月齢
女性向けブログ。ネタ語りや小説など。ルーク至上主義。
ライドウ×TOA
思わず、書いてしまった話です。
一応、ネタ語りというほどではないですが、語ってるのは、こちら。
ローテルロー橋を越えて馬車を降りてエンゲーブまで向かう道中の話。
ティアが素直というか、可愛いもの好きを隠してません。また公爵邸を襲撃してますが、一応、理由もある上で行ってます(それでも、傍迷惑は傍迷惑なんですが<汗)
ティアは、神託の盾騎士団には入団していない裏設定だったり。
仲魔×ライドウというか、ヨシツネ×ライドウ気味。
周囲を囲む魔物の群れに、ライドウはルークとティアを背に庇い、妖刀ゲイボルグを抜いた。右手で刀を構え、左手で管を探る。
ウルフたちは餓えているらしく、ぼたぼたと涎がその裂けた口から零れ落ちている。
「くっ、数が多すぎるわ!」
「くそ…ッ」
『…案ずるな、二人とも。ライがいれば、問題ない』
焦燥を顔に滲ませるティアとルークに、黒猫ゴウトが声を掛ける。デビルサマナーではなくとも、第七音素の素養があれば、このオールドラントいう世界では、ゴウトの声が聞こえるらしく、二人はゴウトを見下ろし、だけど、と戸惑いの目を向けた。
ルークがライドウの背に視線を移し、ライドウ、と不安そうに声を掛ける。ライドウはちらりとルークとティアを見やり、こくりと頷いた。
「ゴウトの言うとおりです」
問題ありません。
ライドウは一言返し、躍りかかって来たウルフを一匹、刀で一閃した。ギャウンッ!と叫び声を残し、腹を切り裂かれたウルフの身体が音素に返る。
それをマグネタイトとして得ながら、ライドウは鼻息を荒くするウルフたちを一瞥し、管を抜いた。
「ヨシツネ!」
名を呼び、管の封を解く。
翠色に発光するマグネタイトの光が管から解き放たれ、姿を見せたのは、若武者の姿をした悪魔、ヨシツネだった。長い黒髪が、さらりとたゆたう。
オールドラントでは異界にあるかのごとく、悪魔の姿を素養のない人間にも見ることが出来るために、見たことのない鎧を纏うヨシツネの姿に、ティアとルークの二人は目を見開いた。
「数が多い。纏めて払うぞ」
「おお、任せとけ。行くぜぇ、ライドウ!」
「はああぁぁ!」
ライドウとヨシツネの呼吸が合わさり、刀が震える。
高く刀を掲げ、ライドウはヨシツネの協力のもと、技を放った。
「十文字斬り!」
大地に刀が突き刺さり、十文字に光が走る。周囲をぐるりと囲んでいたウルフたちは一掃され、次から次へと音素に返っていった。どうにか直撃を免れ、生き残ったものも、尻尾を丸め、逃げ去っていく。
ウルフたちが残らず消え去り、ティアやルークの口から安堵の吐息が漏れた。
「すっげぇな、ライドウ!」
「あれだけの数の魔物をこんなに簡単に…。すごいわ」
「仲魔の──ヨシツネの協力があればこそです」
キラキラと焦がれるような視線を向けてくるルークと、畏怖と感嘆のこもる息を吐くティアに、ライドウは小さく苦笑する。
ありがとう、ヨシツネ、とヨシツネに顔を向ければ、ヨシツネが肩を竦めた。
「わんころどもを追い払っただけだろ。たいしたことじゃねぇっての。どうせなら、もっと骨のある奴相手に呼べよな」
「もちろんだ。そんな相手に出会ったときには、お前の助けがいるだろうからな」
「嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか。お前、俺がいないと、駄目だよなぁ、本当」
「そうだな、頼りにしている」
ライドウはおどけたように笑うヨシツネに、ふ、と微かな笑みを零す。ぐ、とヨシツネが口ごもり、視線が泳ぐ。その頬が、僅かに赤い。
