忍者ブログ

月齢

女性向けブログ。ネタ語りや小説など。ルーク至上主義。

2025.04.20
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2008.09.18
5万HIT企画

ワタルさまリク「スレルーク×アリエッタで、ヴァン&六神将捏造」です。
アクゼリュスは国の命令など、設定もありがとうございましたー。
アッシュはこちら任せとのとこだったので、厳しめから外してます。設定上、出番はほとんどありませんが(汗)
アニスもちょうどアニスがいないところを書いているので、アニスも除外。
少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
(後半部分が消えてしまったため、書き直しています。すいません…!)

注!同行者厳しめ(ジェイド&ティア&ガイ&イオン)







『鉱山の街』で被験者もろとも死ぬ。
そういう選択肢もありだな、とルークは思っていた。『聖なる焔の光』の消滅から、世界の消滅まで詠まれた預言を、玉座についたインゴベルトから聞きながら。
『聖なる焔の光』の死が世界へと伝播し、最終的にすべての滅びへと繋がるのなら、これほど愉快なことはない。

(だって、そうだろう)
生まれたくて生まれたわけではないのだ。特に恨んでいるわけではないが、感謝もしていない。面倒に巻き込みやがって、と苛立ってはいるが。
だが、いずれにせよ、生まれてしまったことに変わりはない。ならば、世界を道連れに、死んでいくのも一興だ。死ぬためだけに六年もの間、生かされてきたなんて、あまりにも腹立たしい。
世界と心中。面白いじゃないか。
ルークは、そう思ったのだ。
異端として生まれた自分が、世界を滅ぼす。いい笑い話だ。人が生み出した、人ではないものが世界が滅びる切欠だなんて。
勝手に自分を生み出してくれた世界だ。心中にくらい、付き合ってもらおうか。

「万一にでも、真の『聖なる焔の光』である被験者ルークを死なせるわけにはいかぬ。だが、アクゼリュスが崩落せねば、オールドラントの民は世界が危機にあることを理解せぬだろう。マルクトとも話は通っておる。これより一年後、和平の使者がアクゼリュス救援の依頼とともに現れる。アクゼリュスとともに、お前は死ぬかもしれぬが…レプリカとはいえ、王族の青き血を持ち、キムラスカに忠誠を誓う身なれば、見事応えてくれるな、ルーク」
「御意」
「うむ、それまでは、ファブレ公爵邸にてその身体、大事にしておれ」

忠誠を誓う身を大事にしろ、ということか。馬鹿馬鹿しい。そんな役にも立たぬものなど、あいにく持ち合わせていない。
こちらの嘲りに気づく様子もなく、満足そうに頷いているインゴベルトが滑稽だった。どいつもこいつも滑稽だ。こんな愚王が治める国に、本当に忠誠を誓える人間など、一体、何人いることやら。
国のため、世界のため、命を懸けてくれ。死んでくれ。
自分は高みの見物を決め込みながら、いい気なものだ。
こちらは、被験者も巻き込み、世界も滅びへと向かわせてやろうと画策しているのに、気づきもしないで。本当にくだらない。こんな世界、さっさと滅びてしまえばいい。
インゴベルトの前に跪き、頭を下げ続けながら、ルークはひっそりと伏せた顔に笑みを零す。

「お前の護衛として、キムラスカからは本人の希望により、ジョゼット・セシル少将と白光騎士より数名を派遣する。マルクトからも、ケセドニアにて合流となるが、護衛が派遣される手筈となっておる。…ダアトよりの使者をここに」

キムラスカ、マルクト、ダアト。
三国が揃っての作戦か、と吐息する。なるほど、大掛かりだ。表向きは和平の親善大使となるようだが。
ダアトはおそらく、仲介役として見届けるという役割を果たすためとでも理由づけられているのだろう。
立ち上がってよい、と許可が出るままに、ルークは立ち上がり、謁見の間へと入ってきたヴァンとその背後にいる六人に目を眇めた。あれが、ダアトで名高い六神将か、と一人一人を観察する。

(ヴァンの隣にいるのが、リグレット、だったか。あとはラルゴに、ディスト。シンク、カンタビレ。それに…)
一行の最後に入ってきた桃色の髪の少女に、ルークの眉が跳ねた。ぬいぐるみを抱き締め、進み出る様子があどけない。
烈風のシンクも年若いようだが、あの少女もずいぶんと幼く見える。読んだ資料が確かならば、あれがアリエッタだ。元導師守護役であり、魔物と意思疎通出来る能力を持っているはず。
見つめていたのに気づいたのか、緋色の瞳がルークを見た。パチ、と目が合う。無垢な目に思わず、たじろげば、その目が戸惑ったように揺れ、柔らかな笑みとなった。挨拶だというように、ス、とアリエッタが頭を下げる。

