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月齢

女性向けブログ。ネタ語りや小説など。ルーク至上主義。

2025.04.21
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2009.01.10
ss

アシュルク。
二人とも、ED後、音譜帯でまったりしてましたが、逆行してきてます。
どっちも壊れ気味ですが、アッシュの方が病んでます…。
国境でも、カイツール軍港でも襲撃はなし。が、ルークのみコーラル城へ攫われてます。
そこでの話。
ヴァンにも登場してませんが、厳しめ。

注!同行者&キムラスカに厳しめ






手を繋ぎ、二人、コーラル城の屋上に横たわる。
石が組まれた屋上で、太陽の光を浴び、アッシュとルークは目を閉じた。
背中に当たる石の床は、燦々と降り注ぐ日光をたっぷりと吸い込んだからか、ほんのりと温かい。海風も心地よく、二人の肌を撫でていく。
気持ちいいね、とルークがくすぐったそうな笑みの混じる声で呟いた。
そうだな、と同じく笑みの混じる声でアッシュが答える。
本当に気持ちがいい、と二人の声がぴたりと重なる。二人の笑い声も、重なって響く。

「気持ちのいい日だな、ルーク」
「うん」
「…だが、永遠じゃない」
「……うん」

つかの間の、逢瀬。
二人ともそれをよく知っていた。
もうしばらくすれば、コーラル城へとガイたちが駆けつけてくることだろう。平和そのものだったカイツール軍港から、突如ルークだけを連れ去ったフレスベルグの行方を追って。
そういえば、どうして、カイツールでヴァンは姿を見せなかったんだろう、とルークはふと疑問に思った。カイツールの国境で旅券を持ってきたのは、白光騎士の一人だった。彼の話によれば、急に教団に呼び戻されたということだけれど。

「戻りたくないな」
「俺だって、お前を戻したくない」
「なら、このまま、二人で姿、消しちゃおうよ。…ああ、でも、アクゼリュスの崩落が終わるまでは、ダメかな。ヴァン師匠、しつこいもんな…」

離れたくないのに。
アッシュの手を握るルークの手が強さを増す。
俺も同じだと、アッシュの手も力を増す。
二人の手が、きゅ、と互いを強く繋いだ。

「ヤダな」
「ああ」
「アッシュと二人でいたいだけなのに、どうして俺たちはいっつも何かに縛られてるんだろう」
「…生きているからな」
「死んだって、同じだよ」

ルークの眉間にきつく皺が寄る。死んだ後だって、あいつらは俺たちを利用してた、と吐き出す声は嫌悪に満ちている。
悲劇の英雄と、キムラスカはアッシュとルークを祀り上げた。戦争や外殻大地崩落の不安から、キムラスカ王家から離れていった人心を取り戻すために、利用したのだ。
人は悲劇に感化されやすい。王室から離れかけていた人々は、アッシュとルークを讃え、ひいては王族を讃えた。
子を失った哀れな公爵夫妻。
最愛の婚約者を失った哀れな王女。
人々は、讃えた。
アッシュとルークの死を利用する、キムラスカを。

「頭ではさ、わかってるんだよ。今回は政治に無知ってわけじゃねぇし」

時を繰り返すことになったルークは知識を磨いた。その中で、政治のことも齧る程度のものではあるが、学んだ。
だから、ナタリアがかつて口にしていたような、綺麗ごとだけで世の中が動くわけがないこともわかっている。そんなものは夢物語にしか過ぎず、外見こそ立派ではあったけれど、ナタリアは所詮、お飾りの王女でしかなかったのだと、今のルークは気づいていた。

「国を動かすためには、利用出来るものは何でも利用する。そういう汚い面だって、必要なことくらい」

わかっている。だから、過ぎた『過去』をこれ以上、責めるつもりはない。
ただ、くだらないとは思う。自分たちの死をも利用しなくては、民をひきつけておくことも出来ない、弱いキムラスカを愚かな国だとは、思う。
預言に踊らされるばかりで、現実を見てこなかった結果だ。そして、それを理解していないことに、苛立つ。
音譜帯から眺めたキムラスカの重鎮たちには、預言どおりなら、キムラスカは繁栄していただろうにと、残念がる者がいた。
レプリカにアクゼリュスを崩落させ、マルクトを滅ぼした後で、被験者を使って、外殻大地の降下や瘴気の中和をしていれば、今頃は、などと結果だけを見て、仮定の話に花を咲かせ、愚痴を言い合う、くだらない人間たちがいた。

