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月齢

女性向けブログ。ネタ語りや小説など。ルーク至上主義。

2025.04.19
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2009.08.10
web拍手ログその12

パラレルアシュルク。
現代物かつ、擬獣化の第二弾。(一本目はその11)
飼い主アッシュと愛犬ルークの話。
「好きなもの」(ルーク視点)
「君のために」(アッシュ視点)
の二本立てです。





好きなもの(ルーク視点)

ルークには、好きなものが三つある。
一つはご飯。
アッシュは手が離せないほど忙しいときを除き、必ず、手ずからルークのためのご飯を作る。
インターネットで調べたレシピや本屋で買い求めたレシピ集を参考に、キッチンに立ち、包丁を握るアッシュを、ルークはいつでもキラキラと目を輝かせて見上げているのだ。
時折、わふんっ、と鳴いて催促してしまうのは、愛嬌だ。
もう少しだから待っていろ、とアッシュが苦笑する顔を見るのも、ルークは好きだ。
アッシュが調理をする時間を含めた食事の時間が、好きなのだ。

二つめは、散歩である。
散歩の時間になると、ルークは毎回、リードを咥えて持ってきては、仕事をしているアッシュの足元に落とすことにしている。
尻尾もパタパタ振って、じっと熱心に見上げれば、アッシュは、もうそんな時間か、と少しだけ驚いたような声を出し、椅子の上で背筋を伸ばす。
そして、ルークは賢いな、と笑って頭を撫でてくれるのだ。
散歩の時間は、たまに違うことがある。
アッシュが仕事に行き詰まり、気分転換を求めるときにも、ルークを散歩に連れ出すからだ。
いつもとは違う時間の散歩も、ルークは楽しみにしていた。
時間が違うと、見える景色も、そして、通りがかる電信柱に残された『手紙』も違う。
すれ違う人も、違う。
朝の早い時間だと、通学途中の子どもたちとすれ違うことがある。
子どもは苦手ではあるけれど、可愛いと褒められることは嬉しいもので、何より、気をつけて、と子どもたちへとアッシュが向ける柔らかい笑みを見ることができるのがよかった。

三つめは、飼い主アッシュ。
ルークの世界にとって、何よりも欠かせない人だ。
ご飯も散歩も、アッシュがいなくては、美味しくないし、面白くない。
アッシュがいるから、毎日が楽しくて、幸せなのだ。
アッシュがいない生活など、ルークには考えられない。
アッシュ以外の人が飼い主だったら。
そんなことも、ルークは考えたことがない。
だから、アッシュにはずっと側にいて欲しい、とルークは思っている。
自分はアッシュよりも先に死んでしまうけれど、最期の瞬間まで、側にいたいと祈っている。
死ぬときは、アッシュの温かい腕の中がいい。
病院の手術台の上でなんか、絶対に嫌だ。

(アッシュ、アッシュ。大好き)
きゅーん、きゅうん。
ルークは甘える声で鳴き、アッシュの足に絡みつく。
頭を足の甲に擦りつけ、尻尾でぱたぱた、脛を叩く。
お前は本当に甘えただな、とアッシュが笑う。
ころん、と引っ繰り返って、お腹を見せれば、アッシュの笑みが深まった。

「撫でろって?」

仕方ないな。
優しく、苦笑するアッシュの目が、緩やかに細められている。
ルークのお腹を撫でるアッシュの手は、眼差しと同じく優しい。
ルークの尻尾が、床を掃くように揺れる。

(死ぬまで、アッシュの側にいるから)
まだそれは先の話だけれど、必ず訪れる、お別れの瞬間。
そのときまで、アッシュの側にいるから。
これまでもこれからも、そして、死んでしまったあとも、アッシュを一番大好きでいるから、だから。
自分がいなくなってしまっても、笑っていて欲しいな、とルークは願う。
幸せになって欲しいなぁ、と思う。

「わふんっ!」

アッシュ、大好き!
ルークは胸いっぱいの愛を込めて、アッシュに向かって鳴いた。


END




君のために(アッシュ視点)

ロープで作られた骨の形をしている玩具で、ルークと引っ張り合いをして遊びながら、アッシュは一人思う。
ルークより先には、決して死ぬまい、と。
預ける相手がいないわけではない。
両親は二年前に事故で亡くなってしまったが、一つ年上の従姉妹、ナタリアがいる。
面倒見のいい彼女のことだ。
ルークの面倒も、愛情を注いでみてくれるであろうことはわかっている。

けれど、アッシュ自身が、嫌だった。
ルークを誰かに預け、先に死ぬのは、嫌だった。
ルークは自分を愛してくれている。
心からの信頼を寄せてくれている。
そんな愛しい愛しい愛犬の最期を看取るのは、自分の役目だ。
ルークの最期の瞬間に、ルークの身体を抱いて、寄り添ってやるのは自分の役目だ。
そうでなければ、ルークも安心して逝けはしまい。

「わうー…っ、うー!」

ぎりぎりと玩具を引っ張り、唸るルークに簡単には負けないからな、と笑って、アッシュも玩具を引っ張る。
引っ張り合いが楽しくて仕方ないのか、唸り声に反し、ルークの尻尾はぶんぶんと激しく揺れている。

(ルークの寿命は、俺より短い)
犬と人間。
医療の発達で犬の寿命も延びたとはいえ、二十年足らずの命だ。
百年生きる人間も多くなった現代に生きる自分とでは、比べるまでもなく、ルークの寿命は短い。
まず、自分の方がルークより長く生きるだろう。
だが、両親が巻き込まれたように不慮の事故や、病気はいつ襲ってくるかわからないものだ。

(せめて、病気だけでも、気をつけないとな)
事故は不可抗力の場合があるが、病気は自分が健康面に気を配ることを忘れなければ、回避出来る可能性がある。
ルークと暮らし始めてからというもの、アッシュは自分の生活を見直し、大幅に改善した。
忙しさにかまけ、栄養剤で済ませることもあった食事が、最も改善された。
ルークのために食事を作るついでに、自炊するようになったのだ。
最近では、馴染みの取引き相手やナタリアにも、肉がついて、顔色がよくなったと安堵に満ちた笑みを向けられるくらいだ。
以前の自分は、よほど不健康に見えていたらしい。
確かに、以前とは肌の張りが違う気もする。隈も薄くなったようだ。

(今の俺には、責任があるからな)
ルークという、命を預かる責任が。
ルークのために、その責任を忘れまい、とアッシュは誓う。
ルークとともに生きるために、ルークの幸せのために、自分のことも大事にしなくては。

「ルーク、お前が好きだよ」

アッシュは微笑み、玩具を引っ張るルークを見つめる。
ルークがわんっ、と嬉しげに鳴き、ポロ、とその口から玩具が落ちた。
慌てて、玩具に噛み付くルークに、アッシュが可笑しそうに声を上げて笑った。


END

 

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アッシュの話です。
楽しんで頂ければ、幸いです。

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