「お前もよく知るヴァン・グランツ謡将率いる六神将が、お前をアクゼリュスまで護衛する。ここで顔を覚えておくがよい」

インゴベルトの声にこくりと頷きながら、ルークはアリエッタだけを見ていた。
何故か、緋色の目が気になって仕方なかった。





やっぱりさぁ、とルークは呟いた。背後で詠唱や譜歌を口にし、後衛をせっせと勤め、王族を前衛に押し出す和平の使者や襲撃犯にため息を零さずにはいられない。
時折、ちゃんと守って!などと頭のネジが全部抜けてるんじゃないのかと思いたくなるような発言も飛んでくるからなおさらだ。

(やっぱり、こんな非常識極まりない人間のいる世界なんて、滅びてもいいんじゃねぇの?)
続く価値なんてないだろう、こんな世界。少なくとも、自分の命と引き換えにしてまでも守りたいと思えるような世界ではないことは確かだ。よそ見してたら危ないぞ、ルーク、と眉を顰めて叱ってくる使用人も何もかもありえない。
危ないぞ、じゃないだろ。よそ見してようが何してようが、この身が傷一つ負うことなく守るのが護衛の役目じゃないのか、役立たず。
口に出さず、心の内だけで罵る。口に出しても無意味だからだ。それどころか、四方八方から文句が飛んでくる。これだからお坊ちゃまはだの、いいご身分ですねだの。実際、いいご身分だからな、俺は。ああ、まったく、もう疲れた。

いっそここで死んでしまおうか。それがいいかもしれない。魔物にやられて、いや、どうせなら、計画を何も知らされていない導師以上にお飾りな大詠師の差し金で送られてきた神託の盾騎士団に斬られてしまおうか。
いい考えじゃねぇの、とルークは口の端を吊り上げる。和平の仲介を引き受けたローレライ教団が、秘密裏にとはいえ、キムラスカ国王より世界の命運を掛けた命令を受けている自分を殺したとなれば、ダアトとキムラスカに亀裂が入ることは間違いない。
しかも、表向きには、第三王位継承者である自分が、護衛もまともに受けられなかったどころか、和平の使者とはいえ、仮にも軍人を後衛に守って殺されたと広まれば、キムラスカが面子を保つためには、マルクトやダアトと戦争を起こすことにだってなるかもしれない。かくして世界は混沌の時代に突入だ。

まあ、そう簡単にことは運ばないだろうが、それはそれで悪くはない。これもまた滅びへの一歩だ。
うん、とルークは頷き、神託の盾騎士の剣で弾かれたふりをし、己の剣を手放した。ルーク!とガイが叫んだが、遅すぎる、何もかも。

(これで全部終わっちまえ)
もう何も考えたくない。
けれど、ルークの時間は終わらなかった。

「ダメ、です!」

ガァッ!と獣の唸り声と一陣の風が吹いたと思ったときには、ルークに斬りかかろうとしていた神託の盾騎士はライガの下敷きになっていた。思わず、舌打ちする。
そのライガには、見覚えがあった。聞こえた声にも。

「ルーク様、ご無事ですか?!全員、下がる、です!この方を誰だと思ってるですか!」

駆け寄ってくる少女を、ルークは黙って見下ろした。何でここにいるんだ、と苛立たしげに息を吐く。六神将としての任務の傍ら、自分の護衛も言いつかっているから、今回の捜索に魔物と意思疎通が出来るアリエッタが適任だと借り出されたのだろうが。
苛立ち露わにアリエッタを睥睨する。けれど、アリエッタは怯むことなく、ルークの身体を確かめ、怪我をしていないことにホッとしたように愁眉を開いた。
けれど、またすぐにその眉は寄せられた。ルークの手から落ちた、血と膏に曇った真剣を見咎めて。

「どうして、ルーク様、あんなの、持ってるですか」
「戦わされてたからに決まってるだろ」
「な…」

ぽかん、と口を開け、絶句したアリエッタに苦笑する。六神将の一人、幼獣のアリエッタの登場に、神託の盾騎士団のみならず、ジェイドたちもざわめいていたが、ルークは意に介さず、くくく、と低く笑った。
アリエッタの頭を、くしゃりと撫でる。

