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月齢

女性向けブログ。ネタ語りや小説など。ルーク至上主義。

2025.04.21
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2008.10.02
ss

アシュルク。ルークはスレ気味。
ローレライ介入話です。人間が嫌いなアッシュとルーク。
アッシュが攫われたあたりからアッシュとルークの二人に、ローレライは呼びかけたりして側にいます。
地殻に封じられているので、声を掛けるくらいしか出来ませんが…。
ユリアやその子孫に厳しめです。
イオンにも厳しめ。

注!ユリア&ティア&イオンに厳しめ





ローレライは夢を見た。
ああ、何としたことか。半身が。我が子とも言える聖なる焔の光が切り裂かれてしまった。
夢の中で、焔は半身を憎んでいた。そう仕向けられていた。
そして、待ち受けるは、悲劇。
二人とも、愛しい半身たちが二人とも、死んでしまう。
世界の贄とされてしまう。

時が経とうとも、人間たちは変わらぬものなのかと、ローレライは憎悪に燃える。
己を地殻に閉じ込めたユリア・ジュエ。あの女こそ、人の傲慢を表していた。己らこそが世界の支配者と、奢り高ぶる人間どもめ。
けれど、どれほど怒り猛ようとも、地殻に封じられた身では、満足に力も揮えない。
ローレライは怒りの声を上げ、音素集合体たちへと呼びかけた。どうか力を貸してくれ。せめてこの忌まわしい牢獄から彼らへと声を届けるだけの力を。
音素集合体たちはローレライの声に応え、ローレライを六色の光が包んだ。
それが、始まり。





ふふ、ふふふ。
嬉しそうに頭に響く声に、アッシュは眉を寄せた。一体、何だと言うのだろう。今日は朝からずっとこうだ。
吐息とともに、自分にしか聞こえない、第七音素集合体へと、アッシュは心の内で声を掛けた。

『何だって言うんだ、お前』
『ふふ、アッシュ。我が愛しい半身。素晴らしい瞬間が近づいているよ』
『何があるんだ?』
『今はまだ、内緒だ。ふふふ』

アッシュの眉間にさらに一本、皺が増える。ローレライに答えるつもりはないらしい。
頑固なところがあるローレライのことだ。宥めすかして聞き出そうとしても、のらりくらりと交わされるだけだろう。
はぁ、とため息を零し、アッシュは教団内部で与えられている自室で、目を閉じた。そのまま、ばったりと背後に倒れ、ベッドに横たわる。
頭の中では、相変わらず、ローレライが笑っている。

ヴァンにレプリカ情報を抜かれ、連れて来られたばかりのころは、幻聴なのだと思っていたのに、と苦笑がアッシュの唇に滲んだ。あのころは、自分の気が狂ってしまったのかと、恐れもしていたが、今ではすっかり慣れてしまった。
むしろ、この声がなくなるほうが恐ろしい。ヴァンに監禁され、洗脳まがいの虐待を受ける中、自分を保ってこれたのは、ローレライがいてくれたからだ。
自分を励まし、身体の傷だけでも癒してやれるだけの力を揮うことが出来ない己を嘆くローレライに、どれほど救われたことだろう。

自分が一人ではないことを、教えてくれたのもローレライだった。
超振動と名づけられた、ローレライの力。それを生まれ持った自分は、いつでも異端だった。
化け物を見る目で見られることも日常茶飯事。父も自分を兵器か何かのようにしか、思っていなかった。
そして、母は実験を繰り返され、病んでいくこの身に、気づきもしてくれなかった。ただ綺麗なものを見、綺麗なものだけを信じていた。婚約者である少女も同じく。
味方なんて、いなかった。

(でも、俺には、半身がいる)
ローレライが教えてくれた、レプリカルーク、彼にも、超振動の力があるという。
あの子にも、我がついているのだと、ローレライは言っていた。身を二つに裂き、アッシュとルーク、二人を見守るために側にいるのだと。
いつか会いたい、とアッシュは瞼の裏に、ルークを思い描く。ローレライの話に寄れば、自分よりも髪の色は朱色に近く、毛先は金色がかっているという。
どんな色なのだろう。この目で直接見てみたい。

(そして、二人でローレライを解放して)
ともに音譜帯へと昇っていきたい。
人の世は嫌いだ。裏切りや虚飾に満ち、他者を利用するだけの人間など、大嫌いだ。
音素をただ消費するしか能がなく、敬う気持ちもない人間など。音素集合体たちにも意思があることに気づかず、物のように扱う人間の世界になど、もういたくない。

