忍者ブログ

月齢

女性向けブログ。ネタ語りや小説など。ルーク至上主義。

2025.04.20
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2009.05.01
ss

ルクティア&アシュナタ。
キムラスカとホド組に捏造過多です。
アッシュはヴァンに攫われてますが、ヴァンの計画を探るためにダアトで頑張ってます。キムラスカにも報告済みで、ルークはレプリカですが、公爵家に跡継ぎがいないこともあって、スパルタ教育を受けました。
ティアやガイ、マリィベルなどホド組は、崩落からファブレ公爵が救い、匿ってます。
マルクトとダアトはほぼそのまま。

注!ジェイド&イオンに厳しめ





ちら、とルークは、背後に立つティアの握り締められた拳を見やった。指の関節が、力の込めすぎで白くなっている。
造作の整った顔には、何の表情も浮かんでいない。ただ愛してやまない蒼い瞳だけが凍てついている。
長い付き合いであるルークは知っていた。ティアが無表情であるときは、内心、怒り狂っているときだということを。
ティアが内に溜め込んだ怒りを少しでも散らそうと言うように、深く息を吐き出した。

(文句、言いたいんだろうなぁ)
気持ちはわかる。実際、酷いものなのだから。
父や母、ナタリアもあっけに取られている。壁際で控えている白光騎士たちやジョゼット・セシル少将に至っては、キムラスカの宿敵とばかりに、非常識な和平の使者である『死霊使い』を睨む目を、射抜かんばかりに鋭くさせている。
ティアの隣では、ガイもまた額に手を当て、天を仰いでいる。
気づいていないのは、当の本人たちばかり。目出度い頭をしてるなぁ、とルークは内心、苦笑う。
これだけ目出度い頭ならば、人生幸せに違いない。

(導師もナタリアから聞いてた話と、全然違うっつーか。まあ、別人なんだから当たり前だけど…)
ナタリアが三年ほど前に会ったことがあると以前、話してくれた導師は、こんな世間知らずではなかったはずだ。媚を売るしか能のない、出来の悪い導師守護役を連れて歩くような人物でもなかったようなのに。
今、目の前にいる導師イオンが、被験者ではないことを、ルークは知っている。キムラスカの間諜として潜り込んでいるアッシュや黒獅子ラルゴによって、情報がもたらされたからだ。本物の導師イオンが既に他界していることも掴んである。

知っている上で、ルークは思うのだ。幾らなんでも、無能すぎるだろう、と。
この場合、責任があるのは生まれて二年のイオンではなく、被験者に似せる気も導師としての教育もする気がなかったとしか思えない、レプリカイオンをこの世に生み出した大詠師モースやヴァン・グランツだが。
ヴァン・グランツがレプリカである自分をファブレ家に、そして、被験者であるアッシュを手元に残してくれてよかったと、アッシュには悪いと思いつつも、ルークは安堵を抱く。
もし、自分が導師イオンのようにまともな教育を受けることも出来ずに、ヴァン・グランツにとって都合のいい人形にされていたら。想像するだけでも、ゾッとする。

(まあ、この際、導師はいいけどな。どうせ、アクゼリュスには一緒に行かないんだし)
和平の親書を、インゴベルト王は受け取り、和平の申し込みも受け入れた。つまり、和平の仲介としてやってきた導師の役目はここで終わりということだ。
マルクトの名代とキムラスカの名代、ルーク・フォン・ファブレの親交を深めるという名目のこのファブレ邸で行われている晩餐会は、役目を終えた導師への労いも兼ねている。
だが、親交からは随分とかけ離れてきた晩餐会の暗澹とした雰囲気に、ルークはこれから先の道行に黒々とした暗雲が立ち込めているのが見える気がした。

「カーティス殿、つかぬことを訊くが、貴殿には外交経験はおありなのだろうか?」
「少なくとも、キムラスカから一歩も出られたことのない貴方よりはあると思いますよ?」
「……ふーん」

嫌味を交えなければ、会話出来ないのだろうか、この男は。いい加減、後ろのティアが放つ怒気が恐ろしくて仕方ないのだが。
同じくティアの怒気に気づいているガイの顔からも血の気が引いている。
いざとなれば、ティアを止めるのはガイの役目だ。身の安全を図るため、隠してはいるものの、ガイはホド戦争で滅びたとされるガルディオス家の生き残りであり、ティアの本来の姓であるフェンデ家の主筋であるからだ。