「そういう人間に利用されるのは、腹立つ」
「…そうだな」
「ティアたちに利用されるのだって、俺はもう嫌だ。ノエルとかイエモンさんたちとか、死んで欲しくない人たちはいるから、世界は救えたら、って思うけど、自分の罪を棚上げして、俺だけが悪い、だから償えって押し付けてくるあいつらとは、一緒にいたくない」
「俺もあいつらとお前をともにいさせるつもりはない」

ちら、と隣に横たわるアッシュをルークは見やった。
アッシュが身体を横向きに僅かに起こし、ルークを見つめる。
翡翠の奥に何を読み取ればいいのか、ルークは惑う。

「アッシュ…?」
「俺も同じだと言っただろう?」

アッシュの顔に笑みが滲む。穏やかな、凪いだ風のように穏やかな微笑だ。
柔らかな微笑に、ルークの頬にもつられたように笑みが滲む。
アッシュのもう一方の手が、ルークの頬を優しく包んだ。

「俺はもうお前と離れたくない」
「うん」
「世界がどうなろうとも、離れるつもりはない」
「…アッシュ?」

きょとん、と翡翠の目を瞬かせ、ルークはアッシュを見つめた。
朱色の髪がふわりと舞い、視界に掛かる。垣間見えるアッシュの唇が、にたりと裂ける。
アッシュ、とルークは半ば呆然としたまま、アッシュを呼んだ。

「だから、二人っきりになろう」
「う、うん?でも、ヴァン師匠がアッシュを追ってくるんじゃ…」
「大丈夫だ。ヴァンならもういない」
「え」

死んだよ。
優しく優しく、愛を囁くようにアッシュが言う。
ヴァンだけじゃない、とその声は優しさを保ったまま、続いた。目を見開くルークの眼前で、アッシュの唇が開閉し、赤い舌が白い歯とともにちろちろ覗く。

「お前を苦しめたあいつらも消してしまおうな。その後で、この城を崩してしまえばいい」

二人分、遺体が足りないことなんて、誰も気づきはしない。
子どもに物語を話して聞かせるかのように、アッシュの声は落ち着いていた。静かに静かに、ルークの頬に手を当て、目を細めて語る。
何したの、アッシュ。問いかけるルークの声は、かすかに震えていた。
アッシュの笑みは、変わらず穏やかで、優しい。

「コーラル城の魔物たちを強化した。音素集合体たちに協力させてな」
「…そんなこと、出来るの」
「今の俺ならば、難しくない。ローレライが、音素集合体たちに語りかける力をわけてくれたからな」

温かかったはずの光が、不意に冷えて感じられ、ルークはぶるりと身体を震わせた。
寒いのか、とアッシュが眉をひそめ、頬を撫でていた手でルークの頭を抱き寄せる。
アッシュの腕の中は温かく、じわりとルークの目に水の膜が張った。

「今のあいつらじゃ、力を合わせたって、勝てやしない」
「……」
「死霊使いが封印術を喰らっていなかったとしても、無理だろうな。入ってきたが最後、死ぬだけだ」

くすくす、笑うアッシュの声が耳に響く。
腕の中は温かくて、優しくて、アッシュの声は慈愛に満ちている。けれど、話す言葉は凍てついていた。
海風に乗って、ガイたちの話し声が聞こえてくる。もうあと数分もすれば、全員、城の中に踏み込むだろう。
このままでは、イオンも死んでしまうのだろうか。ダメだ、止めなくてはと、と思ったけれど、アッシュの腕の中は本当に心地よくて。ずっとずっと求めてきたもの、そのもので。
アッシュを呼ぶルークの声は、声にならなかった。

「二人で行こう、ルーク。二人っきりで、生きるんだ」

ルークの額に、アッシュの唇が落ちる。優しいキスに、涙が止まらない。
自分よりも、アッシュは、もっともっと追い詰められていたのだと、ルークは初めて知った。

「世界が滅びても、一緒にいよう」

頷いてくれ、ルーク。
縋るように、アッシュが言う。
アッシュの翡翠の目を、ルークは覗きこんだ。覗き込んでしまった。
頑是無い子どものように懇願するその色に、吐息が漏れる。突き放すことなんて、出来るわけがなかった。
淡い、消え入りそうな微笑をアッシュに向ける。

「…うん、アッシュ」

世界を犠牲にして、守りたいと思った人も犠牲にして、二人だけで生きていく。
それはきっと傲慢な願いなのだろうけれど、それでも。
ごめんなさい。
ルークは誰ともなく謝りながら、アッシュの背中に手を回した。
二人、しっかりと繋いだ手を、そのままに。

コーラル城に踏み込んだガイたちの断末魔が城に響き。
すべてを飲み込み、真実を隠すため、コーラル城は晴天の下、崩れ落ちた。


END

 

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アッシュの話です。
楽しんで頂ければ、幸いです。

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