「…ローレライ、お前を必ず、自由にしてやるからな」

これ以上、人の傲慢にお前を縛り付けておくものか。必ず、お前を。
そう、今はまだ遠く離れた半身とともに。
ローレライが喜びの声を上げ、もうすぐだ、アッシュ、と笑った。
師団長、大詠師様より命令がありました、と部下が部屋に訪れたノックの音が、部屋に響いた。





ふふ、ふふふ。
嬉しそうに頭に響く笑い声に、ルークは首を傾げた。ティアに屋敷から連れ出されてからというもの、何かと不機嫌であったのに、今日はずいぶんとご機嫌だ。
何かあるのかと心の内で問えば、ローレライからは笑い声だけが返ってきた。

『もうすぐだ、ルーク』
『何が?』
『ふふ、それは内緒だ』

何だよ、と思わず、唇を尖らす。不意に、何をボーっとしているの!と叱責が飛んできた。煩わしげな目を、ルークは声の主へと向けた。
薄い茶色の髪が掛かる肩を怒らせ、こちらを睨んでくるティアが、ルークは心底、嫌いだった。屋敷にいる人間たちも、記憶がないからと、人を見下してくるばかりでつまらない連中ばかりだったが、ティアはその筆頭だ。
ローレライが言う傲慢とは、この女にこそ相応しい。
ローレライに寄れば、この女はローレライを地殻に封じ込め、利用し続けているユリア・ジュエの子孫だというから、納得だ。ユリアというのも、この女のように傲慢な人間であったに違いない。

「ティア、そんなふうに言わなくても…」
「いいえ、イオン様。ルークは言わなくてはわからないんです」

ティアは自分を響長だと言っていた。どう考えても、導師の言葉に逆らっていい立場だとは思えない。
自分は総長の妹だから、構わないとでも思っているのだろうか。
虎の威を借るキツネ。そんなことわざがルークの頭を過ぎる。
よくぞここまで自分というものを勘違い出来たものだ。

(めんどくせーな、本当)
イオンが勝手に引き受けたライガとの交渉をさっさと終わらせてしまおう。さくさくと草を踏み、ルークはチーグルの森を進む。
ひょこひょこと短い足を動かし、必死の態でミュウが後を追ってくるが、速度は落とさずに進む。

『なぁ、ローレライ』
『どうした、ルーク』
『交渉、なんてうまくいくと思うか?』
『導師に代替案のような考えなどなさそうだし、そもそもあの女にもそんなつもりがあるとも思えんが』
『…だよな』

どうしたもんかな、とルークは頭を掻く。ああ、面倒なことに巻き込まれてしまったものだ。
加害者はチーグルだ。出来れば、被害者であるライガに害を及ぼす真似はしたくない。
けれど、導師にはローレライが言うとおり、何の考えもないようだし、ティアは殺気立っている。これで交渉がうまくいくなら、戦争など起きないとルークは思う。

『大丈夫だ、ルーク。いざとなれば、我がライガクイーンと話をつけよう』
『声、届くのか?』

ローレライの声は、自分と半身である被験者にしか聞こえないものだと思っていたルークは、眉を跳ね上げる。シルフの力を借りるからな、とローレライが笑った。

『人の傲慢さに、ライガクイーンのような誇り高き獣が犠牲になるなど、シルフとて納得がいかぬであろう』
『ああ、まったくだ』

人間なんて、とルークは拳を握りこむ。被験者であるアッシュを異端として苦しめ、実験動物扱いしたキムラスカも、アッシュの嘆きを利用し、つけこみ、そして裏切ったヴァンも、誰も彼も嫌いだ。
物心ついたころには既に側にいて、いつでも慰めてくれていたローレライを閉じ込め、利用する人間なんていなくなってしまえばいい。
優しい音素集合体たちを物のように扱う人間なんて、大嫌いだ。

『待ってろよ、ローレライ』

いつか出会うアッシュと一緒に、必ず、お前を解放してやる。
そして、アッシュと二人、音譜帯に行きたい。人に疎まれ、人の傲慢さに苦しめられてきた半身を、苦しみから救いたい。
誰が人の犠牲になって死んだりするものか。冗談じゃない。
ルークは、もう少しゆっくり歩いてだの、イオン様とミュウを気遣いなさいだのと口煩いティアを振り返ることなく、足を進めた。そんなことを言うならば、イオンの我が侭など聞き入れず、エンゲーブに戻っておけばよかったのに。

(アッシュ…早く会いたいな)
二人、ローレライとともに自由になるために。
ローレライが喜びの声を上げ、もうすぐだ、ルーク、と笑った。


END


ローレライによる紫の上計画というか。ローレライは赤毛たちが人間を憎むよう、嫌うように仕向けてます。
そういう場面ばかり見るようにしたりとか。

 

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