二人の現主はもちろんルークだが、ルークにティアを止める気などない。
怒ったときのティアは恐ろしいが、同時に酷く美しいからだ。ルークはティアの怒った顔を見るのが嫌いではなかった。
もっとも、自分に向けられたものでなければ、の話だが。
それに何より、ルーク自身、顔こそ涼しげな表情を崩していないが、内心、目の前のジェイド・カーティスに腹を立てていた。

「ルークがキムラスカを出たことがないのは仕方のないことですわ。何しろ、預言で詠まれておりますから」

ルークを庇うように、ナタリアが顔に鮮やかな笑みを貼り付け、ジェイドに言う。ナタリアの本当の笑みを知っている者たちは、それが作り笑いであることに気づいていたが、ジェイドは気づかずに、肩を竦めた。
預言に従うことを愚かだと言わんばかりに。
マルクトが預言を表立って重用していないことは知っているが、キムラスカとて預言を妄信しているわけではない。せいぜい、指針としているに過ぎない。
預言どおりでことが進むというのなら、政は必要なく、王も要らないことになる。

ジェイドのそれは、紛れもなく、王族への嘲笑以外の何物でもなかった。ナタリアの眉間に皺が寄る。宣戦布告に来たというならわかるが、和平の使者とはとても思えぬ行動だ。
参ったな、とルークはフォークを切った肉に突き刺し、吐息する。
ティアならば止める自信があるが、憤怒に染まったナタリアを止められるのは、アッシュと王だけだ。その王は今は城でモースを丸め込んでいて、この場にいない。その代わりにナタリアがこの場にいるのだ。

当然、アッシュもいない。彼は今、六神将として、ラルゴとともにヴァンに警戒の目を向けている。『聖なる焔の光』の預言が詠まれた年に、わざわざ危険を冒してまでも公爵子息を誘拐した上、レプリカを作り出した理由は、この預言にこそあると思われるからだ。
困ったなー、と言葉とは裏腹に、大して困りもしていない様で、ルークはぱくりと肉を口に放り込んだ。
厳選された柔らかな肉が、歯を軽く当てただけで、溶けるように切れる。ほどよい塩加減と肉に絡むソースの絶妙さに舌鼓を打つ。
非常識な使者たちに食べさせるのが惜しいくらいに、美味だ。
ファブレ家自慢のシェフの腕は、今日も存分に発揮されている。

「なるほど。では、貴殿は既にマルクトに報告も済ませたということか。キムラスカ側の街道許可についても」

ジェイドが行った報告が、和平の親書受理と親善大使のアクゼリュスへの派遣のことだけだと、マルクトに潜り込ませてある間諜に調べさせた上で口にする公爵の皮肉に、ルークは内心、苦笑する。まったく人が悪い。
案の定、ジェイドがぴきりと固まった。眼鏡のブリッジを押し上げる様に落ち着きがない。

戦場ではいかに有能だろうと、外交ではまったくの無能らしい。使えない名代を選んだものだと、ルークは会ったことのないマルクト皇帝にも無能の評価を下す。
上司の有能さというものは、部下に表れるものだ。それが、懐刀とも呼ばれるほど、近しい部下となれば、なお更だ。その逆もまた然り。
こんな無能者を送り込んできた時点で、ピオニー・ウパラ・マルクト9世が賢帝という噂は、所詮、噂でしかないと、こちらが判断してもあちらに文句は言えない。

(あーあ。今回の和平を通じて、ガイがガルディオス伯爵として返り咲けるようにしようと思ってたのに、これじゃあなぁ)
七年前、レプリカとして生み出されてからというもの、ずっと側にいてくれたガイをルークは無二の親友だと思っている。ガイもそう思ってくれているはずだ。
ただ、ガイの場合、ホドの崩落から姉やフェンデ家やナイマッハ家といった従者とともに救い出してくれた上、これまで匿ってくれたファブレ公爵に恩を抱いているから、その恩に報いなければ、と決意していることもあって、少し過保護気味だが。けれど、大事な大事な友であることに変わりはない。
ちなみにガイの姉であるマリィベルは、ジェイド・カーティスに顔を知られている可能性を考慮し、隣の部屋に隠れ、会話を速記している。あちらもあちらで、ペンが折れんばかりの勢いで苛立っているに違いない。
彼女も、ルークにとって大切な友だ。

その大事な親友たちを無能な王に、預けることなど出来ない。下手をすれば、ガイたちは殺されてしまうだろう。
例えば、ホド戦争の真実を知るマルクト上層部の人間など、ガイたちが生きていることをよく思わぬ者がいる。何しろ、ホドの崩落はマルクトの前王の命によって起こされたものだからだ。
ガイとマリィベルの二人は、その真実をティアの母であるファルミリアリカ・サティス・フェンデによって聞かされている。彼女は息子であるヴァンデスデルカ・ムスト・フェンデがその崩落に利用されたことを、ティアを生んで死ぬ前に伝えたのだ。
その真実をガイが知っていることを知られれば──あとは想像に難くない。