ゴウトが深い深いため息を吐き、首を振った。
「人間みてぇに見えるけど…悪魔、なんだよな?」
ヨシツネの顔を、ルークが興味津々の態で覗き込む。ああ?と眉根を寄せ、ヨシツネがルークを睨んだ。
それにも怯むことなく、好奇心旺盛な子どもの顔は輝きを失わない。ちら、とヨシツネの目が、助けを求めるようにライドウを見やった。
ライドウが口の端を僅かに吊り上げ、笑う。
「ええ、そのとおりです。確かに、ヨシツネは人によく似た姿ですが、悪魔ですよ」
「おお、よろしくな」
「よ、よろしく…。俺、ルークってんだ」
「私はティアよ。…ねぇ、他には、どんな仲魔がいるの?」
首を傾ぎ、ライドウの胸のホルスターに収められた管を見つめるティアに、ライドウはそうですね、と視線を管へと落とす。
人が悪魔として一般的に想像するような恐ろしげな風貌の者もいれば、見る者を魅了するように美しい姿をした者もいる。むやみに二人を怖がらせるのは得策ではないか、とライドウは管の中から二本選び、封を解いた。
現れたのは、愛らしい少女の姿をした疾風属モー・ショボーと、ライドウの格好を真似た銀氷属ライホーだった。
「もう、やっと呼んでくれたね、ライ!」
「待ちくたびれて、溶けちゃうところだったホー!オイラも活躍するホ!」
「いや、敵なら、もうヨシツネと片付けた。少し、ルークさんとティアさんに紹介しておこうと思ってな」
戦うんじゃないのか、とモー・ショボーとライホーが少しばかり残念そうに顔を曇らせる。次の機会にな、とライドウは微苦笑を浮かべ、モー・ショボーとライホーの頭を撫でた。
約束ね!とモー・ショボーが嬉しげに羽根代わりの髪をはためかせ、ライドウの首に抱きつく。ライホーもまた、絶対だホ!とライドウと指きりをしようと腕を伸ばし──たところで、ティアにガバッ、と背後から抱きつかれた。
胸がぐ、と押し当てられ、ティアの腕の中でライホーが声を上げて、じたばたと身じろぐ。
「ヒホー?!」
「可愛い…!あなた、お名前は?あ、私はティアというの」
「てぃ、ティア?オイラはライホーくんだホ。十五代目葛葉ライホーになるのが夢だホ!」
「だから、ライドウと同じ格好してんのか?」
「そうだホ!」
揉み上げまで一緒だ、とルークがちょい、とライホーの揉み上げを引っ張る。何するんだホ、とライホーが困り顔で暴れた。が、ティアの腕は緩まない。
しっかと嬉しそうに満面の笑みで、ライホーを抱えている。
『…我を抱いているときも、あんな顔をしていたのか、ティアは』
「ええ、そうですよ、ゴウト。…満更でもなさそうでしたよね、ゴウトも」
『なっ、どういう意味だ!いや、確かに、あの胸は…ってそうではなくてだなぁ!』
「ゴウトも抱っこして欲しいの?もちろん、いくらでもするわ!」
『誰もそんなことは言っておらん!』
だから、抱き上げようとするでない!
ゴウトが叫び、ひらりとティアの手から逃げる。酷く残念そうな顔で、ティアはますますライホーを抱き締める腕を強くした。
ライホーが、なんかふかふかしてるホ、と暴れるのを止め、ティアの胸に頭を押し付けている。
ルークが身体を起こし、今度はモーショボーに興味を移した。その子も可愛いわ、とティアがうっとりと呟く。
「そいつ、飛べんのか。ああ、ええと…俺はルークだ、よろしくな」
「アタシは、モー・ショボーだよ。よろしくね、ニンゲン!」
「え、う、うん」
「私はティア。よろしくね、モー・ショボー」
「んー、そっちのニンゲンとも、よろしくしてあげてもいいけどぉ…ライに手出さないでね?」
出したら、ノウミソ、吸っちゃうから!