「どうした、アリエッタ。顔色悪いぞ?めったにない笑い話だ。笑えよ」
「…ルーク、様」
「ローレライ教団の軍服を着た馬鹿女が俺を誘拐し、家に送るわーなんて勝手なこと言い出しかと思えば、前衛押し付けてきやがったのが、最初の笑い話だな。ああ、あれか。ティア、お前、反省してるフリして、本当のところは被害者である俺を魔物に殺させるつもりだったのか?で、あとは雲隠れするつもりだったとか。それともモースの命令とかか?俺を今のうちに捕獲しておこうっていう。あれにそんな頭があるとは思えないけどな。ま、何でもいいけど。お前、どうせ死ぬだけだし」
「な…、どうして私が死ななきゃいけないの!」
「ほら、見ろよ、アリエッタ。すげぇだろ、あれ。あんな馬鹿な生き物、いるんだな。…本当、救いようのない」

くっ、と目を細めて笑うルークの真意に気づいたのは、アリエッタだけだった。緋色の目が見開き、髪を振り乱して、ぶんぶんと強く首が振られる。そんなに強く振ったら、目が回るだろ、とルークは苦笑を零した。
ティアへと向けた冷笑とは違い、それは本人も気づかぬうちに、どこか柔らかさを含んでいた。

「あんなのばっかりじゃ、ないです。世界には、もっともっと綺麗なもの、いっぱいで、綺麗な人もいっぱいです…ッ」
「アリエッタの言うことも正しいかもしれないけど、少なくとも俺が外に連れ出されてから見たものは、どれもこれも醜いものばっかりだったぜ。和平なんて言いながら、相手国の王族脅してくるような外交下手とか、主を守りもせず、へらへら笑って襲撃犯といちゃついてるような使用人とか、チーグルは教団の聖獣ですからなんて言って、棲み処を燃やされた上、産後の身体を休めてるライガクイーンに出て行けと一方的に命じるような導師様とかさ。どっちが被害者だと思ってんだか」

最後の台詞に、ぴく、とアリエッタの頬が強張る。カタカタと震えだした小柄な身体に、ルークは吐息し、肩をぽん、と叩いて、ぐ、と握った。
不安を湛えた緋色の目が、ルークを見つめる。ルークの背後では、イオンが蒼ざめた顔でアリエッタを見つめていた。

「ライガクイーンも卵も無事だ。俺が超振動使って、キノコロードに送ったから」
「な…ライガクイーンは死んだはずでは…」
「ああ、お前が譜術放って殺したはずなのにー、って?お前、自分の力、過信しすぎだろ。てめぇの力で跡形もなく消し去れるほど、ライガクイーンは弱くねぇよ」

産後の疲労で力は弱まってはいたけれど、そうでなければ、ジェイドの放った譜術も一度や二度くらいは耐えてみせただろう。そして、次の詠唱を終える前に、ジェイドの喉笛を切り裂き、そこで終わり。
本来の力を出せる状況であれば、そんな展開になっていたはずだ。後衛でのうのうとしているような譜術師ごときが何を思い違いしているのか。死霊使いなどと讃えられて、調子に乗っているのか。

(バッカじゃねぇの)
自分が何故、和平の使者に選ばれたのか、考えもしなかったのだろうか。彼が選ばれたのは、実力や智謀もあるかもしれないが、何より、死んだとしても惜しくない人物だと判断されたからだ。アクゼリュスでこの自分とともに消滅したとしても、瘴気に侵されたとしても、仕方ないと諦められる人物だから。
もっとも本人は自分は皇帝の懐刀であり、重要人物なのだと鼻高々のようだが。あいつも救いようがないな、とルークは哂う。

「ママ、無事、なんですか?」
「ああ、あいつらの交渉にもなってねぇ交渉のせいで殺されるとか納得いかねぇし」
「っ、ありがとう、です!」

緋色の目を喜びで潤ませ、礼を言うアリエッタに、言葉に詰まる。礼を言われるつもりなんて、なかった。
ただ気に入らなかっただけだ。気まぐれに助けたに過ぎないのに。
ライガもまたルークへと近寄り、感謝を示すように鼻先を手へと擦り付けてきた。
喉もごろごろと嬉しそうに鳴っている。

「アリエッタ、ルーク様のこと、好きです」
「なっ、何言って…!」
「だから、絶対絶対、守ります」
「…お前」

そんなこと、誰も望んでねぇよ、と言いかけて、ルークは口を噤んだ。真っ直ぐに自分を見つめてくる緋色の視線が痛い。胸に、痛い。
自分は死ぬためだけに生まれてきたのに。世界を道連れに死んでやろうとすら、思っているのに。
この身に価値があるとすれば、それはあくまで代替品としてだ。被験者ルークを救うため、彼の代わりに預言を覆す。たいそうな価値に聞こえるが、所詮、道具。それだけの価値しかない。
好きだなどと、言ってもらえるような価値が自分にあるとは思えない。

