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月齢

女性向けブログ。ネタ語りや小説など。ルーク至上主義。

2025.04.20
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2009.04.08
ss

恋愛には四つの種類がある。情熱の恋、趣味の恋、肉体の恋、虚栄の恋。
byスタンダール

たまにネタとか求めて、お題サイトや名言・格言サイトを覗いているんですが、そのとき見つけた「恋愛の格言」から一つ。
ナタリア、ティア、アニス、ルークの順で書いてます。
誰がどの恋かは、それぞれの話のあとに載せてます。
アシュナタ、ルクティア、フロアニ好き注意。

注!ナタリア&ティア&アニスに厳しめ






ナタリア、と呼ばれるだけで、ナタリアの心は歓喜に震えた。
もっと呼んでくださいませ、と熱に浮かれた視線を、アッシュへと向ける。金色の睫毛で縁取られた緑の目は、媚びるように潤んでいる。
約束を覚えている貴方の声で、私を呼んでくださいな。

(ああ、それこそが私の喜びなのです)
紅い髪。翡翠の目。それは、キムラスカ王族の証。王家の蒼き血が流れる、何よりの印。
そして、アッシュには完璧な記憶もある。幼いころに交わした『約束』の記憶が。
ルークにも、朱色の髪、翡翠の目はあったけれど、彼には記憶がなかった。

(仕方のないことですけれど)
彼はレプリカであったから、記憶がないのも当然だ。まったく、あのルークに約束を思い出してくださいませと懇願してきた日々はなんだったのか。文字通り、徒労でしたわ、と後悔だけが過ぎる。
──故に、ナタリアはアッシュを愛する。
その上で、七年間をともに過ごした『レプリカルーク』を拒絶する。頭の中から排除する。
必要なのは、本物のルーク。記憶を持つ、本物の蒼き血を継ぐ、被験者ルーク。

ナタリアの頭の中に、結婚式のベルが鳴り響く。
キムラスカの民に祝福され、花びらが舞う祝宴。待ち遠しい、幼いころから夢見てきた祝宴だ。
本当は王の血を引いていなかったこの身が、正真正銘、女王となる待ち遠しい日。
本物の王女ではなかった自分が本物の女王となるには、被験者ルークが必要だ。彼の血が必要だ。王となる彼の隣が必要だ。

ナタリアはにっこり微笑み、アッシュに右手を差し出す。口付けを落としてくださいな、と言わんばかりの輝かしい笑みを、アッシュ一人に向ける。
けれど、アッシュはナタリアに近づこうともしなかった。一歩離れた場所で、ただ静かにナタリアを見つめている。

「どうなさいましたの?」

ねぇ、ルーク。
ナタリアは困惑しながらも、甘い乙女の声で囁いた。
彼は優しいから、自分の甘える声を無視することはないはずだ。
──けれど、アッシュの顔に浮かんだのは、軽蔑の表情だった。
ナタリアの笑みが、ぴきりと強張る。

「お前が欲しいのは、何だ、ナタリア」
「え…?」
「お前が本当に欲しているのは、俺自身じゃない。そうだろう?」
「何を、仰っているのか、わかりませんわ」

緑の目を揺らし、ナタリアはふらりとアッシュへ向かって足を踏み出す。アッシュの足が、ざり、と音を立て、その分、後ずさる。
ルーク、とナタリアは震える唇で、必死の思いで名を呼んだ。
違う、と怒気が篭った声が、ナタリアの耳朶を強く打つ。それは、初めてアッシュから向けられた怒りの声だった。
ナタリアの身体が、ぶるりと震えた。

「俺はルークじゃない、と何度言っても、お前はわからないんだな。それもそうか。『約束』を覚えている俺は、お前にとって、『ルーク』でなければ困るものな」
「ど、どうなさいましたの?今日の貴方はなんだか、おかしいですわ…ッ」
「いいや、おかしくなどない。ただ、目が覚めただけだ」

お前が欲しているのは、所詮、俺の名、俺の血──それを利用して得られる、確固たる『王家』の地位だということだと気づいただけだ。
断罪の刃のように、鋭く言い放ち、アッシュはナタリアに背を向けた。
長い紅い髪が背中でさらりと揺れる。
その背はナタリアをどこまでも拒絶していて、手を伸ばし、縋ることすらナタリアには赦されなかった。


──虚栄の恋(ナタリア)





ティアは満足そうに微笑んだ。
従順に音素のコントロールの教えを請うルークに向かって。

(うふふ、なんて可愛いの)
素直で、愛らしくて、本当に可愛いわ。
昔の傲慢さなど、どこにもない。私に素直に笑いかけてくるルークは、本当に素敵。
──故に、ティアはルークを可愛がる。
素直で従順な少年の眼差しに、心地よさを覚える。