キャハハ、とモー・ショボーが愛らしい声で笑う。モー・ショボーの口から飛び出した単語に、ルークとティアの二人が揃って硬直する。意味を理解するのに、時間が掛かっているらしい。
ライドウは小さくため息を零し、モー・ショボーの頬を軽く抓った。
「二人が驚いているだろう、モー・ショボー」
「だってぇ。浮気しちゃダメだよ、ライ」
「…浮気も何もないと思うんだが」
「ガキんちょが何、生意気言ってんだっつーの」
「何よぉ、バカツネ!自分だってライのこと好きなくせに!」
「なっ、バッ、余計なこと、言ってんじゃねぇ!」
ぎゃあぎゃあとモー・ショボーとヨシツネが、声を荒げ、言い争う。耳元で騒がれ、ライドウは眉を顰めた。
ゴウトも騒々しさに鼻先に皺を寄せ、もう十分だろう、と尻尾でぺちん、とライドウの足を叩いた。
「三人とも戻れ。──戻管」
もうちょっと、という声に構わず、ライドウはヨシツネたちを管へと封じた。ティアの腕の中からライホーが消え、あ、と名残惜しそうな声が上がる。
まだ固まったままのルークの肩を、ライドウはポン、と叩いた。ハッ、とルークが我に返る。
「あ、えっと」
「驚かせてしまって、すみません」
「いや…。やっぱ、あんなに可愛く見えても、悪魔なんだな」
「ええ。ですが、僕にとっては大切な仲魔たちです」
ともに戦い、ともに生きる。そういう大切な仲魔たちだ。
ライドウの唇に、僅かな笑みが滲む。ルークがそんなライドウを見つめ、かり、と頬を掻いた。
「なんか、いいよな、そういうの」
「?」
「あいつらもライドウのこと、好きでしょうがねぇみたいな感じだったし、お互い、大事に思ってるみてぇな…何つーか、そういう関係が羨ましい」
「…ルークさん」
「俺、友だちっつったら、ガイくらいだったし」
苦笑を浮かべるルークに、ライドウはゆっくりと瞬く。何か言葉を掛けてやりたい気持ちはあるが、その肝心の言葉が浮かばない。
鳴海さんなら、上手い言葉の一つや二つ、簡単に浮かぶだろうに、と内心、嘆息する。ゴウトがクン、とルークのひらひら揺れる服の裾を軽く噛み、引っ張った。
『うぬは若い。出会いなど、これから先、いくらでも転がっていよう。互いに信頼できる仲間も得られるはずだ』
「…仲間」
『うむ。うぬの努力次第ではあるがな』
ん、と顔を綻ばせ、頷くルークに、ライドウはホッと息を吐く。年の功と言うべきか。ゴウトはこういうとき、頼りになる。
うぬもまだまだ若いな、と苦笑交じりにゴウトがライドウを見上げて言った。
「では、その来るべき出会いのためにも、ルークさんのことは、必ず、僕が守り通しましょう」
ルークを真っ直ぐに見つめ、この地へとやってきた理由である別件依頼を改めて口にする。
ティアもまたルークの隣に立ち、私も必ず、貴方をキムラスカに送り届けるわ、と頷いた。
「理由はどうであれ、私が貴方を連れ出してしまったことに変わりはないものね。貴方を無事、連れ帰ってから、罰を受けるわ」
「…ティア、でも」
「いいの。私は私の罪を償わないといけないもの。それに、その罪で兄さんにも──ヴァンにも連帯責任を負わせられるなら、本望だわ」
それで世界が救えるのなら。
ぐ、とロッドを握り締め、ティアが決意を蒼い瞳に煌かせる。公爵邸をヴァン襲撃の場に選んだのは、ダアトで襲えば、身内のいざこざだからとうやむやに片付けられる可能性があったからだと、外法属リリスの読心術で読まれてしまったティアは、ヴァンを襲った理由を隠さない。
公爵邸で襲撃し、かつ、自分がヴァンの妹だと知られれば、必ず、その理由を少なくともファブレ公爵が探らぬわけがないと、そう考えたためだ。そのことで死ぬことになろうとも構わない。そんな決意で、ティアは動いていた。
ヴァンへの信頼と、ティアの決意。その二つの間で揺れるルークは、複雑そうに顔を逸らす。ティアが少し寂しげに微笑むのを、ライドウとゴウトは見やり、視線を交わした。
『…厄介な依頼になりそうだな、ライ』
「ええ。ですが、完遂してみせます」
それがどんな依頼であっても、やり遂げるまでだ。──十四代目葛葉ライドウの名に懸けて。
ゴウトもうむ、と頷き、ライドウは学帽の鍔を指で摘み、深く被り直した。
END