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月齢

女性向けブログ。ネタ語りや小説など。ルーク至上主義。

2025.04.20
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2008.06.21
ss

ピオルク。時間軸としては、エルドラント突入前。
為政者としてのピオニーとただの人間としてのピオニーのルークへの想いというか。
ルーク視点です。タイトルは本当悩む…orz

注!同行者厳しめ(特にガイ)





「俺はお前に許しを請わない」

ピオニーから唐突に告げられた台詞に、ルークはブラマンジェを掬ったスプーンを口の手前で止めた。ぱちくり、翠の目を瞬かせる。
物問いたげに首を傾げれば、ピオニーの金茶の眉が寄せられた。
ピオニーの前に置かれたアップルティが、ゆっくりと温度が下がり、香りが褪せていく。ともに置かれたルークと同じブラマンジェからは、とろりとソースが皿に広がっていた。

「お前の優しさや罪悪感につけ込んでる自覚はある」
「……」

ルークは無言でふるりと震えるブラマンジェを口に入れた。アプリコットソースが掛けられたブラマンジェは、程よい酸味と甘味を舌の上に広げた。
歯を立てるまでもなく、舌で押し潰すだけで、緩く作られたそれは、あっという間に蕩けるように喉奥に消えていった。

「だが、俺はお前に謝らん。──言っておくが、アクゼリュス崩落の罪をお前一人が償うのが当然だ、などと思っているわけじゃないからな」

あいつらはそう思ってないみたいだが。
言い添えるピオニーに、苦笑する。そんなことを言うのは、ピオニーだけだ。
誰もが、誰よりも付き合いの長いガイでさえ、あれはお前の罪なのだと、当然のごとく捉えているのに。

(やっぱりガイも、俺より、ヴァン師匠の方が大事なんだろうなぁ)
ブラマンジェをまた一口掬って、スプーンを口に入れる。ファブレ邸でも似たようなものを食べたことがあるが、ピオニーの私室で食べる方が美味しいと思えるのは何故だろう。
ブウサギがぶうぶうと鼻を鳴らすこの部屋は、メイドたちの涙ぐましい努力によって清潔に保たれているが、食事を楽しむ場とは言えないのに。

(ティアは妹だから当然だけど、ガイも『本当の』幼馴染の方が大事なんだろうなぁ、きっと)
ガイラルディアこそがガイの真実で、ガイ・セシルという人間は、所詮、偽りでしかなかったんだな、と落胆もなく思う。ならば、ガイ・セシルの友も偽りなのだろう。だから、ガイは自分を見捨てたのだ。
ルークはブラマンジェを味わいながら、苦笑う。『みんな』が今、自分とともにいるのは、『利用価値』があるからだ。だから、『仲間』という甘い言葉で自分を繋ごうとし、『罪を償え』と縛りつけようとする。
『利用価値』がなくなれば、また捨てられるのだろうけれど。いっそその方が楽かなぁ、とルークは内心、吐息する。

見透かすような蒼の視線を感じ、咥えていたスプーンを皿へと戻し、こくん、と喉を鳴らしてブラマンジェをソースとともに飲み込んだルークの顔に、曖昧な微笑が滲んだ。ピオニーが両手を強く握り合わせた。指の関節が白くなっているのが、ルークの翠の目に映る。

「俺は王だからな。国のために生きねばならない」
「当たり前のことだと、思いますよ」

大を生かすため、小を殺す。
為政者として当然の判断だ。だから、確かに、謝る必要はない。
すまないと謝られる方がよっぽど困る。まるで責めてくれと言わんばかりの態度だからだ。きっと責められた方が楽になれるからなのだろう。自分は怒りを受け止めたのだから、責任は果たした、と。そして、罪の意識から逃げるのだ。
ルークは蒼の目を逸らすことなく、自分を見つめるピオニーを見つめ返す。瘴気を消せと言った人々は、誰もが視線を逸らした。

けれど、この人は違う。ピオニーだけが目を逸らさない。
ピオニーだけが、己の罪深さを知っている。己の重責を認識している。
ルークはにこりと微笑み、ピオニーの頭に手を伸ばした。いつだったか、ピオニーがしてくれたように、輝きを放つ金色の髪を指で撫でるように梳く。

「俺、陛下のこと、好きですよ」
「ルーク」
「だから、生きてくださいね、最期まで」

生き抜いてくださいね。俺が守った空の下で。
にこにこ、目を細め、ルークは笑った。蒼は逸れない。一心に、まるでルークの笑みを網膜に焼き付けようとするように、逸れない。
ルークの手が、ぐ、とピオニーの手に掴まれた。

「陛下?」
「…一つだけ、許して欲しいことがある」

眉を跳ね上げ、ルークは目を丸くする。ピオニーが自分に一体何を許して欲しいというのだろう。
握られた手の掌に、ピオニーが唇を押し付け、ルークは小さく呻いた。

「え、え」
「お前を」
「え、あ、…は、はい?」
「お前を想い続けることだけは、許して欲しい」

そんな資格がないことは、わかっているけれど。
唸るように、喉奥から搾り出したような声で、想いを紡いだピオニーに息を呑む。
細められた蒼の目が、胸に痛い。どうして今──いや、今だからこそ、なのだろう。
もうじき、自分たちは最後の決戦の場に臨むから。命が助かるかどうかもわからない、決戦の場に。

「へい、か」
「お前が好きだ」
「ッ、俺、は…ッ」
「今は答えなくていい。──応えようもないんだろう?」

ビクリとルークの肩が震える。知っている。知っているんだ。
ジェイドが教えたのだろうか?
──音素が乖離し、自分がもうじき消えてしまうことを。
死んで、しまうことを。
戸惑いに視線を揺らし、ルークは手を引いた。けれど、ピオニーの手の力は強まるばかりで、離してはくれない。
小指を甘く噛まれ、こくん、とルークの喉が鳴った。そこから震えるような痺れが、身体中に広がっていく。

「だから、ルーク。すべてが終わり、俺が最期を迎えたとき」

荒れ狂う海のような苛烈な蒼の目が、ルークを見た。どくりと心臓が跳ね、ルークは身体を強張らせる。
動くことが出来なかった。ピオニーの蒼から、目を逸らせない。
耳元で鼓動がばくばく響く。

「もしお前が俺を想っていてくれるならば、迎えに来てくれ」

死して後、魂となってまで、王であるつもりはないから。
王の責務から離れ、ただ一人の人間となった自分を、迎えに来てくれ。

そう深い声音で、笑みを消し、真摯に告げるピオニーに、ルークは唇を噛み締め、涙を耐えるように天井を仰ぐ。
消えていくことを知っているルークに、今、ピオニーを縛るような答えを返すことは、出来なかった。心が割れんばかりの声で、ピオニーの名を叫ぶ。

側にいたい。
この人を感じていたい。
それが無理なら、せめて、魂、だけでも。心だけでも。
握られた手から目を逸らすように、ルークはきつく目を閉じた。ピオニーの手は、熱かった。


END


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