容姿の整った、どこかあどけなさを残すルークは、ティアの要望を満たす存在だった。
自分を慕う、可愛いもの。ティアが求めるのは、そういう存在だったから。ティアにとって、可愛いからこそ、愛でる価値があり、可愛くないものは、いらぬもの。
そして、ティアの価値観において、以前のルークは価値のないものだった。己に歯向かうばかりの、浅はかで、可愛げのない傲慢な青年。そんな存在だと、認識していた。
けれど、アクゼリュスを崩落させた罪を一身に背負う、今のルークは、ティアにとって、価値があった。ユリアの子孫たる自分が愛でるだけの価値が。

(可愛い可愛い、私のルーク)
ずっと素直でいるのなら、もっと可愛がってあげる。好きでいてあげる。
ティアは一方的な愛情を、ルークへと向ける。身勝手なだけの、愛玩人形を愛でるかのような愛情を。

ルークが顔を上げ、翡翠の目で、じ、とティアを見つめた。なぁに?と柔らかに目を細め、ティアは首を傾ぐ。
俺さ、とルークが唇を開いた。

「ティアが結婚することになったら、真っ先におめでとう、って言うから」
「…え?」
「ユリアの子孫、残すのって、ティアの役目なんだろ?ヴァン師匠は子孫残す気ないだろうし…。この間、神託の盾騎士団に寄ったときにさ、トリトハイム詠師にも言われたんだ。今では、ユリアの直系の子孫はティア一人に等しいから、ティアに悪い虫?っていうか…ええと、なんか変な男が近づかないようにして欲しい、って」

ガイやジェイドと一緒にいたら、言われたんだよな、とルークが他意などない顔で、言う。自分に少しでも恋心を抱いてたならば、トリトハイムの言葉に、もっと動じてもいいはずだ。だって、トリトハイムの言葉は、牽制そのもの。なのに、ルークは。
ティアはロッドを持つ自分の手が、カタカタと震えていることに気がついた。

(…私は)
ルークにとって、恋愛対象ではないのだ。その範疇にも入っていない。
そんな、とティアは震える。そんなことって。
私はこんなにもルークを愛しく思っているのに…!
けれど、けれど、ルークは自分のこと、など。

それが当然だと、ティアは気づかない。己のそれが、一方的なばかりで、押し付けるだけのものでしかないと、気がつかない。
それにルークが応える必要などないことに、気がつかない。

「ティアの結婚相手って、どんなやつだろうな」

結婚式楽しみにしてるよ。
──お前に恋心なんて抱くわけがないだろ?
無邪気な笑みに、ティアはそんなふうに言われた気がした。


──趣味の恋(ティア)





守らなくちゃいけないの。
無邪気で無垢な、幼いフローリアン。この子を守るのが、私の役目。
アニスは食事を取るフローリアンの横に座り、ハンカチを手に持った。

「もう、フローリアンったら。ほっぺたにご飯粒、ついてるよ!」
「どこどこ?」
「ああ、ほら、動かないで」

ん、と顔を向けるフローリアンの頬を、そっとハンカチで拭う。姉のように接するアニスに、フローリアンがにこりと笑う。
アニスはその笑みに、満足そうに笑みを返す。

(本当に、そっくり)
けれど、イオン様とは違う笑みだ。イオン様は、こんなにあけすけな笑みなど見せてはくれなかったから。
だけど、とアニスは思う。フローリアンとイオン様は本当に、本当によく似ている。当たり前だ。同じ被験者から生み出されたレプリカなのだから。
──故に、アニスはフローリアンを守る。
守れなかった、死なせてしまったイオンの代わりに、イオンそっくりのフローリアンを守る。

見てよ、とアニスはフローリアンを人々へと見せ付ける。イオンそっくりの顔を見せ付ける。
私は守ってる。ちゃんと守ってるの。
イオン様のことだって、本当は守りたかったの。死なせたくなんてなかったの。
ほら、見て。ちゃんと見て。
私はフローリアンを愛してあげているでしょう?
イオン様のことだって、好きだった。だから、精一杯、守ろうとしたの。でも、守れなかった。両親が、人質に取られていたから。
悪いのは私じゃない。だって、私は一生懸命、守ろうとしたもの。悪いのは、モースだもん。

アニスは見せ付ける。フローリアンを守ることで、イオンも守ろうとしたのだと、人々に思い込ませようと必死の思いで。
罪を問い詰められたくなくて。咎められたくなくて。咎められることが、怖くて。
導師を『死なせた』罪を、『殺す』ことに加担した罪を責められたくなくて。
その罪が、自分のものではないと思い込みたくて。

