何も不安はないのだと、そう慰めた。
ライガクイーンからも信頼を寄せられている自分に、アリエッタはすぐに懐いてくれた。
(可愛い、俺のアリエッタ)
アリエッタが自分に寄せてくれる想いが恋愛感情かどうかはわからない。
それでもいい。
アリエッタがこうして側で笑ってくれているだけで満たされるのだから。
「…邪魔するようで悪いんだけどさ」
「ん、…ああ、シンクか」
何だよ、と声を潜めて首を傾ぐ。
呆れたように肩を竦めてから、シンクが足音を消して側へと寄ってきた。
何だかんだと言いつつ、シンクもアリエッタを気遣っているらしい。
ルークは苦笑を零す。
「そろそろ時間じゃないの」
「あー、もうそんな時間か」
「レプリカたちもみんなとっくに集まってるしね」
「被験者どももみんなくたばったしな」
にっ、と二人は互いに笑みを交わした。
ローレライと契約を交わしたルークは、知識をローレライから得、もう一人のフローリアンと名づけた導師イオンのレプリカとともに、外郭大地の降下を行った。
ユリア式封咒はローレライの力を使って壊した。
もちろん、被験者たちのためではない。すべてはモースが勝手に生み出した同胞であるレプリカたちと魔物など動物たちのためだ。
ルークは、魔界を覆う瘴気を、ローレライの力によって性質を弄り、被験者だけを侵すものに変えた。
被験者たちには瘴気が満ちていることをわからないように、色も変えた。
瘴気は第七音素であるから、性質を変えるのは簡単だった。
空が青く見えるというだけで、無味無臭と化した瘴気に、被験者は気づかなかった。
原因不明の病気としてバタバタと倒れ、原因を探り当てたときにはすべては遅きに失していたというわけだ。
被験者の中でただ一人、生かしたいと願うアリエッタは、第七音素を使い、抗体を体内に作らせ、瘴気を回避させた。
そして、すべての被験者が死んでいく中、ルークはレプリカをレムの塔に集めた。
集めるのは難しいことではなかった。レプリカたちにはレムの塔へと集まるよう、刷り込みがされていたから。
その点だけは、モースの奴に感謝してやってもいいな、とルークはせせら笑う。
「じゃ、行くか」
起こすのを忍びないと思いつつ、ルークはそっとアリエッタの身体を揺すった。
小さく呻き、ゆるゆると目を開けたアリエッタに、笑みを向ける。
心からの穏やかで優しい笑みを。
ミュウもまた起こしてやれば、パタパタと耳を動かし、ルークの肩に飛び乗った。
「おはよう、アリエッタ」
「おはよう、です、ルーク」
「そろそろ時間だから、行こうか」
「はい、です」
「行くですのー」
「落ちるなよ、ミュウ」
ぽん、とミュウの頭を軽く叩き、にこっ、と笑みを返してくれたアリエッタを抱き上げ、ルークはシンクを隣に歩き出した。
昇降機に乗り、レムの塔の最上階へと上がる。
そこには既に、一万人を超えるレプリカたちが集まっていた。
彼らに笑みを向け、中心に立ち、アリエッタを下ろす。
「さぁ、我が同胞たちよ。今こそ、我らが道を生きるとき」
被験者のためではなく、自分自身のために!
右手をアリエッタと繋ぎ、腰に佩いた宝珠を嵌めたローレライの剣を左手に持ち、ルークはそれを高く掲げた。
今こそ、ローレライを解放するとき。
音譜帯へと昇るローレライに、レプリカの乖離しやすい肉体を大地へと定着させるときだ。
何も心配はいらないと、アリエッタと繋いだ手に軽く力を込める。
アリエッタもまた、にっこり微笑み、握り合う手の力を強くした。
確かな温かさが、そこにある。
「みんな、幸せになろうな」
被験者のために『生まれた』青年は朱色の髪を靡かせ、剣を力強く、塔へと突き刺した。
眩い光が塔を覆い、焔のようなローレライが己が子どもたちへと祝福を謡い、空へと高く昇っていく。
ルークは愛しい少女を抱きしめ、生まれて初めて世界の美しさに酔いしれた。
END
文章が矛盾していたので修正しました(汗)
2009.04.20