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月齢

女性向けブログ。ネタ語りや小説など。ルーク至上主義。

2025.04.21
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2008.09.06
ss

スレルクアリ。
アリエッタを救いたくて、アリエッタと幸せになりたくて、ルークが逆行してきてます。
身体ごと逆行しているので、まだ生まれてませんが、ルークは二人います。
本編どおり、ローレライ解放後、いろいろ吹っ切れて、自由に生きることにしたルークの話。

注!同行者厳しめ




シロツメクサで作り上げた花冠を、ルークはアリエッタの頭にぽん、と乗せた。幾つもの丸い白い花は、アリエッタの桃色の髪を愛らしく飾り、ルークの顔にも笑みが自然と滲む。
ありがとう、とアリエッタがはにかむ姿も、ルークの笑みを深めさせた。

「大好きだよ、可愛い可愛い俺のアリエッタ」
「アリエッタも、ルーク、大好き…!」

両手を伸ばし、抱きついてきた小柄な身体を抱き上げる。温かな身体が嬉しい。愛しい。
冷たく動かなくなったアリエッタの身体を知っているからこそ、余計に。殊更に。
太陽と草の匂いがする桃色の髪に顔を埋める。手放すものかと、ルークはアリエッタの頭のてっぺんにキスを落とした。

(アリエッタは、俺のだ)
この無垢で、それでいて獣の強かさを持つ少女は、この自分のものだ。
被験者イオンのものでも、まして、ヴァンのものでもない。
今、この時に在るアリエッタは、紛れもなく、自分ひとりだけのアリエッタだ。
ルークに微笑み、ルークを愛する愛しいアリエッタ。

──ルークがローレライを取り込み、戻ってきたのも、すべてはアリエッタのためだった。
お前が過去へと戻れば、お前が救った世界は滅びると言われても、ルークにはそんなことはどうでもよかった。好きで救ったわけではない。救わされたのだ。お前は罪人なのだと、罪を償えと、そう強要されて。
罪があったのは、自分ひとりだけではなかったことに、以前の生では気づかなかったけれど、全てが終わり、音素帯で『仲間たち』を見ていてわかった。
エゴの塊のような『仲間たち』にも、罪はあったのだ。だが、彼らはそれを認めたくないあまりに、自分ひとりにそれを押し付けてきた。
すべてが、くだらなかった。憎らしかった。ルークの望みを叶えることを渋ったローレライも憎かった。
だから、ルークはローレライを組み敷き、取り込んだのだ。今では、ルークが第七音素集合体そのものだ。

償いのため。償いのため。償いのため。
まるで呪いのように自身に言い聞かせてきたことが、馬鹿らしかった。
ああ、彼らが望んだのは御しやすい人形。力を持った利用価値のある人形。ルークである必要など、きっとなかった。
だから、彼らに従順な人形と化した自分しか、彼らは受け入れなかったのだ。

贖いのため。贖いのため。贖いのため。
そのために、自分は。…自分は、生まれて初めて恋をした愛しい少女すら犠牲にしたのに。
母を想い、イオンを想い、仇を討たんがために果てていった少女を、最期まで抱き締めることすらできなかった。彼女にこそ、償いたかった。

でも、この生は、違う。
今、ここでこうして生きている自分は、もう迷わない。間違えない。
ローレライの力を手に入れたルークは、本来自分が生まれるはずだったときよりも、さらに前の時へと、ローレライの力によって物質として、再構築した身を戻した。
戻る時はしっかりと選んだ。アリエッタがライガクイーンに拾われ、娘として育てられてから。選んだのは、その時代。
アリエッタが無垢であったのは、物心着く前に、獣に育てられたからだ。人に触れずに育てられたからこそ、アリエッタは美しい。
そんなアリエッタに、ルークは心惹かれて止まない。

唐突に姿を現したルークに、最初のうち、アリエッタもライガクイーンも警戒を示した。だが、ルークはローレライそのもの。音素集合体に、賢いライガの女王は敬意を示し、ルークの守護を受ける道を選んだ。
今では、アリエッタもルークに心底から懐き、好いてくれている。恋愛感情とは、まだ言えなかったが、それは時間を掛ければいいことだ。

預言に干渉する気はなかった。当然、世界にもだ。
再び、得た生を、ルークは自由に生きることにした。
アリエッタとともに、幸せになる。ただそれだけを目指して。

(多分、そろそろ、だろうな)
ヴァンがアリエッタを連れに来るのは。
当然、渡す気は更々ない。渡せるわけがない。
死する運命にある被験者イオンにとって、アリエッタが希望であり、すべてであったのは知っているから、同情はするが、渡す気はない。
アリエッタがすべてであるのは、自分もまた同じだからだ。

「アリエッタ、ルークの髪、大好き。キラキラしてて、きれい」
「アリエッタが好きなのは、髪だけ?」
「ルーク、イジワル」

違うって知ってるくせに。
ぷぅ、と頬を膨らませるアリエッタに、翡翠が愛しげに細められる。
ああ、愛しい。可愛い。俺だけのアリエッタ。愛してる。
膨らんだ頬に、口付けを落とす。
アリエッタが嬉しそうに笑い声を上げ、ルークにキスを返してきた。
柔らかな唇が頬に当たる。

「アリエッタは、俺のこと、ぜーんぶ、好きだもんな」
「うん!」
「俺も、アリエッタのこと、ぜんぶぜんぶ、好きだよ」

愛してるよ。
あと数年もすれば、『聖なる焔の光』は『栄光を掴む者』に攫われ、レプリカルークが生まれる。そんなことすらも、ルークには瑣末なことだった。
アリエッタとの小さな世界を守ることだけが、ルークには重要なことで、アリエッタが笑顔であることがすべてだったから。
森の奥から、ライガクイーンの遠吠えが聞こえてきた。

「ママ、呼んでる」
「食事の時間かな。戻ろうか、アリエッタ」

こくん、と頷いたアリエッタを抱き上げたまま、ルークは森の奥へとゆっくりと戻って行った。
朱色の髪が焔のように揺らめき、光の軌跡を残した。


END

 
途中で文章が切れてしまっている箇所があったので修正しました。(08.09.20)
報告ありがとうございましたー。

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