「…馬鹿じゃねぇの」

ぽつりと呟き、ルークは首を振った。朱色の髪が、さらりと揺れる。
アリエッタが小さな手をルークへと伸ばしてきたが、一歩下がって、それを避ける。
傷ついたような色を見せるアリエッタの目から逃れるように、ルークは目を逸らした。

「くだらねぇ」

こんな世界が。すべてが。
何より、俺自身が。
吐息を零したルークの目は、すべてを拒絶するように閉じられた。





ランプを持ち、坑道を行くヴァンの後に続きながら、ルークは飴玉をころりと舌の上で転がした。救助活動中、一言、二言交わした少年がくれたものだ。無邪気な顔を見る限り、毒が入っているようには見えなかったが、どうせもうすぐ死ぬ身。たとえ入っていても構わないともらったもの。
あの少年も今頃はデオ峠を越えているころだろうか。母親に会えただろうか。
マスカットの香り漂うそれは、仄かな酸味と甘さをルークの口中に広げた。小さくなってきた飴をガリガリと噛み砕く。
甘さが、舌に残った。

「被験者ルーク──アッシュに、会ったそうだな」
「…ああ」

脳裏を過ぎるのは、豪奢に誂えられた鳥篭に閉じ込められた紅い髪の青年。最後に何か願いはあるかとインゴベルトに問われ、被験者に会いたいとルークは答えたのだ。監視の目を欺き、アクゼリュスを完璧に落とすため、ヴァンやリグレットによって教え込まれた超振動のコントロール能力を駆使し、被験者をアクゼリュスまで攫ってしまおうと心に決めて。
自分と同じ顔をした、被験者ルーク。彼は自身をアッシュを呼んだ。そして、それ以外の名で呼ばれることを、拒絶していた。
『聖なる焔の光』の燃えカスなんて自分を呼んで、嫌味のつもりかよ、と訊ねたルークに、アッシュは首を振った。自分に『聖なる焔の光』を名乗る資格がないから、アッシュと名乗っているのだと。

『それに、ルークはお前の名だと、俺は思っている』

お前のものだ。
アッシュは、そう、言った。
あとは何もなかった。謝罪の言葉も、恨み言も。アクゼリュスを自分の代わりに落とすことになるルークに、アッシュは決して謝らなかった。謝罪を口にしても、楽になるのは自分だけで、ルークには何ももたらさないとわかっているかのように。

「…あいつ、恨み言一つ、言わねーんだ」

七年前、秘預言に消滅預言が詠まれていることが判明し、レプリカである自分が作り出されてからというもの、ずっと軟禁されてきた自身を、嘆くことすらしなかった。自分勝手に喚いたなら、お前がいなければとでも、呪う言葉を一つでも吐いたなら、きっと自分は彼を連れ去っていた。
けれど、アッシュは頼む、とだけ言ったのだ。翡翠の目に静かな決意を宿し、頼む、と。
世界のためにとは言わなかった。お前自身のために頼むと、言われたような気がルークには、した。

「俺は世界なんて滅びちまえばいいって思ってたのに。あいつも世界を道連れにしていってやろうって、思ってたのに」
「…ああ、知っていた」
「アリエッタにでも、聞いたのか?」
「いいや、あの子は何も言っていない。私が勝手に気づいただけだ。お前は私の弟子だからな。師として、お前を見てきた。だから、気づいたのだ」

思わず、ルークは足を止め、ヴァンの背を凝視した。見てきた?気づいた?
どうして、とルークの唇が動く。他の誰も気づかなかったのに。
誰もが己の所業から目を逸らすように自分から目を逸らすばかり、だったのに。
ヴァンの足も止まり、ルークへと身体を向けた。
優しさが灯る目に、ルークは息を呑む。

「一番、近くにいたはずのガイですら、気づかなかったのに?」
「ガイラルディア様は、復讐で目が曇られていたからな…。いや、今も、か。ファブレをクビになった理由を、いまだ理解なされようとはしない。お前を今でも、我が侭なお坊ちゃまだとしか認識しておらぬ。だが、私や…そこにいる者たちは、違う」
「え?」