「フローリアン、ピーマンも食べなきゃダメだよ!」
「うう…。だって、苦いんだよ、アニス」
「栄養あるんだから、ダーメ」

アニスはツインテールを揺らして、自分が思い描く可愛らしいしぐさでフローリアンを叱る。
いかにフローリアンが自分に懐いているか、さぁ、見てよ、と心のうちで思いながら。
イオン様もそうだったの、とフローリアンの世話を焼きながら、人々へと見せ付ける。
同じ顔のフローリアンがそうであるように、イオン様も、私が好きだったの。だから、イオン様はきっと望まない。私が罰せられることなんて、望まない。
だから、誰も私を責めないで。それは許されないんだから。
私は、フローリアンに──イオン様に、愛されているんだから。

「アニス・タトリン」

ビクリ、とアニスの肩が跳ねた。何でしょうか、と引き攣りそうになる笑みを顔に貼り付け、振り返る。
佇むトリトハイム詠師が、静かにアニスを見下ろしていた。

「話がある。──お前が導師イオンの導師守護役であったころのことについて、な」
「でもぉ、私、今、フローリアンに食事させてて…」
「それは、他の者に任せる。マルクトからもタルタロス襲撃に関して、正式な調査の要請があったのだ。確かに、お前は今では英雄と讃えられているが」

犯した罪からは、逃げられん。
罪の言葉に、フローリアンが不思議そうに首を傾ぎ、震えるアニスに、どうしたの?と問いかけた。フローリアンは私じゃなきゃ、嫌だよね、とアニスは青ざめた顔でフローリアンに訊ねた。

(言ってよ、フローリアン)
言いなさいよ、フローリアン。アニスじゃなきゃイヤだって。アニスがいいって。ほら。
フローリアンがきょとん、と瞬き、にっこり笑って首を振った。

「僕、アニスがいなくても、ちゃんと食べられるよ!」

ほかの人でも平気だよ。
イオンとは違う幼い笑顔でフローリアンは、そうはっきり言った。
叫びかけたアニスの口はトリトハイムの鋭い叱責とトリトハイムの背後に立つ神託の盾騎士の二人の視線に塞がれ、従う他、なかった。


──肉体の恋(アニス)





真っ白なセレニアの花。
初めて見た海。
そこに反射し、煌く月。
外の世界は美しい。朱色の長い髪をなびかせ、初めて外へと連れ出された少年は、感動した。

蔑みの目。
澱む瘴気。
罵りの言葉。
世界は、醜くもあった。信じていた人は、あっさりと自分を裏切った。お前など、人形でしかなかったのだと、裏切った。
仲間だと口にしていた人たちも、あっさりと自分を見捨てた。
何にも、なかった。醜い世界に一人、少年は取り残された。

けれど。
地下から這い上がって見た空は、変わらず、青くて。太陽は眩しくて。
仲間と口にした人たちは、少年を拾い上げはしたものの、相変わらず、信じてくれることはなかったけれど、無償の信頼を向けてくれる人たちにも出会えた。
信じると、言ってくれた人たちがいた。
罪に塗れた手を、躊躇いなく握ってくれる人たちがいた。
笑いかけてくれる人たちがいた。

屋敷に軟禁され、狭い狭い世界で、恋焦がれてきた外の世界。
そこは綺麗で、醜くて。怖いものも溢れていたけれど、優しいものも溢れていて。
今、腕に抱く魔物の仔のように、温かいものも、確かにあって。
世界は優しく厳しく辛い。だからこそ、焦がれずにはいられないのだろうか、とルークは思う。
きっと自分は、今までも、これからも、世界を恋しく思うのだろう。たとえ、報われなくとも。
そんな思いが、頭を過ぎる。

「……」

ルークは、はぁ、と白い息を吐き出し、ケテルブルクの街を見渡した。
真っ白な雪で覆われた街を、子どもたちが駆けて行く。楽しそうな顔で、未来を信じている顔で。
壊したなくないな、とルークは微笑みながら、そんな子どもたちを見送り、思う。腕の中で、ぴょこぴょこ、耳を動かし、ミュウが首を傾げた。

「ご主人さま?何を笑ってるですの?」
「ん、守りたいなぁ、って思って」
「?」
「あんなふうにさ、子どもたちが不安もなく、信じてる未来を守りたいなぁ、って思ったんだ」

珍しく、ケテルブルクの厚い雲が割れ、僅かに太陽が顔を覗かせた。キラキラと雪が煌き、目に痛いほどだ。
ああ、だけど、綺麗だなぁ、とルークは笑った。目を細め、温かなミュウの身体を抱き締めながら、幸せそうな顔で、笑った。
ミュウも、そんな主人の笑顔に、嬉しそうに耳を揺らして、笑う。

「世界はさ、やっぱり、綺麗だな!」
「みゅう!」

──故に、ルークは世界を救う。


──情熱の恋(ルーク)


END

 

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