月齢
女性向けブログ。ネタ語りや小説など。ルーク至上主義。
2008.07.01
ss
ルクノエ。ED後。
シュザンヌとノエルの会話。
シュザンヌたちはバチカルを追放され、シェリダンで暮らしています。
アッシュとルーク、二人帰還設定です。
注!キムラスカ王家厳しめ
ルクノエ。ED後。
シュザンヌとノエルの会話。
シュザンヌたちはバチカルを追放され、シェリダンで暮らしています。
アッシュとルーク、二人帰還設定です。
注!キムラスカ王家厳しめ
ハラハラとルークはアイロンを握る母の背を見守っていた。両手を握り締め、息も潜める。
シュザンヌが火傷した際に備え、水を張ったタライも用意済みだ。
そんなルークに、シュザンヌにアイロンの使い方を教えているノエルは、苦笑しながらも微笑ましさを覚えた。
胸にほこりと温かな思いが灯る。
「ノエル、襟はどうしたらいいのかしら。貴方のようにはうまく立てられなくて」
「ああ、襟はこうして服の向きを変えた方がアイロンがけしやすいですよ」
「まあ、そうなの。ノエルは本当に賢いわ」
「いえ…」
にこにこと微笑みとともに褒められ、ノエルの頬が薄く朱に染まった。
笑みを絶やさぬまま、服の向きを変え、アイロンを襟に当てるシュザンヌに、ノエルは自身もまた小さく笑みを零しながら、シュザンヌの手元を見守る。
クリムゾンのシャツにアイロンをかけ終わり、シュザンヌがアイロンを置いたときには、ノエルもシュザンヌもルークも、全員がほぅ、と安堵の息を漏らし、顔を見合わせ、笑った。
「あら、何です、ルーク。そのタライは」
「う、いえ、その、母上が火傷したときにと思って…」
「まあ、心配してくれたのね。ふふ、ルークは本当にいい子ね」
「っ」
ぼっ、と顔を赤らめ、片付けてきます!とそそくさと去っていくルークに、ノエルはシュザンヌと顔を見合わせ、微笑みを交わす。ルークが愛しいと、その笑みから互いに伝わってきた。
「本当に貴方がいてくれてよかったわ、ノエル」
「シュザンヌ様…」
「あらあら。様はやめて、ノエル。私は位を剥奪され、バチカルを追放された身。敬称など不要です」
「ですが」
「それに、貴方は将来の娘ですもの」
「そ、それは、その」
うふふ、と笑みを零すシュザンヌの顔に、影はない。王妹として何不自由なく生活を送ってきた身であろうに、今の自ら家事に働かねばならない生活を苦には思っていないらしい。
シュザンヌは、不便な生活を憎むのではなく、楽しんでいるのだ。それもこれも、ルークがいるからだろう。
一度、世界のために、命を奪われ、それでも、還って来た息子がいるから。
(でも、キムラスカは、許せない)
ノエルは奥歯を噛み締める。
ファブレ公爵家を廃し、バチカルから追放したキムラスカが許せないのだ。
二人はただ息子を守ろうとしただけなのに。
キムラスカは、アッシュとともに還って来たルークに、アッシュが犯したカイツール軍港襲撃などの罪を擦り付けようとした。つまり、レプリカルークこそ、『鮮血のアッシュ』であったと発表したのだ。アッシュこそ、世界を救った英雄だと。
そして、ルークをアッシュとして処刑しようとした。
公爵夫妻はそれに反対し、アッシュとルークの二人を連れ、マルクトへと亡命しようと画策した。が、インゴベルト王に気づかれ、四人はキムラスカ兵に囲まれた。
裁きの場で、王の前に進み出たのは、アッシュだった。三人を逃がすならば、貴方の望むまま、従うと。王にもなろう。ナタリアとも結婚しよう。鮮血のアッシュは既に死んだものとしよう。
この身をキムラスカに生涯捧げる代わりに、家族を逃がせと、アッシュは言った。三人の亡命を認めないならば、そのときは超振動を暴走させ、貴方もろともキムラスカを滅ぼすまで。そう脅しも、した。
ルークの超振動の力をマルクトへと渡すのは、と渋るインゴベルトに、ならば、キムラスカには留まりましょう、シェリダンにて素性を隠し、身を隠しましょう。監視も好きなようにすればいい。
クリムゾンもまた、アッシュの隣に立ち、言った。息子とともに、爪が手のひらへと食い込み、血が滲むほどの悔しさを堪えながら。
アッシュを一人生贄に捧げるような真似を、ルークは嫌がった。けれど、アッシュは首を振り、言ったのだ。お前を、父上や母上を守ることが出来るなら、何でもないと。
今なら言える。お前は俺の弟だ。家族を守るのは、長男の役目。笑うアッシュに、ルークは涙を耐え、頷き、三人でシェリダンへとやって来た。
「アッシュ…あの子の妻も、貴方のような子であればよかったでしょうに」
「……」
眉をひそめ、首を振るシュザンヌに、ノエルは黙って俯く。答えを返しようもない。
ナタリアは、アッシュが自分と結婚することが愛のためではなく、ルークたちのためであることに、憤慨したらしい。ルークを憎悪をもって睨みつけたという。
愛する婚約者から、自分への愛を奪ったのはお前だと言わんばかりに。
「アッシュは言っていたわ。ナタリアへの愛は、ルークと記憶を共有したときに醒めた、と」
ノエルは鉛を飲み込んだように顔を顰める。俯いていてよかった。こんな顔を見られたくはない。
ナタリアのルークへの態度が頭を過ぎる。いつでも、アッシュと比べていたように思う。比べ、アッシュを重ね、一人で失望していた。どうしてここにいるのが、本物のルークではないのでしょうと、残念がっているようだった。
シュザンヌが慈愛の満ちる笑みを浮かべ、ノエルの肩を抱いた。ありがとう、と呟くシュザンヌに、ノエルはぐ、と唇を噛み締め、涙を堪える。
「貴方のような優しい子がルークの側にいてくれて、本当によかったわ」
「私は…側にいることくらいしか、できません」
「いいのよ、それで。側にいること、それは案外難しいことよ?貴方の優しさが、ルークには必要なの」
顔を上げて、ノエル。
囁くシュザンヌに、ノエルはそろそろと顔を上げた。優しい母親の微笑が、そこにあった。
「ルークを愛してる?」
「はい」
「ふふ、貴方もよい子ね。貴方のような娘を持てるなんて、私は幸せだわ」
これからもよろしくね、ノエル。
将来、母となるシュザンヌに、ノエルは眦に涙を滲ませながら、笑って、力強く頷く。
戻ってきたルークが、微笑みあう二人に、不思議そうに首を傾いだ。
二人は秘密、と声をあげて幸せそうに笑った。
END
アッシュが一人貧乏くじですが、王になった暁にはクリムゾンたちを呼び戻し、ルークをクリムゾンの隠し子としようと思ってたりで、好き勝手する気満々なので、そんなに可哀想でもないかなと。
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