ザリ、と背後で靴が砂利を踏む音がした。ス、とランプを掲げたヴァンに促されるように振り返る。
六神将たちがみな、そこに揃って立っていた。

「私は貴方の主治医ですからね。患者のメンタル面にだって、気を遣うのは当然でしょう」
「私にとっても、お前は弟子だからな。可愛い弟子を思っているのは、閣下だけではないということだ」
「子どもにすべてを押し付けてのうのうとしていられるような卑怯者ではありたくないからな」
「あんたの目はガキのする目じゃないからね。嫌でも気づくさ」
「まあ、ほら…僕は、同じレプリカだし。あんたの気持ち、わかるからさ」

ディストが眼鏡を押し上げ、照れくさそうにしながら。
リグレットが慈愛を讃えた微笑みを浮かべながら。
ラルゴが穏やかな顔でルークを見守りながら。
カンタビレが皮肉に頬を吊り上げながらも、わかりにくい優しさをこめて。
シンクが仮面を外し、親愛の情の混じる苦笑を浮かべ、肩を竦めて。
みながみな、危険を冒してまでもルークを支えに側に来ていた。

ランプの蝋燭の明かりの揺らめきに合わせ、影を揺らめかせながら、小柄な身体が一歩、踏み出る。
アリエッタ、とルークは小さく呟いた。桃色の髪が、ふわりと揺れた。

「アリエッタ、言ったです。ルーク様のこと、守るって」
「……」
「アリエッタのイオン様、絶望したまま、死んじゃったです。アリエッタ、イオン様のこと、守れなかった。助けて、あげられなかった」

きゅ、と眉根を寄せ、ぬいぐるみを縋るようにアリエッタが抱き締める。ルークはちらりとシンクを見やった。シンクもイオンも、今は亡き、被験者イオンのレプリカだ。シンクの方が導師であればよかったのにな、と思ったことをふと思い出す。イオンは優しくあろうとすることばかり考えて、導師としての責任の重さをわかっていなかったから。
今はヴァンや六神将たちに諭され、少しは責任の意味を理解するようになったと聞く。そのイオンもセフィロトの扉を開けた後は、ダアトへと戻って行った。

「だから、ルーク様は、絶対守るって、アリエッタ決めたです。最後まで側にいるって、決めたです」
「何で…」
「アリエッタ、ルーク様と、生きたいです。みんなみんな、そうです!」

こくり、とアリエッタの言葉に頷く六神将たちに、言葉が出てこない。何の皮肉も浮かんでこない。
馬鹿じゃねぇの、と酷く震えた声で、呟くのが精一杯で。
進み出たアリエッタの手が、今度こそ、離しはしないというように、ルークの手をしっかりと掴んだ。そこに次々に重なる手。
ラルゴの大きな手が全員の手を隠すように覆い被さったところで、ヴァンの手もまた重なった。

「ルーク、私がお前をこの世界に生まれてくるようにしたのは、アッシュを救いたかったからだが、生まれてきたからには、お前にも命を全うして欲しいと思ってきた」
「…ヴァン、師匠」
「間違っても、死ぬために生まれてきて欲しかったわけではない。生きて欲しいからだ。生きて幸せになって欲しいからだ。子の幸せを願わぬ親などおらん。私はお前を弟子であり、息子だとも思っている」
「ッ、…んだよ」

何で、今さら言うんだ。何で、今言うんだ。
ちくしょう、とルークは呻く。これじゃ、これじゃあ、…死ねないじゃないか。
未練が、出来てしまったじゃないか。

「絶対、ルークもみんなも、生きて、幸せになるです」

本当は初めて会ったときから惹かれてやまなかった緋色の目を笑みに細めるアリエッタを見つめる。
そして、一人一人の顔を見回し、ルークはくしゃりと顔を歪めた。
口の中に残る飴玉の甘さが、泣きたくなるくらい切なかった。


END


後半部分がデータごと消えてしまった関係で(汗)ちょっと書き直してます…。
流れはもちろん変わっていませんが、台詞や情景描写等が少々変わっておりますー。
うう、すみません。リク下さったワタルさん、他のみなさんにご迷惑を…。
少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。

 

PR
Post your Comment
Name
Title
Mail
URL
Select Color
Comment
pass  emoji Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Trackback
この記事のトラックバックURL:
  BackHOME : Next 
カレンダー
03 2025/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
最新記事
WEB拍手
お礼文として、「アッシュと天使たち」から一本。
アッシュの話です。
楽しんで頂ければ、幸いです。

web拍手
最新コメント
[07/19 グミ]
[02/26 きんぎょ姫]
[02/26 きんぎょ姫]
[05/08 ひかり]
[05/02 ひかり]
リンク(サーチ&素材)
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析

月齢 wrote all articles.
Powered by Ninja.blog / TemplateDesign by TMP  

忍者ブログ[PR]