また、ダアトが関わっていることも、ガイたちは知っている。クリムゾンがキムラスカの軍服を着た男を一人捕らえ、拷問に掛けて吐かせたからだ。
ダアトもまた、その事実をガイたちが知っており、発表するとなれば、手を回してくるはずだ。マルクト皇帝には、国の内部とダアトと両方からガイたちを守ってもらわねばならないが、皇帝が無能者となれば、二人をみすみす死地に送るに等しい。

(ティアだってそうだ)
ティアがフェンデの生き残りだと知られれば、いくらホド戦争時は生まれていなかったとはいえ、危険が及ばないとは限らない。或いは、譜歌を知るユリア・ジュエの子孫として、ダアトに利用される可能性もある。
冗談じゃない、とルークは内心、憤る。ティアを失ってなるものか。
彼女をキムラスカで守れるだけの用意が整い、正式にフェンデの生き残りであり、ユリア・ジュエの直系の子孫であることを明かすことが出来る日まで、ティアの素性をマルクトにもダアトにも知られてはいけない。
ヴァンにも、ティアとヴァンの養祖父となっているユリアシティのテオドーロ市長を利用し、ティアは残されているユリアの肖像画によく似ていることもあり、いいように利用されかねないと伝えさせたところ、ヴァンも妹を政治の混沌に巻き込むつもりはないらしく、口を噤んだままだ。
なお、ヴァンは今、ティアがファブレ邸にいるのは、テオドーロが言いくるめたとおり、行儀見習いのためだと信じて疑っていない。ティア自身も兄に微笑みとともにそう告げている。

ティアがメシュティアリカ・アウラ・フェンデと名乗れる日が来たら、ルークはティアを妻として発表するつもりだった。
アッシュがナタリアと結ばれ、キムラスカ王となり、自分がティアと婚姻し、ファブレ家を継ぐ。
それが、ルークが、ルークたちが思い描く未来の図。預言に詠まれていないからこそ、己の手で勝ち得る必要のある未来だ。

(そうじゃなければ)
こんな非常識な使者など切り捨て、首をマルクトへと送りつけ、和平など拒絶しているところだ。
だが、すべては平和な未来のため。キムラスカにとって、平穏な未来のため。
ルークはちら、とティアを見やり、笑みを向けた。ティアの頬が薄く染まり、面映そうに顔が俯く。
さらりと栗色の髪が揺れ、ティアの肩から落ちた。

どうやら、これでティアは落ち着いてくれたらしい。ガイがさすが、と苦笑交じりに感嘆の目を向けてくる。
あとはナタリアだが、こちらもアッシュとの未来のため、テーブルの下でギリギリとハンカチを握り締めて耐えている。ハンカチは無残にもビリッと破れ始めており、ルークは引き攣りそうになる頬を何とか引き締めた。
一体、どれほどの力が込められているのだろう。今度、アッシュに会うときに、ナタリアを怒らせてしまっても、平手打ちは何があっても避けろ、と警告しておこう。

使者たちを思い知らせるのは、キムラスカとマルクト、両国の王がともに揃う和平調印の場でだ。
ここぞとばかりに彼ら一行の愚行を披露し、キムラスカに有利な条件で和平を結ぶために。
預言を盾に、随分とキムラスカでのさばってくれたダアトにももちろん、思い知らせるつもりだ。モースの越権行為など、材料はこちらもたっぷりと揃っている。

(その瞬間が待ち遠しいぜ)
ルークは心のうちで、にたりとジェイドやイオンを嘲笑いながらも、その整った美しい顔に、鮮やかな笑みを浮かべ、ジェイドたちへと送った。


END


 

PR
Post your Comment
Name
Title
Mail
URL
Select Color
Comment
pass  emoji Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Trackback
この記事のトラックバックURL:
  BackHOME : Next 
カレンダー
03 2025/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
最新記事
WEB拍手
お礼文として、「アッシュと天使たち」から一本。
アッシュの話です。
楽しんで頂ければ、幸いです。

web拍手
最新コメント
[07/19 グミ]
[02/26 きんぎょ姫]
[02/26 きんぎょ姫]
[05/08 ひかり]
[05/02 ひかり]
リンク(サーチ&素材)
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析

月齢 wrote all articles.
Powered by Ninja.blog / TemplateDesign by TMP  

忍者ブログ[PR]