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月齢

女性向けブログ。ネタ語りや小説など。ルーク至上主義。

2025.04.21
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2009.04.06
ss

アシュルク子。悲恋。
ルークは女性なので注意。
また、二人は双子です(兄妹)
預言には双子が詠まれ、アッシュとルーク、それぞれの結婚も詠まれています。
ホド戦争は起きてませんが、マルクトとの間は冷戦状態。
が、和平のことも預言には詠まれています。






母から十五の誕生日に贈られた鏡台を前に、淡いピンクのルージュを、ルークは唇に引いた。ふっくらとした唇が、艶やかに輝く。
マスカラを塗り、瞼にも薄い紫のアイカラーを乗せる。
朱色の睫毛に縁取られた翡翠の目が、より際立つ。

「…お前が、化粧か」
「……アッシュ」

いつのまに部屋に入ってきたのか、壁に寄りかかり、鏡に映る、嘲るように唇を吊り上げたアッシュを見つめる。
自分とよく似た顔。けれど、精悍な顔だ。双子の兄であるアッシュは、男なのだから当然だ。
ルークの鏡の中の顔が、ひっそりと笑う。
ああ、そうだ。彼は自分とは違う。
女として生まれた自分とは、違うのだ。
アッシュは王となり、この国を導く人だ。

(わかってたことだ)
幼いころは、信じて疑わなかった。
ずっとずっと一緒にいられると思っていた。二人で頬をくっつけ合って、笑い転げていられるとそう、信じて。

(…わかってる)
長じてから、それは夢物語でしかないのだと、知った。
自分とアッシュはともにはいられない。
双子として生まれてきた自分たちは、二人で一人だと信じてきたけれど──別の人生を歩まねばならぬのだ。
アッシュはナタリアと結婚し、王となり。
そして、自分は和平の証としてマルクトから夫を迎え、ファブレ公爵家を支えていく。
対等であったはずの双子の兄妹は、離れ離れになるのだ。自分はアッシュの臣下となる。王妹であろうと、臣下であることに変わりはない。
預言は容赦なく、未来を詠み、それに従う以外の道を決して許さない。
ましてやそれが国のためとなるのだから、なおさらだ。

「跳ねっ返りのお前が、な」
「……」

鏡の中、ゆっくりとアッシュが近づいてくる。
眉間の皺は深く、翡翠の目には深い悲しみ、憤り。
そして、苦悩。

「…それも、他の男のためになんぞ」
「俺の──いや、私の夫になる人だ、アッシュ。アッシュの義弟になるんだよ」
「年上の義弟か。…そんなもの、俺はいらない」

アッシュの腕が、背後からルークの首に絡む。ぱさりと紅い髪が、ルークの頬に触れ、優美なドレスに包まれた、慎ましやかな胸に落ちた。
縋りついてくるような腕に、手を添えたかった。けれど、ルークはそれをしなかった。
してはならないと、拳を握る。
パールが入ったピンク色のマニキュアを塗った爪が、手のひらに食い込んだ。

「そんなこと言うなよ、アッシュ。ちゃんと祝福してくれよ」
「無理だ」
「はは、即答かよ。…ダメだよ、アッシュ。俺たちはさ、違う道を行くんだよ。アッシュはナタリアと結婚して、王にならなきゃ」
「…俺は」
「さよなら、アッシュ。俺がお前にあげる言葉は、これだけだ」

まっすぐに鏡を見つめ、ルークは言う。
アッシュの身体が大きく震え、アッシュは何も言わず、駈け出して行った。
ばたばたと足音が遠ざかっていく。遠く、なっていく。

「…ダメ、なんだよ、アッシュ」

一緒に生まれて、一緒に成長して──最期まで、一緒に、いられると無邪気に信じていられた幼いころは、もう手が届かないほど、遠いのだ。
ともにはいられない。いられないのだ。
どれほど望もうとも、自分たちには生まれながらに背負った責任がある。己の思いのままに、自由に生きることは許されない。
どれほど互いを唯一無二と愛そうとも、一緒にはいられない。ひとつにはなれない、戻れない。
無邪気な子どものままでは、いられない。

(大好きだけど、さよならだ)
マスカラが落ちてしまう。いけない。
そう思いながらも、ルークの瞳から、ぽろりぽろりと涙が落ちる。
チークを刷かずとも、淡い桃色の頬を伝い、落ちていく。

(俺は、もうすぐ、アッシュではない他人と一緒になるんだ)
その人を支え、ともに生きていくのだ。
せめて、死んでからだけでもと願うけれど、死んでからも、アッシュとは一緒にはいられない。
アッシュは王家の墓に、自分は夫とともに公爵家の墓に葬られる。
骨となってからも、一緒にはいられない。
永遠に自分たちの道は分かたれてしまったから。

「さよなら、アッシュ」

大好きだったよ、俺の半身。
アッシュの幸せを、近くて遠いこの場所で、俺は祈り続けよう。


END


特にルークの相手は決めてません。
アスランでもガイでもよし。あ、ヴァンもありか。ヴァンはフェンデ家だし一応、ありかな…。

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